生徒会合宿で先輩方に挨拶しよう
予約投稿で失礼します。ブックマーク、400件ありがとうございます。すみません、気づいていなかったです。今日は夜もあげようと思います。
私たちはまだフラフラする身体をなんとか立て直し、目の前の建物を見上げる。
「わぁ~。」
建物はコテージみたいな可愛らしいデザインだ。ここは海から少し離れているのか、磯の香りはしない。
どちらかというと、木々に囲まれていてマイナスイオンにあふれた感じだ。
ドアが開き、人が出て来る。
「え!愛ちゃん先生!」
「あぁ、相田さん。それに新田くんに増井さんに海月くんも。そしてあなたが上林くんね。ワタシはこの四季くんと同じく生徒会担当の伊勢屋愛之助よ。よろしくねん。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「なんで愛ちゃん先生が担当なんですか〜?」
「ふふふ。それはきっと会えば分かるわ。」
こめちゃんに対する先生の回答に、一年生全員の頭の上に?が浮かぶ。
次にコテージのドアが開いて現れたのは、今日も相変わらず優雅なイケメンでいらっしゃる海月春彦先輩。
「遠路はるばるお疲れ様ですね。」
にこりと笑うと、こちらに近づく。
「俊、あれは持ってきましたか?」
「持ってきたよ、兄さん。」
「あれって何?」
「秘密。あとで分かるよ!」
口元に人差し指をあてて片目を瞑る俊くん。
あ、俊くん、お兄さんにそっくりだよ!
外見自体は、同じ銀髪だが、海月兄が金色なのに海月弟は琥珀色の目をしているし、兄が人を惹きつけてやまない豪華なオーラと大人っぽい切れ長の目に少し皮肉めいた微笑を薄い唇に浮かべているのに対し、弟は少し垂れ気味の丸い目に柔らかな印象を与える顔立ちなので、似ているというほどでもない。
しかし、その仕草はそっくりだ。
そのまま歩いてきた会長はこめちゃんの前に立つ。
「お、お、お久しぶりですっ。」
「久しぶりですね、まいこさん。元気にしていましたか?」
「は、はい。か、会長は?」
「春先輩と呼んでください、と言いましたでしょう?」
「あ、はい…。」
「さぁ、呼んでください。」
「は、春先輩…。」
「よく出来ました。」
と会長がこめちゃんの頭を撫でる。
「…会長から発せられる甘い空気の密度が濃くなった気がするんだけど、気のせいかな?」
「気のせいじゃないと思う。海月がまた硬直してるから。」
弟は兄の毒気に一番当てられるらしい。覚束ない足取りでフラフラと秋斗の方に倒れかけてる。
「二人の空間を作るな。他のメンバーの紹介をするんだろ?」
止めてくれたのは東堂先輩。
「お久しぶりです。」
「S県以来だな。これからよろしく頼む。」
他のメンバー、ということは先輩方?
次にコテージから出てきた人影が私の方に走り寄ると、ガバッと抱きついた。
え?!
「な?!」
秋斗が隣で硬直するが、安心しなさい。この方は女性だから。
「君があの生徒会役員選挙で凛とした演説をした子だね!可愛い!私は幸せだ!」
「離れろ、美玲。相田が困ってるぞ。」
止めてくれたのは再び東堂先輩だ。
「っ!すまない!私は小西美玲。広報と生徒会副会長を担当している。初めに言っておくが、私は可愛いものや綺麗なものに目がない。」
そう宣言した美玲先輩は朱色のショートカットの髪で顔立ちはきりっと、体型は八頭身ですらっとしている。あれだ、宝塚の男役とかやれそうな美人。
「先輩、私よりも他のみんなの方が綺麗又は可愛いです。」
「確かに男子諸君も美しいが、男は硬いから好かん。」
硬い?!
「女の子は抱き心地がいいからな。」
抱き心地?!
「あの子も出来れば抱きしめたいんだが、今邪魔すると、海月に蹴られそうだからな!」
海月、は会長の方だ。
「あの、僕も海月なので…。」
「そうだったな!海月その2!いや、それだと可哀想か…海月可愛い方…いや長くて言いづらい…うーん。」
「…名前で…俊というので、名前で呼んでいただければ…。」
「おお、俊くんか、そうしよう!そしてそこの君が新田くんでそっちが上林くんで合っているかな?」
「はい、そうです。」
「よろしくお願いします、先輩。」
「私は相田雪です。」
「雪くんだね!素晴らしい!よく合う可愛らしい名前だ!雪のような白くてきめ細やかな肌をしているしな。」
この人、攻略対象者様じゃないですよね?!セリフが完全に甘々なんですが!!
「ずーるーいーっ!私もなのです!」
ん?
目線を下にやると、こめちゃんよりも背の低いのゴスロリファッションの愛らしい女の子…いや、女性。
「私は馬場泉子なのです!書記担当なのです!私も可愛い女の子が大好きなのです!だから美玲だけに独占させるのはダメなのです!」
そう言ってゴスロリ…いや泉子先輩は私の胴をぎゅっとする。
うん、なんで?
「男の子たちの名前も完璧に覚えてるから安心するです!」
「「「…どうも。」」」
呆気にとられた一年生男子。
「いやーボクを忘れちゃ困るよ!」
向こうから言って歩いてきたのは、薄い緑色…ビリジアンカラーの天パ(といってもちりちりじゃなくて、適度にふわっとはねている感じ)の髪の男性。秋斗たちほどじゃないにしても結構イケメン。しかし特徴的なのはそこじゃない。この人は歩いてるだけでフェロモンむんむんなのだ。
あ、本能的に秋斗が毛を逆立てる犬になってる。
「よろしく、白猫ちゃん。ボクは桜井尊。会計担当。尊先輩♡って呼んでもらえたら嬉しいな!」
「私は相田雪です。よろしくお願いします、桜井先輩。」
「おっと、白猫ちゃんは手厳しいぜ!」
ずっきゅん!と手で胸を押さえる先輩。
ていうか、会計って…秋斗の直上じゃないか。
「ゆきに近寄らないでくださいっ!」
秋斗が桜井先輩に唸る。
「おっと、君が新田くん?ボクと同じ役職だね、どうぞよろしく!ボクは綺麗なら男の子も平等に愛せるからね♡そっちの二人、上林くんに海月弟くんも。寂しくなったらいつでもボクの元にカモン!」
あ、一年生男子が全員三歩下がった!
「…ま、こういうことだから。改めて言うのもなんだが、俺は東堂夏樹。広報担当だ。よろしくな。」
東堂先輩が一番マトモだ!!俺様なはずなのにブレーキの良識派になってる!周りのキャラが濃すぎだ。
「ほら、ワタシがこの生徒会の担当な理由分かったでしょ?四季くんじゃこのメンツ抑えきれないからねん。」
「酷いです、伊勢屋先生!」
泣きつく四季先生。
間違いない。濃い先輩に、濃い先生。私はとんでもない魔窟に来てしまったに違いない。
この人たちを出したくてしかたなかったので、やっと出せてうれしいです。




