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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・前半】
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どっきりで、祝おう

げっそりした私とちょっと恥ずかしそうなこめちゃんと、それからるんるんな三人が男性陣の元に戻ると、

「なんか、何があったのか手に取るようにわかるような光景だな。」

と上林くんがコメント。

「なになに、雪ちゃんとこめちゃん、どんなの買ったの?」

セクハラ遊くんを無言で叩き倒す秋斗。

「じゃ、じゃあ、カラオケ行こっか!」

俊くんが仕切り直してくれ、全員で近くのカラオケ店に移動する。

移動中、隣の未羽がご満悦という表情で私に話しかける。

「あー楽しかったぁ!」

「あんたはね。」

「この時間がずーっと続けばいいのになぁ!」

「特にこれからの時間は幸せでしょ?」

「うん、最高の誕生日になりそう!」

「え、誕生日?今日なの?」

「そうよ。8月18日。誕生日なんて、現世ではゲームで決められたもんだし、特に何とも思ってなかったのよね。この世界でこんなに仲良い人たちが出来るなんて思ってなかったし、どうせ一人でイケメン鑑賞して楽しむんだと思ってたから。だから今日は最高の誕生日。」

にこにこする未羽。

「これからはもう天国だしね〜。」

むふふふふ。と笑う未羽。

そうか、誕生日か…。

私はみんながカラオケの受付をしている間に、ちょいちょい、と俊くんの袖を引っ張った。

「どうしたの、雪さん?」

「俊くん、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど…。」


カラオケの部屋は15人用の広いところになった。

ノリノリの遊くんが一番手。

「じゃあ俺、野口遊が一番手行きます!」

明るいアップテンポの曲で場を盛り上げる。

「んじゃあ次は、私と京子がデュエット行っちゃおうかなー!!」

それからこめちゃんがアイドル曲を歌ったり、未羽がアニソンを歌ったり、上林くんがしっとりしたラブソングを歌ったり、秋斗がロックを歌ったりした。当然攻略対象者様方。前世では声優さんたちが声をやっていたわけだし、あの人たちはプロとして歌を歌っているレベルだから当然、二人とも美声だしうまい。未羽が必死で録音していた。

そして意外だったのは俊くん。そんなゲーム設定を覆すくらいめちゃくちゃ歌がうまい。音域は広いし、音が飛ぶ曲でも外さないし、ロックからバラードからアイドル曲、アニソンまでなんでもいける上、気持ちのこもった歌い方に聞き手が歌に引き込まれる。あの攻略対象者様だけに行われるボイス録音が、なんと俊くんにもされていた!

「え、俊くん、すごく上手くない?」

「歌はね、得意な方なんだ。」

はにかむ俊くん。これはこれで可愛らしい。絶対ファンがいそうだ。

俊くんは秋斗や上林くんの影に隠れがちだけど、傍にいても霞にならない=存在を無視されない程度、つまり平均レベルより断然顔の偏差値が高いしね。


みんなが一通り歌った頃。

さて、ここで私の出番だ。俊くんに合図を送ると、俊くんが指で丸を作って返してくる。

そっと俊くんが出て行ったのを見計らってから二人に声をかける。

「ね、上林くん、秋斗、二人でデュエットやってくれない?」

「なんで新田?」

「えーなんでこいつと?!ゆきとがいい!」

ワガママ言うな。

「どうしてもね、二人のがいいなぁと。」

「そういえばさっきから、ゆき、1回も歌ってないじゃん。」

う。バレた。

「確かに。相田が歌えば?」

「私はちょっと…た、タンバリン専門職に就いてるから!」

「それならタンバリンやりますわよ?」

「あ、マラカスもやってるから!」

「怪しい…。よし、相田が後で歌うんだったら、新田とデュエットする。」

なんだと?!

「そうだね、俺も長い付き合いなのにゆきがカラオケで歌うとこ見たことない。その条件なら、癪だけど、のんでもいいよ?」

ぐぐぐ。やはり犠牲はつきものか。

でもここで引けない。

これは、私の親友への最大のプレゼントなんだ。

「わ、分かった。後で歌う。」

「…よし、じゃあやるか。」

「…ほんとーに不本意なんだけどね?ゆきの頼みだから!」

二人が立ち上がって準備し始める。

未羽が真剣な表情でレコーダーの容量を確認している間に私はラインを送る。

「いよっ!王子ペアのデュエット、待ってました!」

遊くんが盛り上げて、私がさっき入れた曲のイントロが流れる。

これは前世のそれなりに有名だったアニソンだ。この世界でもあるらしい。ベストセラー少女漫画の主題歌(オープニングソング)

「知ってる?」

「ん。行ける。」

主人公の女の子を取り合うライバルの男の子二人の役の声優さんがデュエットしたこの曲は確か、前世ですごく人気があったはず。

曲が始まると、二人は嫌だ嫌だと言っていたのに、すんなりと歌い始める。

うぉ。やっぱり美声。

ちら、と未羽を見ると恍惚とした表情で聴き入っている。さすがに録音をオンにするのは忘れてない。


二人は間奏まで挟んで完璧に歌い上げた。

あ、未羽が涙目。

だめだぞ未羽。こんなんじゃ終わらないからな。

曲が終わったところでバン!と扉が開く。

パンパンパン!

弾けるクラッカー。

二人が歌う準備をしていた間、こっそり私が未羽以外のメンツに流したラインはこれだ。

『今日、未羽誕生日なんだって。俊くんがクラッカーとケーキ買ってきてくれるから、二人が歌い終わったら、お祝い、いける?』

『もっちろんだよぉ(≧ω≦)b 』

『(^0^ゞ らじゃ』

『任せてくださいませー♪』

『任せとけ( ̄Д ̄)ノ 』

『了解!』

『ゆき、さすが!』


俊くんがろうそくに火のついたケーキを出す。


「「「「「「「「未羽 (ちゃん)(横田)(さん)、お誕生日おめでとう!!!」」」」」」」」


未羽が、本格的に泣き出す前に一気にろうそくを吹いた。

おめでとう、親友!



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