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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・前半】
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夏休みは本屋に行こう

茶道部の合宿も終わり、日常が戻ってきた。

気候は前世と同じで厳しい日差しが照りつけている。

「あっついなー。」

なんでこんなうだるような暑さの中外出しているか、というと、本屋に行くためだ。

合宿前に未羽に聞いた「予備校がない」という事実をネットで調べてみるとそれは果たして現実だった。

駿◯とか、代◯ミとか、◯進とか、そういうものを検索すると、問題集は出ているものの校舎情報なんていうものは一切なかった。

未羽は万歳三唱していたけど、中学で塾があるのに大学受験に向けた高校ではない、というのが変だと思う。学校に通うことに専念させる乙女ゲームの仕様に間違いない。ということは、もしかしたら、これって起業のチャンスなんじゃない?

溶けかかった脳みそでそんなことを考えながら駅前の本屋さんにやっとこさ辿り着くと、問題集の置き場に向かう。

「ああ、あったあった。」

前世の記憶と照らし合わせると、君恋高校で習っていることは前世よりも進んでいた。しかしそれはあの学校が特殊なわけではないと分かった。

「これは早急に手を打たないとまずいな。」

元は文系。英語や国語系、歴史ものはなんとかなるだろう。一応歴史に改変がないかはチェックしないといけないけど、異世界転生したわけじゃなくて前世日本と同じだから歴史をずらしている感じはしない。

それから数学については国立文系だったからある程度の対応はできるはずだ。

問題は理科。生物は趣味で、化学もわりかし好きだったから1人でもいけるだろう。

しかし、物理は違う。

前世の高校での進路分岐が早かったせいで物理の知識はおそらく前世高1程度に達しているかどうか。

ということは。

「すぐに追いつけなくなる…。」

というわけで、一通りの科目の問題集を大人買いする。

前世でもしなかった初大人買いが問題集だなんて…世のおとーさんおかーさんが聞いたら泣いて喜ぶ優等生だ。うん。

転生が楽だとか思ってるそこのあなた。結構大変なんですからね?



さて、紙袋に入った本たちを持ち上げると、かなりの重量になっていた。

紙袋が裂けたら惨事だなぁ。

そうでなくても暑いのに。

紙袋の底がいきなり抜ける、という経験は一度だけあるが、あれは大変恥ずかしい。

紙袋を気合をいれて持ち直そうとした時だ。

ガーッと自動ドアが開いて黒髪の男の子が入ってくる。

「あれ、相田?」

ぎゃあ――――!なんでこんなとこで、こんなときに攻略対象者に会うんだ?!

涼しそうな目元の美少年、上林くんのご登場。

「買い物?」

「そんなとこ。」

暑い昼日中だからか、店内に全然人がいなくて助かった。

彼と二人でいるのを見られるのは非常にまずい。

「上林くんは?」

「ん。暇だったから。何?問題集?やっぱ相田はすごいな。こんなにやるの?」

「計画倒れるかもだけどねー。」

「ほら、貸して。運ぶの手伝う。」

「いやいや!いいよ!そんな悪い!大体目的があって来たんでしょ?私もう帰るとこだし!」

「暇だったからって言っただろ?趣味の本見に来ただけだし。」

上林くんは私の手からすっと軽々本の紙袋を取り上げた。あまりにスマートな動作で抵抗できなかったぞ!


「茶道部の合宿どうだった?」

結局上林くんに運んでもらうことになった私は自宅まで一緒に歩いている。

茶道部合宿について話して聞かせると上林くんは爆笑する。

最終日は打ち上げがあったのだけど、愛ちゃん先生がモデルショーをやってくれたのだ。全て女性物で。

「これがよく似合っててねー。」

「うっわぁ!伊勢屋先生、すごいな。俺、その場にいて見たかったわ!あとトイレ掃除してる横田とかも結構レアな気がするしな。」

「合宿は先輩方とも交流できたし、体験も貴重なものばかりで楽しかったよ。上林くんの方は合宿あるの?」

「もう終わった。同じときにJ県に行ってひたすら稽古の毎日。」

「へぇ。上林くんだったら袴姿似合うんだろうね。弓道って憧れるんだよねー。」

「興味ある?今度練習観に来いよ。ちょっと弓引かせてあげるから。一応俺、経験者だから教えてあげられるよ?」

…ん?

しまった!!!

前世で犬◯叉にハマった時に弓道がやりたくて、でも部活になくてガッカリした覚えが強かったからつい、ナチュラルに会話をしてしまった!

何自分で墓穴掘ってんだ!!


そうこうしてる間にうちの前に着いた。

「ありがとう。助かった。私一人じゃきつかったもの。」

「いや、俺がしたくてしたことだし。」

ううう―――あんまり、関わりたくないんだけどなぁ、でもなぁ!

その時、玄関のドアががちゃ、と開く。

出てきたのはお母さんだ。

お母さんは私と門の前に立っている美少年を見比べ、ぽかん、とした後、あらあらまぁまぁ!と言い始めた!

違う!!!大いなる誤解をしそうだ!明後日の方向に暴走する前に食い止めなくては。

「待ってお母さん。違うから。そういうのじゃないから。クラスメートで、本屋行ったら偶然会ったの。荷物重いの運んでくれて。」

「そういうことなの。ありがとうね、暑い中。」

「いえ、大したことじゃありません。」

優等生スマイルの上林くん。

「ほら、大したもの出せないけど、冷たい麦茶でも飲んで行って?」

そうなると思いました!!

「いいわよね、雪?」

「…うん、この暑い中そのまま帰すわけにはいかないと思ってたし。」

「いいの?」

「…どうぞ。」

やけくそじゃー!!!

ブーっ。

『何、すごい面白いことになってんじゃないの(o゜∀゜o)お宅訪問イベントとか、主人公でももーっと先のデートでしかないわよ?』

『うるっさいわね。成り行きよ。』

『いつもならここで妨害電波入れていいとこだけど、これはイベント類似。まさか、いれないよね?』

入れようとしてました。

『雪ー(# ゜Д゜)?』

はい、きっと逆らったら盗聴器の性能を上げられて私にプライバシーはなくなるんでしょう。監視カメラまでつけられるかもしれない。

『分かってるわよ!入れないから。だから監視カメラはやめて!』

『じゃあ私の耳を存分に楽しませてね(#^^#)♡』

本屋に行くんじゃなかった。


閲覧ありがとうございます。しばらく諸事情により1日2話掲載します。また1話に戻るときや一旦ストップするときはお知らせいたします。推敲の関係であげる時間は不定期になるかと思います。申し訳ありません。

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