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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・前半】
27/258

茶道部合宿で主人公の様子を盗み見よう

こんな時間に失礼しますー。もう1話はいつもの夜時間にアップになるかと。


夢城さんは、同じくマネージャーの木本さんに何か声をかけるとベンチから立ち上がりどこかに向かう。

未羽に託された私は、そっと観客席を抜けると、ベンチから動く夢城さんの後を追う。

夢城さんはそのまま競技場の裏まで来て、そして周りをきょろきょろして誰もいないか伺っている。

私は当然建物の陰に隠れている。

それから、夢城さんはぐっ、とガッツポーズを取った。

「よっしゃあああああ!やった―――うまくいった!東堂先輩の好感度ポイントげっとぉ!よかったぁ、うまくいって。」

やっぱり夢城さんは、好感度を上げようと考えているんだ。この世界がゲームのルールに絶対従っている、と盲信して。

「最近調子悪かったから、これ不良品なんじゃないかって疑ってたのよね。横田未羽は入学式に現れないし、まさかの相田雪とべったりしているし。とうまくんや海月先輩は全然反応してくれないし。四季先生はなかなか次のステップに進まないし。」

やっぱり四季先生はドジっ子アゲハの幼虫から抜け出していないらしい。

「やっぱりクラス委員になれなかったのが痛いかなー。あそこで相田雪が妨害してくると思わなかったから油断してたじゃないの。ほんとにうざいんだから!」

…すみません。私はモブ決定と思って拳を突き上げただけなんですが。クラス委員になりたいなんてこれっぽっちも思ってませんでした。

「それからあきとくんだよねぇ。あきとくんのイベントが全然起こんないから昨日自分からやっちゃったけど…でも、ま、なんとかなるでしょ!あきとくんもまんざらでもない顔してたし!」

いや、あれは秋斗のすごく嫌がっているときの顔です。

「それから、生徒会。なんなのよ。相田雪とあとあの、モブ。増井米子、だっけ?うざいんだけどっ!!特に増井米子!!!海月先輩にお姫様抱っこされちゃって!あれは私の専売なのに!絶対何とかしてやる。」

それだけ言うと、夢城さんはこっちに向かって歩いてくる。

まずい!

私は自慢の足を生かして見えないところまでダッシュして、ほうっと息をつく。

とりあえず、こめちゃんが夢城愛佳にマークされた。

こめちゃんの身辺に気を付けないと。


私がそのまま観客席に戻ると、未羽が立ち上がっていた。

「あれ、観るんじゃないの?」

「このままずっと観てたら、このジャージ持って帰れないじゃない。」

なんと!!これを返すときにもう一回会おうって魂胆か。

「さ、こめちゃんたちと合流するわよ。んで、主人公の方は聞けた?」

「うん、移動中に話すよ。」

黒塗りの車がお迎えに来てくれるまでの間に私は先ほど見たことを漏らさず全て未羽に伝える。

「ふーん。その感じだと、多分主人公はまだ、私たちが転生者だって気づいてないね。ま、バグっぽいのは私たちの周り以外でも起こってるって思ってるんだったら信じさせておけばいいんじゃない?それよりも、問題は…」

「うん、こめちゃんだよね。マークされたみたいだし。海月先輩が露骨だから。もうちょっと賢いかと思ったんだけどなぁー。」

「何言ってんの!?海月先輩は、その研ぎ澄まされた美貌と大人っぽい雰囲気が売りなんだけど、主人公の前でだけ見せる甘い顔、その空気、あの瞳も人気なの。主人公だけには他に見せているのと違う自分を見せるんだけど、それが新田くんなんか比にならないくらいの甘えキャラなわけ。分かる?で、そのモードに入ると、周りが全然見えなくなっちゃうの!」

なるほど。ある意味先生と逆なのね。

人前でお姫様抱っことかいうものをし始めちゃうくらいだから相当だろうな。

つまり

「退化するわけだ。」

「退化と言わない!これは乙女の萌えポイントなのです!」

はいはい。

「とにかく、海月先輩が周りに気づかない間は、夢城愛佳がこめちゃんを狙っていることにも気付けないだろうから、その時まではなんとか雪がカバーしてあげてね。」

「それは最初からそのつもり。」

新情報は、会長が予想以上に使えないということだけだ。



その後、私たちは無事にお買い物中の茶道部1年のメンバーと合流した。

「おかえり~」

こめちゃんがにこにこして迎えてくれる。癒し。

「どうだった?東堂先輩、かっこよかった?」

「そりゃあもちろん。」

明美に力説しているのは当然未羽。私はそうだね、あははははーとだけ答えておく。

「それ、何?」

秋斗が指さしたのは、未羽が大切そうに抱きしめている男物のジャージ。

当然、東堂先輩のものだ。

「あ、これぇ?」

にやぁ、と未羽が笑ったかと思うと、それを私に押し付けてくるから思わず受け取る。

へ!?これ以上の宝物がないってくらい抱きしめてたのに?

やめろって言っても車の中で顔うずめてたのに?

いくら「誰も取らないよー」と言っても唸る、ジャーキーを咥えたわんこ状態だったのに?

「東堂先輩のジャージ。『雪に』ね、預かってくれって『着ていたのを脱いで』渡したの。」

確かに嘘は言ってない。でも今、意図的にところどころ強調されていた気がする。

京子が、「あの東堂先輩のですの!?」と驚いて言うのと、秋斗の機嫌が急降下していくのが同時だった。

秋斗が拗ねるのを見たかっただけだろ、絶対!

「2年の教室に持っていくのやだなー。」

「え?東堂先輩、生徒会だろ?その時に返せばいいんじゃないの?」

「え。遊くんそれほんと?東堂先輩、生徒会なの!?」

「あれ、雪さん知らなかったっけ?僕たち広報担当の先輩のお一人が東堂先輩だよ?」

俊くん、それもっと早く教えておいてほしかった!

知ってたらあの会長とバトルしてでも広報にはならなかったのに!!



これにて茶道部合宿編はおしまいです!

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