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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・前半】
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茶道部合宿で現れたカエルにはヘビを用意しよう

「愛佳ちゃーん!」

夢城さんのメデューサモードを解除させたのはクラスの山田くん。体育祭実行委員も夢城さんと一緒にやっていた彼だ。夢城愛佳ファンクラブなるものの第一人者でもある彼はサッカー部だったらしい。

男子の目に入る位置になると顔がさっと変わるんだからすごいよね、顔芸に脱帽します。

「あ、新田に海月に増井さんに相田さんまで!どうしてここに?」

ちなみに未羽も同じクラスなのに見事に飛ばされている。未羽は、中身は愛ちゃん先生並みに濃い人間と言っていいが、外見は完全に地味なモブキャラ典型って感じだから覚えられてないんだろう。

「俺らも合宿でこっちに来てたんだよ。」

「茶道部に合宿…?」

何すんだ?と言わんばかりの顔。

「それはそれは厳しい稽古だ…。」

聞いていた遊くんがげんなりと答える。

「厳しい稽古?正座のか?」

「いや、精神の。僕たちは今日箒と雑巾とハタキと雑草と蚊と友達になったよ…。」

真面目な俊くんに遠い目で言われて山田くんは、「はぁ?茶道と箒?」と返している。


先輩がそんな会話の様子を見て私たちに声をかける。

「あ、そうだ。あさって俺ら練習試合あるんだけど、観に来ないか?」

「すみません、私たちもその時は稽古がありまして。ね、部長?」

速攻で断る。

私たちは茶道の精神を極めるためにここにいるんです!

「ん、あさって午後だったら大丈夫だよー?午後は僕たちが場所取っちゃうからね。見稽古しててもらおうと思ったけど、せっかく同級生もいるんだろう?行っておいでよ。」

ぶちょおおおお――!そんなとこでいきなりいらん情報出さないでください!

「名前何て言うの?来てほしいなっ!」

秋斗に来てほしい夢城さんの、外堀を埋める攻撃!

「もちろん!行くよ!!」

遊くんがあっさり美少女に陥落した。

「ちょうどいいじゃん、お前ら俺らの勇姿観にこいよ!男の友情だろー?」

山田くんが秋斗と俊くんの肩に腕をかけて誘ってる、負けるな!

「君たちも来られるんだったらどうだ?」

イケメン長身の東堂先輩に声をかけられて明美と京子が満更でもなさそうな顔。体育祭の時に女子生徒(夢城さんと私)を庇ったことで、元々の人気に拍車がかかった先輩の笑顔に当てられてる。

未羽が…耐えられるわけないですよね。

結局1年の半分が完全陥落。秋斗と俊くんも男の友情とやらで落城寸前。かろうじて残った私はもともと参戦すらしてなかったこめちゃんの方を向いてため息をついた。



「じゃあ、またあさってな!」と言って先輩が戻って行って、山田くんも夢城さんをエスコートしようと手を伸ばした。しかし夢城さんは

「あきとくんはどこで食べるの?」

「あっち。顧問の先生が特別メニューを用意してくれてるらしくって。」

「えぇ、いいなぁ!私もそっちで食べたい!」

と駄々を捏ね始めた。

「愛佳ちゃん、さすがに茶道部の人たちの邪魔するわけにはいかないよ。先輩方もいるんだろうし。」

「ええー。私、あきとくんと食べたい。せっかく会えたんだもん。こうやって会えたのは運命だと思わない?」

小首を傾げる美少女。こんな状況じゃなければ多分百発百中で男の子を落とせそうだ。

しかし秋斗は困った微笑みを浮かべている。長年の経験から私しか知らないだろうが、秋斗はあの顔の時が一番苛々している。

了承しない秋斗に焦れた夢城さん。

「じゃああきとくん、こっちに来ない?クラスの人たち結構いるよ?」

そう言って今度は秋斗の腕にすがりつく。

さりげなく自分の胸に押し当ててるところに未羽が気づき、親指を下げてる。

やめなさいってば、そーゆーのは!

しかし、このワガママにここの空気が一気に悪化する。未羽だけではなく、明美や京子も苛立った様子を見せ始め、俊くんも止めようとしている山田くんもさっきまでデレデレしてた遊くんも困った顔をする。こめちゃんですら、「どうしよう雪ちゃん!」とあわあわしている。

「ごめん、夢城さん、俺も茶道部で食べたいから。」

「えーでも私がそうしたいって言ってるのに。」

ナニサマ。

あんたも転生者だったらいい年でしょうが!駄々こねるのもいい加減にしなさい!と言えたらどんなにいいか…。


誰もがげんなりしていた時だ。

「あら、みなさん何してるの?早く来なさいな。先輩たちはもう着いてるわよ?」

愛ちゃん先生登場!

誰こいつ、という顔をする夢城さん。本人気づいてないかもだけど顔に本性出てる!

「誰こいつ?」

言っちゃった!!!先生だよっ!

愛ちゃん先生は美麗な眉をピクリと上げると、「さぁさ、新田くんもこっちへいらっしゃい」と秋斗から無理矢理夢城さんを引き剥がした。

「何すんのよ、オカマのくせに、あきとくんに触らないで!」

あ――――それは!

「あら、なぁに?このばっちい子猿は。」

「こざっ!この私に向かって…!」

「人に対する口の利き方も知らない子は子猿で十分。汚い言葉は自分の身を汚すのよ?」

「わ、私に汚いですって?ふざけないでっ。」

「何かふざけているとでも?大真面目よ。」

愛ちゃん先生の目が本気になった。本気と書いてマジと読む。

人を殺せる目です、先生!

「大人への対応もなっていない馬鹿猿にはうちの可愛い部員たちに触れる資格すらないのよ。出て行ってちょうだい。ワタシの前に次に姿を見せたら…。」

まるで蛇に睨まれたカエルのように夢城さんが縮み上がる。

「あ、愛佳ちゃん、戻ろう?」

夢城さんは愛ちゃん先生の目に文句一つ言うことも出来ずに山田くんに連れられて去っていった。


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