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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・前半】
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茶道部合宿ではじゃんけんで決めよう

2日後の昼。

私たちは無事にS県の駅に立っていた。電車を乗り継ぎ4時間ほどの田舎風景。

一時はどうなることかと思ったけど慌ててみんなで買い物に行き、旅行の準備を整えた。

「遅かったね〜。」

手を振ってくるのは、残りの1年メンバー・Bクラスの野口遊(のぐちゆう)、Eクラスの辻岡京子(つじおかきょうこ)武富士明美(たけふじあけみ)。クラスが違うせいで話すのは部活の時くらいしかないけど、みんな個性的で面白い。

「しかし、こっちから見てると豪勢な面子ですわね。」

「何が?」

「確かに未羽ちゃん以外みんな生徒会役員だもんな。」

「未羽はキャラ濃いからそんなのなくても、ねぇ。」

明美のはなかなか的を射た発言だ。素晴らしい。


「エブリーワーン!よく来たわねぇ!」

身なりだけじゃなくて日本語も英語も怪しい愛ちゃん先生の登場だ。今日もきっちり女物のコーディネイト。

「さぁさ、こっちよ。先輩たちはもうついているわー。」

示した先には黒塗り車がズラリ。

着いたお宅は日本様式のザお屋敷。

「…未羽、このゲーム、大金持ちも身分もないんだったよね?」

「…基本ね。攻略にはあんまり関わらないってだけ。こんな設定までは知らないわよ。」

老舗和菓子屋の長男である愛ちゃん先生のお家は広大な敷地にお庭付のお屋敷だ。

「さ、荷物を置いてこれに着替えて。」

「え?」

出されたのは作務衣(さむえ)。和風の作業着だ。

「今日から4日間。みなさんの心も体も磨くわよ。」

展開が急すぎてついていけない。

「えっと先輩?」

天木部長が苦笑いして言う。

「ごめんね、ほとんど詳細言えなくて。」

いえ、未羽から聞いたのは3泊4日であることだけで、それも一昨日聞きました。

「これからの1日半は1年生のみんなは掃除だけ。次の日にお茶の練習をして、最終日に打ち上げだよ。」

掃除!これは聞いてない!

「働かざる者、食うべからず、だよ。」

天木部長がにっこりした。



連れて行かれたのは、近くの古ーいお寺。

「ここを今日明日で綺麗にもらうわよー。頑張ったらワタシからスペシャールなプレゼントがあるわよん。」

「え、先生。かなり広くないですか。」

遊くんの言葉がみんなの気持ちを代弁している。

「あ、そうそう。サボってやろうなんて、考えないでねん?そんな子はワタシがお仕置きしちゃうからねん?」

あの電波先生だ。サボったらバレるに違いない。


「と、とにかく、真面目にやるしかないな。」

作務衣を着た秋斗が言う。イケメンだと何着ても似合うんですね。

秋斗ほどじゃないにしても整った容姿の俊くんも作務衣が似合う。

「よっし、かんばろーう!!」

スチルでは見られなかった光景に大興奮して喜んでいるのは未羽。

「未羽ちゃん、テンション高いねー。」

ほわわわ、という空気を発しながら言うこめちゃん。

「ま、分担しましょっか。場所は廊下と本堂と庫裏と境内の草むしりと…トイレをやればいいって言ってたよね。本堂と境内と庫裏は大きいから2人でやるとして。」

全員の目がきらん!と光る。

考えてることは同じ!

トイレは勘弁!こんな田舎の古いトイレとか、絶対ボット◯だろ!!

「ここは公平に、じゃんけんで行きましょう。」

私の合図でみんながごくっと唾を飲む。

「「「「「「「「じゃーんけーん!」」」」」」」」



じゃんけんの結果。

本堂が私と秋斗。廊下が遊くん、境内の草むしりが俊くんと明美、庫裏を京子とこめちゃん、そして

「私がトイレー!?やだーっ!!」

日頃友達を陥れたり、盗聴機しかけたり行いの悪さの報いだろうと思うのだが、トイレが未羽になった。

完全にご機嫌斜めの未羽。

しかし、私と同じ場所になった秋斗が張り切って「よっしゃ、やるぞー」と腕まくりしたところ、

「新田くんの和服腕まくり、来たー!!」

とテンションを上げていたので大丈夫だろう。


秋斗と二人で本堂の掃除をする。

もう埃のすごいのなんのって。

口元をちゃんと布で覆っていなかったら今頃埃をたくさん吸い込むことになっていただろう。

「あーもーどんだけ掃除してないんだよ、ここ!」

観音様にハタキをかけている秋斗。

「秋斗。」

「何ー?ゆき。」

「秋斗と二人だけでなんかするのって久々だよね。」

「本当だよ。中学までは俺だけのゆきだったのにさぁ。それが高校に入ったらあのいけ好かない上林とか、俊とか、あとは未羽ちゃんたちにゆきを取られちゃうからさ、俺ほんとーに寂しかったんだからね?」

「ごめんごめん。」

一つ異議を唱えるなら私は秋斗のものじゃないぞ?

ただ、まぁ、前世の記憶が戻るまでそれこそ秋斗と一緒にいるのは当たり前で、その分秋斗に甘えてた。秋斗は私に前世の記憶が戻ったことを知らないんだから、私がいきなり冷たくなったって思っても仕方ない。

「ごめんね、秋斗。」

秋斗はハタキの手を止めてこっちを驚いたようにこちらを見る。

「今日は殊勝だね。」

「失礼な。私はそんなに傲慢じゃないよ!傲慢なのは未羽だけで十分!」

秋斗がそれを聞いて笑い出す。

「未羽ちゃんは面白いよね。個性的な子だと思うよ!」

そういえば、今主人公最有力候補のこめちゃんと一番触れ合う機会が多いのは秋斗だ。秋斗はこめちゃんの主人公オーラに何か影響を受けていないのかな?

「こめちゃんは?」

「え?」

「こめちゃんはどう思う?」

「んー天然な子?あとこないだから会長の雰囲気が怪しすぎる。こめちゃんは気づいてないぽいけど。」

「秋斗はそういう気持ちないの?こめちゃん可愛いなーとか、こめちゃんのこと思うと胸が苦しくなる!とか。」

秋斗が今度はハタキを置いて口元を覆っていた布を下ろすとこっちに来た。

え、何?顔が真面目だよ。

「ゆき、何を誤解してるか分かんないけど。」

秋斗が私の手を取る。

「俺が考えてドキドキするのはゆきだけ。ゆきだけなんだよ。…ゆきに友達が出来てよかったって思ってる。ゆきが前より笑うようになったから。でも、ゆきが俺といる時間が少なくなって、たまにゆきをどっかに連れて行きたくなる。誰もいないところに。俺とゆきだけのところに。」

こ、これが、ヤンデレというやつ?!な、なんでこんな時に!

ブーっとラインが鳴ったがあえて無視。

秋斗はそこまで言って、パッと手を離すとにこっと笑った(いけめんすまいる)

「ま、というわけで、こめちゃんに恋愛感情はないよ。」

聞きたいことがバレてた!

秋斗はハタキをさっさと終わらせて次は箒かなーと探しに行った。

残された私。

なんで私は秋斗にドキってしてんの?!もう。秋斗が真面目な顔するからだ!

冷静になるためにケータイを取り出して見ると、

『へへへへへ。和服腕まくり新田くんの弱ヤンデレ発言キタァ─────』

と来ていた。予想通り。

トイレでこれ聞いているんかい、あんたは。




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