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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校2年生編・1学期~夏休み】
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引き留め方にもコツがいる。(遊園地デート編その1)

「うえええぇ?!上林くんの家に行った?!」

「それも部屋に?2人きりで?」

「うん。沙織さんは途中から出かけてたから。」

「あ、雪は上林くんのお母様と仲がよろしいんでしたわね。」

「うん!とても素敵な方だよ!私の理想の女性像なんだよね。」

「んで、その彼女に理解のあるステキな彼氏のお母さんがわざわざ家を空けてくれたのに、まさかの、何にもなし?キスすらも進展せず?!」

「そ、それを話してたんだってば!…ほら、前に茶道部合宿で我慢させてるとか言われたから、本当のところどうなのか知りたくて。」

「それで上林くんはそのことについてどう思ってたんですの?」

「我慢はしてるって。でも、私が今はまだその覚悟はできないからもう少し待ってほしいって正直に言ったら、納得してくれて、私たちは私たちのペースでいいねってなったの!」

「その良心的サービスは期間無制限?」

「未羽、そのキャンペーンみたいな文句はやめてよ。…うんまぁ…特にいつまでとかは話してない、なぁ。」

「おぉ~!すごいねぇ!冬馬くんは本当に紳士なんだねぇ。」

「まさか彼女にも紳士的だとは…。秋斗くんがいる時は雪を振り向かせるためにかなり積極的だったのに、いざ彼氏になったら何も進めようとしてないから実は隠れヘタレなんじゃないかとか思っててごめんよ、上林くん!」

「いやー雪くらい奥手というか身持ちが固いと彼くらい辛抱強くないと無理なのよ、きっと。ある意味バランスとれてていいんじゃないの?」

「こめちゃんも明美も未羽も言いたい放題だよね。」

「それぐらい彼のことを尊敬するってことよ。」

「本当に上林先輩はすごいですね、あたし憧れちゃいます!」

「祥子、略奪愛は勘弁してね?あなたに言われると冗談じゃすまないよ。」

「何言ってるのよ雪。上林くんは雪以外アウトオブ眼中なんだから自信もちなさいって!」

「いや、明美、そういうことじゃないんだけど…でも、まぁ、そういうことにしとく…。」

「大丈夫ですよ師匠!あたしが好きなのは、師匠と付き合ってる状態の上林先輩ですから。見るのが好きっていうか!」

「ならいいんだけど。」

「ふふ。雪も心配性ですわね。なんにせよ、きちんとお話出来て良かったですわね。すっきりしました?」

「うん、京子、ありがとう。つっかえが取れた感じですごくすっきりした!」

「そーゆーことだと雪のとこはしばらく進展ないんだろうけど。」

「こめちゃんはとうとう、旅行に行った、のよね?」

未羽と明美がずずいっとこめちゃんに迫ると、こめちゃんは顔を染めてはにかむ。

「…う、うん。ででででも!…春先輩…すごく、優しかったよ?」

「大人の階段登っちゃった感想は?」

「し、幸せです…。」

「うきゃああぁ!実際のとこ、どう?ほら、辛いとかなかった?」

「う、ううん。先輩、本当に優しくて。なにをするにも丁寧で」

「ああああこめちゃんやめて!これ以上何も言わないでぇ!うううっ、こめちゃんの口からそういうことが発される日が来るとは!こめちゃんの穢れなき心がっ!純粋な永遠の少女がっ!!ううっ!」

「雪は落ち着きなって。今時そんな人いないから。永遠の少女って何の漫画のタイトルよ?知識くらいならみんなあるんだからそれを穢れというなら穢れだろうし、逆に知らないのは単に危機意識の足りない阿呆でしょうが。」

「わ、分かってるよ!どうせ私は貞操観念も大正時代ですよ!でも明美ももう少し優しく言ってくれてもいいのに…。」

「事実を言ったまでだもん。私たちがちくちく言っていかないと上林くんが可哀想って分かったんだし!」

「そんな明美は雨くんとどうですの?」

「ささささ最後まではっ!まだっ!私もまだ少し抵抗がっ!」

「なんだ。明美も怖いんじゃないの。」

「怖くは、ないよ?そんなにはだけど。現に今のとこ平気だし。雨もその辺うまくやってくれてるから。」

「は?」

「明美、詳しく。つまりどういう状態なわけ?」

「未羽、顔が悪代官様よ。ん、まぁ……ちょ、ちょこっとずつ慣らしては、いる。」

「あーなるほどね。譲歩してるどころかかなり進んでいるわけね。どっかの誰か()とは大違いで。」

「そこはあえて伏せなくていいよ!嫌味でしょそれ!」

「雨くんの方は大丈夫ですの?それは殿方には逆に辛いのでは?」

「毎回毎回、本人がぎりぎりになったところでその辺の壁に頭打ち付けて走って離れて、5分くらいしてから帰ってくるわよ。見ててさすがに不憫になる。」

「そーかそーか。雨くん歓喜の日も近いわねー。まぁ明美を彼女に出来た時点で雨くんに敵はないか。」

「雨先輩も今日来るんでしたっけ?」

「そうそう。」



さて、今どういう状況かなのかと言えば、駅前のカフェで茶道部2年女子と祥子でいる状態だ。

なぜかって?


「待ち合わせ時刻まであと5分くらいだね、移動する?」

「そうしよっか。」

今日はこれからみんなでテーマパーク(遊園地)に行くことになっているのだ。どうせ集まるのだし、また女子だけでのトークがしたいよね?ということで待ち合わせより1時間早く来て話していた。

「葉月も来られたら良かったのにね。」

「仕方ないです、師匠。」

葉月はゲームの強制力で君恋高校に入ったが、元々は東京育ち。今日はちょうど帰省しているのでここにはいない。(ちなみに、「お姉様とのせっかくのでーとがぁぁぁ!」と断末魔の叫びを残していった。)友美ちゃん真理子ちゃん大樹くんも予定があったので来られなかった。

全員で席を立って移動するときにたまたま未羽の隣になったので、ずっと気になっていたことを訊いてみるとことにする。

「そうだ、未羽。」

「何よ?」

「あんた、鮫島くんとはどうなの?」

「どうって?」

「なんか進展とかないの?」

「なんも?」

「連絡は取ってるのよね?」

「見たい?」

「え、いいの?」

ケータイを差し出されたのでついつい覗きこむ。

『8月3日 8時おはよう(鮫)→9時おはよー(未) 22時 1日お疲れ(鮫)→22時お疲れー。(未)

8月5日 6時 おはよう。今日は生徒会合宿で相田さんたちと会うんだ (鮫)→8時 聞いた聞いた。がんば。(未)→ありがとう(鮫)』

「…え。まさかこれだけ?」

「大体ね。」

「さ、鮫島くん、可哀想すぎる…!これは人のこと言えなくない?」

「期待するなって言ってるでしょ?」

「それにしてもだよ!」

私の咎めるような視線を受けると、未羽は大きくため息をついて至極どうでもよさそうな顔で言った。

「私、彼のこと異性としては何とも思ってないわ。だからちゃんと言うつもりなのよ。」

「え?言うって何を?」

「そういう対象として見られないってこと。そろそろはっきりさせ時だと思ってる。」

「そんな…!?え、み、未羽は…彼のこと気になってるんじゃなかったの?」

「いや?」

「だってクリスマスの時とか赤くなってたじゃん!」

「イケメンに『君が無事でよかった』っていう乙女ゲーみたいなこと言われて私が萌えないとでも?」

「あれは萌えだったというのか!なんて不憫な鮫島くん!」

「だからちゃんとけじめつけるって言ってんでしょ。」

未羽が彼のことを何とも思っていないのなら、彼と付き合うことを強要するのはおかしいことになる。

彼女が本当に彼のことを何とも思っていないのなら。

「…一応訊くけど、未羽、それは私のことを気にしてじゃないよね…?」

「前に言ったでしょ。違うっつの。本当に私、彼のこと、男性としてはなんとも思ってないのよ。恋愛的に好きなわけじゃない。だからこれ以上にならないようにはっきり切るつもりなの。これでこの話は終わり。いいわね?」

未羽は一方的に話を終わらせてからケータイをブラックアウトさせた。

私の言葉を拒絶するかのような態度に、私もそれ以上は何も言えなかった。



待ち合わせ場所には既に男子のみんなが集まっていた。茶道部男子の俊くん、遊くん、それから冬馬と、明美を例え友達といえども他の男子と遊園地デートさせるわけない雨くん、そしてなんと。

「東堂先輩、今日はいいんですか?勉強とか…?」

「ま、一日くらいなんとかなるだろう。」

「東堂先輩、すみません…。兄さんが無理矢理…。」

本当は会長が行きたがったのだそうだが、どうしても外せない用事があって泣く泣く断念したらしい。その代わりとして当然のように俊くんがお守りを言いつけられてるのだが、それだけでは不安だったのか東堂先輩にも同行を頼んだそうだ。

過保護にも程がある。

「そんなに無理矢理にじゃないぞ?俺も息抜きがしたかったんだ、気にすんな、俊。」

俊くんの頭にポン、と手を載せぐりぐりと撫でている。

京子はまさか来るはずないと思っていた東堂先輩が一緒と聞いたとき驚いていた。



「…で?なんで一年が俺とイノシシ女だけなんですか?」

「しょうがないでしょ、太陽。神無月くんが体調崩しちゃったんだから。そうなんだよね、冬馬?」

「俺のとこにはそういう風に連絡が来てた。太陽くんのところにも行っているだろ?」

「来てますけどね?俺、このメンバーでいてもしょうがないじゃないですか。帰ろうかな…。」

「太陽、ここには太陽の大好きな東堂先輩も雨くんもいるよ?」

本当に家の方向に向かいかけた太陽を、大事な事実を指摘して慌てて引き止める。

せっかくの太陽と祥子が二人になれる機会を逃すわけにはいかない!!

「でも先輩方とはまた会えるし、わざわざ遊園地なんて行くより家で…」

「太陽くん、上林くんと雪が遊園地デートでいちゃついてもいいわけ?」

同じくスチル回収をしたい未羽がぼそっと太陽の傍で話したもんだから太陽がピタっと動きを止めた。

「…横田先輩もやりますね…。」

「ふふん?まだまだ太陽くんには負けないわよ?」

何の勝負だ何の。


「さぁ、じゃあ行くか。」

東堂先輩が声をかけてくれて、私たちも電車に乗る。

遊園地デートは何事もなく、いや少し太陽たちに進展があることを期待しよう。

私は未羽と目配せして電車に向かった。


この回で人物紹介を除けば高校2年生編がちょうど50話となりました。ここまでお付きあいいただき、ありがとうございました。最近忙しいこともあってスランプ気味ですが細々と完結までは続けるつもりなので今後も見守っていただけると幸いです。

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