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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校2年生編・1学期~夏休み】
179/258

天に愛されない攻略対象者様に合掌を。(生徒会合宿編その8-3日目)

そして3日目。

今日はお昼ご飯を食べてから、次の日の初日の出見学の場所を散策することが予定されているので、山の中を歩くことになる。というわけで出発隊のみんなは朝から長袖長ズボンの対策済みだ。

この散策は、ゲーム上では、足場を崩して滑り落ちてしまうなどの危険なイベントが予定されている。

主人公の祥子を残してイベント自体を回避するか迷ったのだが、彼女自身が行くと言って聞かず、そして私も、回避したことで違う形でイベントが起こってしまう(ほせいされる)方が予想できなくて怖い、と言う彼女の気持ちはよく分かるので反対しきれなかった。

居残りで夜ご飯作り担当になっているのは、雑用 (三馬鹿)、保護者 (お仕事のある愛ちゃん先生)、体力的に無理組 (花園くんと葉月)と、汚れるのが嫌だと言った都会っ子組(泉子先輩と斉くんと雨くん)、お守り係(鮫島くんと俊くんと三枝くん)だ。

愛ちゃん先生が行かない…いや行けないことで消去法により四季先生が引率してくれることになっているのだが。

「かえって不安なんですが。全員で遭難とかしませんか?」

「大丈夫だ。俺が地図を持っているし、むしろ先生を止めるためにここにいる。」

「東堂くん、私、地図は読めますよ?」

そういうわけで、東堂先輩、桜井先輩、会長、美玲先輩、冬馬、私、こめちゃん、雹くん、太陽、祥子、神無月くん、卯飼くんが出発することになった。




暫く森の中を歩くと四季先生が嬉しそうにはしゃいで前方を指差す。

「あ、見てください!白くて美味しそうなキノコがありますよ?」

「先生、それはドクツルタケです。猛毒です。」

「あ、ほら、ヨモギ!これならお料理に使えそうですよね?」

「先生、それはトリカブトです。食べたら死にます。」

私が事前に図書室で借りた本、『毒草と薬草の見分け方』による知識はきちんと役に立っている。イベントで散策がある、そして引率が四季先生であると聞いた時点で、素人判断でキノコや薬草採取をするという最も危険なこと(散策タブー)を先生がやろうとすることは想像がついた。こんなものイベントにはないが、イベントじゃないからこそ「高校教師の判断ミスで合宿中の生徒全員死亡」という新聞の大見出しビジョンが見えてしまった。

「四季先生ーさすがに俺でもそれは食べようと思いませんよ?」

最後に先生が指差したのは鮮やかな赤い色のキノコだ。私がツッコミを入れる前に卯飼くんが入れてくれた。

「先生、何も持って帰ろうと思わないでください!どっちにしてもキッチンには立たせませんが!」

そのキノコを目にいれた美玲先輩が四季先生を叱りつける。

「…先輩、事前に図書室で本を借りてたのってこういうわけですか?」

「そうだよ神無月くん。これから生徒会で関わっていくとクラスで過ごす時以上に悲惨なことをしでかしてくれる先生には要注意だからね。今のうちに美玲先輩や東堂先輩の動きを見ておくと勉強になるよ。」

「はい、身に染みてよく分かりました。」

「相田さん〜どういう意味ですか?」

未来の生徒会長は顔を引き締めていた。



「あ、ここ、ぬかるみがあるので気をつけてください。」

先頭を歩いていた冬馬が教えてくれる。

細い一本道になったので冬馬と東堂先輩が先導し、美玲先輩、桜井先輩、雹くんが四季先生をフォローして真ん中、こめちゃん会長を挟んでその後ろに祥子たち一年、最後尾が私になっている。冬馬と私で祥子をカバーすることにした結果だ。私が冬馬から大分離れるこの順番に冬馬は「危ないことがあった時に守れない」と渋っていたのだが、太陽がすぐ近くにいることを条件にしぶしぶ折れてくれた。

「祥子ちゃん、大丈夫?俺が手ぇ持ってるから気をつけて下りなよ?」

「ありがとう、卯飼くん。」

卯飼くんは昨日祥子に助けられてから祥子にとても気を配っている。ゲームでいえば卯飼くんの好感度ポイントは高くなっている状態なんだろうな。

攻略対象者の卯飼くんが主人公の祥子の手を取って慎重に歩かせる姿はスチルにありそうなくらい絵になる。一度祥子が軽く足を滑らせ、卯飼くんに抱きつくことになった時はもしかしたらこれがイベント代わりかと疑ったくらいだ。ちなみに、今回電波が届かないので盗聴が録音になっている未羽に「衛生回線接続は無理だったわ。どうせだったらカメラでも撮ってきて?」と言われ私は隠しカメラも常備している。おそらくエンド補正そっちのけでさっきのシーンをリピートして萌えることだろう。

「うわ!」

「ねーちゃん、油断しないで進めよ。」

太陽が滑りかけた私の手を支えてくれる。実によくできた弟だが、君には(友情出演者)にそんなことをしている暇はないはずだ!ライバルに先を越されてしまうぞ?

「太陽、向こうに行かなくていいの?」

「向こう?どこ?」

「祥子のとこ?」

「はぁ?なんで?」

「いやーほら。昨日祥子助けたからなんかそういう方向に進まないかなって…。」

「これだから…あんなもん、仕方なくに決まってんだろ?」

もしかしたらと期待したのだが、やはりあの程度ではダメか。

それどころか、重いため息をつく私と舌打ちながらも手を貸してくれる太陽を見ていた神無月くんにしみじみと呟かれてしまった。

「太陽って本当に相田先輩のことが好きだよなー。」

ここまでいくと過保護っていうんだよ。好きとかじゃないって。

「太陽さ、もし相田先輩が姉じゃなかったら好きになったりした?」

なんで君はその純粋そうな顔で危ない発言ばかりしてくれるのかね?

俊くんとのBL疑惑もしかり、今回のだって近親相○を連想させかねない発言だよ!山登りで疲れてて何でもいいからと選ぶ話題でも許されないよ?

「どうだろーなー。近くにいねーと他人の人柄なんか分かんねーから。」

太陽も真面目に答えない!

「じゃあ養子とか再婚での連れ子で同じ家で暮らしてる設定だったらで。」

なんでそこで頑張って仮にの話を続けるのだ!

「割と直感派なとこは苛々しそう。でもねーちゃんの頭の回転の速さや論理的思考は合うからもしかしたらはあんのかな。」

「二人ともいいかい?私たちは紛れもなく正真正銘100%血の繋がった姉弟です。そして我が家の両親はお互いに初婚で離婚予定もありません。」

過剰反応と言うなかれ。

乙女ゲーが元なんだとしたら「実は義姉弟でした。そして弟の過保護は恋愛感情だったのです!」なぁんてよくある話。未羽がそんな設定はないと言ってくれていても補正が怖かった慎重派の私は、もちろん、私と太陽の母子手帳をこの目でしかと確認させていただきました。

「相田先輩、仮に、の話ですよ?実の姉弟じゃなければ話題としてセーフかなと思ったんですけど。」

「仮にでも、です!なんでそんなにこだわるの?」

「太陽の女嫌いって相当じゃないですか?その太陽がここまで優しくして配慮してる女性って相田先輩だけなんで、恋愛って意味でもタイプなのかなっていう好奇心です。」

「好奇心で何でも許されるのは幼稚園まで!そもそも、太陽のこれは姉弟だから成り立つ話であって、その仮定の場合前提が成り立たない!というわけでおしまい!」

「そんなに過敏に反応しなくても俺もそーゆー対象でねーちゃんのこと見たこと一度もねーから。もし万が一そんな感情持ったりしたら俺は家で発狂するわ。」

「え、それはなんで?」

「ねーちゃん警戒心ゼロだから。」

どういう意味かな、太陽?

その時、「うあああああ!」と前方で叫び声が上がる。

「何があったの?!」

「四季先生がぬかるみで見事に滑ってあっちまで落ちていったみたいです!」

神無月くんが指さす方向に、途中で桜井先輩と雹くんが捕まえたらしく真っ逆さまに落ちるのをかろうじて避けられた四季先生の情けない姿が見えた。

それにしてもかなり下の方だ。大分滑り落ちたらしい。

もしかして、これが「落ちる」イベントなの?

ようやく上がってきた先生は「本気で死ぬかと思いましたよ…」と青ざめていたが、私としては祥子の身代わりになってくれたようなのでひとまず安心。

先生の悪運回収能力はゲームをも超えるのかもしれないなーなんて思っていたら、後から祥子が「第三弾の四季先生は一部の危険なイベントで一緒にいると、先生の方がイベントに嵌って、主人公が助けるっていう普通と逆バージョンが楽しめる乙女ゲームでは珍しいキャラだったんですよ!」という貴重な情報をくれた。

ゲーム補正の働かなかった先生に合掌した。




それから美玲先輩も手伝って四季先生を回収した後、先に進む。

「四季先生、お願いですから草むらを突っつかないでくださいね?蛇が出てきたら困りますから。」

「しませんよ、上林くんも私への信用ないですね!」

信用っていうのは、信じる根拠があってこそ成り立つと思うんです。

今、冬馬がわざわざ蛇のことを持ち出したのは根拠のないことではない。

残る今日のイベントは毒蛇に咬まれるというもの。

美少年が跪いて主人公の傷口を吸うという、画面越しにときめかずにはいられない(未羽談)「いかにも乙女ゲーム」な光景が見られるのだそうだ。

だけど毒を口で吸い出すのは現実的には危険なのでオススメできない。お医者さんだったら絶対にダメ、というだろう。口の中の傷から毒が回るし、脳に近いせいでダメージの深刻さが上がるからだ。というわけでこれも今回全力で回避したいイベントの一つ。同時に、これを終えればこの合宿の危険なイベントは無事に終えたことになる。

頭の中でおさらいしながらせっせと先に進むが、結構急な登りが多いので足場が安定しておらず危ないところは多い。

「こんなところ…葉月とか登れるのかな?」

「無理だろうな、あのきゃんきゃん女じゃ。どうせ兄貴がおぶることになるんじゃねーの。それより足元の方に注意払えよねーちゃん。また滑るぜ?」

すぐ前を歩く祥子がずっと卯飼くんに手を引かれており、まるで恋人が手を繋いでいるように見えるのをぼんやりと見ていたら太陽に注意されてしまった。

お姉さんとしては、イベントも怖いけれど、太陽が全く祥子に興味をもたない状態が続いてる現状に不安を掻きたてられる限りです。



「ここだー!」

歩き続けてようやく少し小高くて開けたところに出た。

「やっと着いた―!苦労した分だけいい景色ですねー!ここなら障害物もないし!よく見えますね!」

卯飼くんが歓声を上げる。

確かに視界に木々が一望できるし、田園風景にかかる日の出も綺麗に見られるだろう。

「そうだな。しかし道が悪すぎる。ここに来るもっと簡単な道を探さないとな…。」

東堂先輩が景色を見回してから言ったのとその悲鳴は同時だった。

「いったぁっい!!」

声の方では会長のすぐ隣で、こめちゃんが手を押さえてしゃがみこんでいた。その姿にざっと一気に全身の血の気が引く。

「まいこさん!!!」

「こめちゃん!」

なんで?!蛇なんかいた様子なかったし、草むらを突いたりもしていないはずだ。蛇は威嚇時間がそれなりにあるから踏んだりしない限り咬まれる危険はないはずなのに。

バックを探ってお目当ての物を取り出しながら目に涙をいっぱい溜めているこめちゃんに駆け寄る。

「は、ハチ、スズメバチが…!」

「まいこさん、手ですか?!」

会長は躊躇わずにこめちゃんが押さえている手に口をつけようとする。

「待ってください!ハチなら口で毒を吸うと歯茎などから毒が入る可能性があるので、これで毒を絞り出してください。それからこれで流してください。こめちゃん、ハチに刺されたことは?」

こめちゃんがぼろぼろ泣いたままふるふる首を横に振るのを見て私は『森の危険生物』の本で覚えた対処法を思い出し、ポイズンリムーバーという専用の機械(ネットで購入)と水の入った水筒と一緒に渡す。すると使い方を教えなくとも会長はそれをこめちゃんの傷口に当てて処置をし、その後に水で洗い流している。その手際を見る限り、先ほどの行為に走ろうとしたのは、いつもは冷静な会長が単に動転していただけのようだ。

そして処置を終えた会長は必死の形相のままこめちゃんを抱き上げて元来た道を戻ろうとする。

「海月くん、気持ちは分かりますが、先ほどの道を考えるとその体勢は危険です。増井さんを下ろしてください。」

「いえ、聞けません。一刻も早く病院に行かなければ。」

「落ち着け、春彦!」

四季先生と東堂先輩が会長を物理的に止めている中に、一人違う声を上げた子がいた。

「待って下さい、あの、本当にハチでしょうか…?」

その問いに急いで戻りたい会長は苛立った表情を見せ、こめちゃんは泣いて濡れた目で祥子(発言者)を見る。

「さっきの増井先輩の近くにいた虫、羽が2枚だったと思うんです。」

羽が2枚…?ハチは羽が4枚だったはず。

「祥子、それは間違いない?」

「私の視力は2.0、動体視力は自衛隊の航空課の方も驚くほどです。」

祥子は野生方向特化型のハイスペック女子だ。そしてその能力は昨日の事故で証明済み。こめちゃんの顔色が悪いのも、スズメバチに刺されたと思い込んでショック状態だから、という可能性はある。

「こめちゃん、傷口見せて?」

私が傷口を見ると、それはよく見れば。

「…刺し傷じゃなくて咬み傷みたいですね。ハチは毒針を指しますが、アブは噛んで血を吸います。あと、羽が2枚で外見はハチに似ています。アブであった可能性は高いと思います。病院には行った方がいいと思いますが、まずはこれで。」

抗ヒスタミン剤を入りのステロイド軟膏を渡す。

「あとは冷やせばなんとかなると思います。万が一ハチだとしても毒はヒスタミンですから、これは効くと思います。そんなに急がなくても大丈夫です、会長。」

言って、ひとまず安堵の息をつくと、みんなが呆然と私を見ていた。

え?

「…雪、なんでそんなこと知ってんだ?」

しまった、あまりにスムーズな対応すぎたか。

雹くんにすら訊かれるということは、やはり一般的常識ではないらしい。アウトドアの専門家ならあいうえお発音レベルの基礎だし、ネットにも転がっている情報だけど、その場になると出てこないもんだものね。私とて予め散策時に注意すべき生き物とその対策を練ってきたから出せたに過ぎない。

さてさてどう誤魔化そう。

「山歩く時に注意しなきゃいけないのは遭難と怪我だろ?怪我は、落ちたりした時の打ち身切り傷の他に考えられるのは野生生物によるものだから準備してたんだよな。雪はトラブル体質だから。」

悩んでいたところで冬馬のフォローが入り、みんながなんとなく納得してくれたので事なきを得る。

が、それで納得というのは心外だ。何度も言うけど、私はトラブル解決者なんだってば!

「先輩、あの本…覚えてたんですか?」

「いや、主要なとこだけ。細かいとこは全然。」

「雪くん、君は本当にすごい子だな!」

美玲先輩に抱きしめられ「やめてくださいよー」とじゃれると、ようやくピリピリしていた空気がマシになった。会長だけがその辺にいるハチやアブを殺虫剤を買ってきて片端から殺していきかねない空気だった。いや、専門業者に頼んで駆逐する可能性の方が高いか。

「それでも念のため増井さんは病院には行った方がいいでしょうね。」

四季先生がケータイを出し、「あ、使えないんでしたね、こんな時に!」と珍しく舌打ちしている。会長に薬を塗ってもらったこめちゃんがようやくほっとしたような笑顔になった。

「雪ちゃん…!ありがとう!」

「素人判断だし病院に行って確認した方がいいのは間違いないから。そうだ。多分痒くなったりすると思うから冷やさないと。ちょっとタオルを水に浸してくるね。」

「ねーちゃん、俺が行く!」

「悪いが太陽、お前には頼みたいことがある。」

太陽を東堂先輩が止めた。

「お前、記憶力いいから道を覚えているだろう?」

「はい、先輩。通ったところなら完璧です。」

「桜井と一緒に先にコテージに戻って愛ちゃん先生に車の手配をお願いしてきてもらいたい。携帯が使えないせいで向こうに連絡出来ないんだ。」

「でもねーちゃんがまた無茶しそうで…。」

「太陽、あそこに行くだけだから大丈夫よ。」

私が少し先の木の陰を指差したことで太陽はしぶしぶ「分かりました」と答える。

「雪、俺も行くよ。」

「冬馬はここにいて?会長がまだいつも通りじゃないし、さっき登ってた時にチラッて水場見えたから場所はわかってる。すぐそこだよ?ほら。」

「でも何が起こるか分からないだろ。」

「だからこそだよ。今のが『蛇イベントの代わり』か分からないでしょ?本当にただの事故かも。蛇に咬まれたら対処出来るのは冬馬だけだもん。」

冬馬は一定の応急処置なんかを講習で受けていて資格もあるし、今回蛇系統にかなり気を遣っていたから俄か知識の私以上に適切な判断が出来るはずだ。

「…分かった。」



冬馬が不承不承頷いてくれたので、荷物は下ろす暇も惜しんでそのまま草をかき分け少し歩くと、川の見えるところまで着いた。

段差を降りて水にタオルを浸し絞りながら考える。

それにしても、なぜ。

今回のアブが蛇イベントの代わりなんだとしたら、かなり危険度が落ちたことになる。それは昨日の「起こるか未定の」事故イベントがあったから?ゲームは起こす危険度の辻褄を合わせようとしてる?それに被害者が祥子じゃないのはなんでだろう?被害者じゃなくても攻略対象者との絡みが出来るから?それとも…こめちゃんに関しては攻略対象者の会長が恋人だから?

もしその仮定が正しいのだとすれば、次に危ないのは…。

考え込んでいたせいで段差を登ったところにあった木にぶつかりそうになる。

「あっとあぶな…」

その瞬間、私はとうとう、合宿中視界から意図的に外していたヤツらと至近距離で目をあわせてしまった。正確にはヤツらの背中の目と、だが。

こんなにも自然豊かな場所だから、ヤツらの全長は片手をいっぱいに伸ばしたのよりも大きい。

それだけで私の全身の鳥肌を立たせて血の気を引かせるのには十分だったのに、ぶつかった衝撃で、ヤツらは翅を羽ばたかせ、唯一の空間であるこちら側に一斉に飛んでくる。

「いやぁぁぁぁぁ!!!!!」

必死で全力で後ずさった私は。

さっきの推察が正しければ次に危険なのは私であることも、後ろに川があることも、すっかり忘れていた。


ばっしゃーん!!



急に足場がなくなり、大きな音とともに、私は水の中に吸い込まれた。


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