いじられっこは人気者。( 生徒会合宿編その7-2日目)
こうして出来た夕食はアンチョビと山菜のスパゲッティ―だった。これがかなり美味しくて、葉月や祥子に「すごいですわ!」「美味しい!!」と絶賛されたため、ソース担当だった花園くんが照れていた。そしてその様子を、三人の美少女が楽しそうに話している光景としてしか捉えていない泉子先輩と美玲先輩の機嫌もすこぶる良かった。
片付けは美玲先輩やこめちゃん、雨くんたちがやる、と申し出てくれたのでそれに甘えることにして、猿が煎れてくれた食後のお茶をゆったりと飲んでいると話題の花園くんが近寄ってくる。
「あ、相田先輩。」
「んー?」
「あの…あ、ありがとうございました。…相田先輩に言われなかったら、ぼ、僕、この合宿中も、それからこの後も変われなかったと思うんで…。」
「大したことしてないよ。あれ言われただけで踏み出せた花園くんは、きっといつもそこから出たいって気持ちがあったんだと思うもん。」
それに半分は自分のご飯のためでした、とは言えまい。
よしよし、と頭を撫でると、「あの!」と彼にしては大きめの声を上げた。
「あ、ごめん。嫌なんだっけね。つい可愛くて。」
「…あ、いえ…あの、さ、さっきの眼鏡買いに行くって話なんですけど…。」
「ああ、行きたい?いつがいい?」
「…ほ、本当に行ってもらえるんですか…?」
「それくらい構わないよ。」
「…じ、じゃああの…」
「なぁにやってんだよ?」
ぬっと顔を出してきたのは太陽だ。剣呑な目で花園くんを睨んでいるせいで花園くんがちょっと後ろに引く。
「お前さー。俺の前でねーちゃんに声かけるとか、いい度胸してるじゃねーの?」
「い、いや…その。」
「太陽は心狭すぎ。眼鏡買いに行くくらいいいじゃないの。」
「ねーちゃんは警戒心なさすぎ。あのさ、花園。お前の外見がどうあろうと、俺はお前のこと男だと思ってるからな。」
「!」
花園くんが驚いたように目線を上げて頬を染め、太陽は気持ち悪そうに顔を顰めた。
「…なにちょっと嬉しそうな顔してんだよ?どーゆー意味か分かってんだろーな?」
「…え?…えっと。」
「ねーちゃんに近寄ることは許さないって言ってんだよ。」
「らんちゃんもなかなか隅に置けない男だね。白猫ちゃんを誘惑するとは!キミもボクの弟子にしてあげるよ!あ、もちろん太陽くんもいつでもおいで?今年は見所のある子達が多くて困っちゃうね!」
桜井先輩も楽しそうに介入してくる。
話がややこしくなるのでやめてもらえませんか、先輩。
「見所も聞き所もありません。そして俺はトチ狂っても先輩のところにはいきませんのでご安心を。」
「あぁ、キミも恥ずかしがりの類だね!どこまでも秋斗くんと似ているんだなぁ!」
そこに現れたのが最近、攻略対象者なのにいじられ度合に磨きがかかっている雹くんだ。
「あ、じゃあ俺が行ってやろうか?」
「雹くん!!!!まだそっちに行ってはいけない!」
「はぁ?雪、何言ってんだよ。眼鏡だよ眼鏡。」
「あ、そっちの方ね。てっきり桜井先輩の方かと。」
「女子が苦手でも、俺にそっちの趣味はねーよ。」
「ひ、雹先輩…。いいんですか…?」
「おう!」
「待った。雹に任せたら多分悲惨なことになるでしょ。やめときな?」
親指をぐっと上に上げてかっこよく決めた雹くんに冷や水を浴びせたのは半眼の斉くんだ。
「斉。どういう意味だ?俺は行くぜ?」
「無自覚か。これだからなぁ。…仕方ないから僕も行ってやるよ。だからあのセンスのないだっさいおじさん眼鏡はさっさと捨ててくれない?」
雹くんを質問を見事に無視した斉くんは、依然としてぶっきらぼうな口調だけど、花園くんのことを認めてあげたらしい。こういうタイプに限って一度認めると面倒見がよかったりするから安心だ。
「おい、なんだよ斉、俺のセンスを疑うのか?」
「雹だと何でも似合っちゃうから。センスなんて磨かれてないでしょ?」
「俺を見くびんなよ?俺のセンスはな」
「僕さぁ、前にだっさいアロハシャツを冗談で雹に着せたとき、それすらも着こなしたの見て、絶対雹のセンスは信用しないって決めたんだよね。」
「ださいアロハシャツって?」
「赤と紫の毒々しい縞々に大量の黄色いハイビスカスが所構わずプリントされて目がチカチカするやつ。」
ださいというか趣味が悪いタイプだぞそれは。
そんなのよく買ったな!というかよく売れると思ったな、販売元!
「ん?それは去年愛ちゃん先生が着てたのに似ているんじゃないか?」
「失礼ねぇ小西さん。ワタシが来たのは大きな黄色いハイビスカスが、どん!と堂々とプリントされているやつよ?それに赤無地よ。そんなセンスのない物と、ハイビスカスがあれば同じってされちゃ困るわ。」
「ですよねー。そんな趣味悪いの、普通すぐ脱ぎますよね?僕もまさかそのまま出かけたりしないだろうと思って押し付けたのに、こいつ、特に何も思わずそのままコンビニに行ったんですよ!ちょっとやく○のお兄さんぽかったのに、それでもおねーさんズに囲まれて話しかけられてて、しかも例にもれず鳥肌立ってるのが爆笑でした。」
「あ、あれは女避けのつもりだったから断じていいと思ったわけじゃねーぞ?!って、おいっ!花園、なんで笑ってんだよ!」
雹くんに頭を小突かれて髪を再びぐちゃぐちゃにされた花園くんは、昨日までとはうってかわって明るく笑っていた。
お茶を終えた後は、トランプやウ○などで遊ぶこともなく早めに寝ることになる。
「明日は山の中に散策に行くんですから、寝不足など言語道断です!転んで尾てい骨を打って痛い、というだけじゃ済まないんですから、夜更かししちゃだめですよ!」
との四季先生の指示だ。
睡眠時間が足りていようがいまいが、そこに障害物があろうがなかろうが、いつでもこけられるドジっ子スキルを持っている先生にとっては死活問題ですもんね。
とは心優しい生徒会一同、誰もツッコまなかった。
そんなわけでまだ8時だというのに寝支度を万端にして風呂の順番を待っていると、女子部屋がノックされた。
「誰だろう~?はぁい今開けますー。」
ぱたぱたと駆け寄ったこめちゃんがドアを開けると冬馬が立っていた。
「雪、今ちょっと外に出られる?」
「?うん、大丈夫だよ。」
こめちゃんがにっこり笑って、「雪ちゃんいってらっしゃ~い」と送り出してくれるのでちょっと照れる。
外に出ると、もう真っ暗だった。冬馬が私の手を取りペンライトで照らしながら進み始める。
「冬馬?一体どうしたの?」
「見せたいものがあるんだ。」
しばらくコテージの脇の道を上り、少しだけ森の中をかき分けて歩いて開けたところに出ると冬馬がペンライトを消す。
すると、その光景が目に飛び込んできた。
「わぁ!!」
満天の星空だ。現世では、東京に住んでいた前世よりも星が見える場所に住んでいるけれど、これほどはっきりと見えることはない。こういう空気の澄んだところだからこそ、普段だったら隠れている星の煌めきが分かる。こういうのを幻想的な風景っていうのかな。
「綺麗…。」
「夕飯の準備時間に外に出たときにここを見つけたんだ。雪に見せたくて。」
「そういえば最近空を見上げることもなかったかも。ありがとう、冬馬。」
笑って冬馬を見上げると、冬馬は握った手の指を絡めてくる。
「喜んでくれてよかった。」
ようやく闇に慣れてきた目でにこりと笑った冬馬の顔が見える。
「あれが白鳥座だよね?デネブあるし!あれがこと座?星が多すぎて夏の大三角形が逆に分かりにくいね!」
「あれがアルタイルじゃないか?」
「本当だ!あの星繋げると鷲っぽい。」
時間も忘れて二人で眺めていた
「くちゅん!」
のに、私はやっぱり雰囲気をぶち壊しにする天才らしい。
「冷えてきたか。帰る?」
「ううん、もう少し見ていきたい。写真うまく撮れないしさ、こういうのって写真に撮っても感動が薄いんだよね。直接目で見た物だからこそこの感動がある気がするもん!」
こういう自然の景色は大好きだ。冬馬が見つけてくれたものをもっとじっくり楽しみたいというのもある。
「そっか。じゃあこれ着て。」
そう言って私に自分のパーカーを渡して着させてくれた。
「でもこれだと冬馬が風邪ひいちゃうかもしれないからいい。」
「それは雪も同じだろ?それに」
そのまま私の肩を引き寄せて抱きしめてくる。
「俺は雪をこうしてれば体冷えないから。」
「…と、冬馬がいきなりそういうことさらっとするからドキドキしちゃうんだよ!」
「そう?俺も同じだって。」
くすっと笑う息が耳元にかかって顔が熱くなる。
「いつも気遣ってくれてありがとう。でも無理しなくていいからね?」
「無理してない。雪のこと気にすることを義務だって思ったことは一度もないよ。自発的にって感じかな。」
なんとよくできた彼氏様で!
「それでよくそこまで気付くなぁ。私は至らないとこばかりなのに。」
「雪は一番気づいてほしいときにはちゃんと気づいてくれてるから十分。それにお互い気が付きすぎても疲れるだろ。それくらいの方が俺には楽なんだって。」
うわぁさりげなく気が回らないことは肯定された。まぁ事実だからいいけどさ。
言ってから頭を優しく撫でてくれる、その触感が好きだ。
冬馬は気遣いだけじゃなくて、フォローも上手い。
どうしてこの人は何でもソツなくこなしていけるんだろう。
勉強も、運動も、仕事も、人づきあいも、性格も、女性関係も、欠点を見つける方が難しい。同じ完璧超人でも会長のように超人を越えた変人な部分がない。そんな彼がどうしてこんなに面倒な事情を抱えた私に愛想を尽くさないのか、疑問に思うことがある。選ぼうと思えばもっとたくさん相手はいるのだ。可愛げがあって、無理はしなくて、それこそゲームなんて関係ない、釣り合いのとれる彼女なんて、いっぱい。
「なんでいきなり考え込んだの?」
「んー…ちょっとね。」
「ここで内緒はなしだろ。」
頬をつん、と突っつかれて促される。
「冬馬は本当に出来た人だよなって思って。」
「何をいきなり。」
「えー欠点が見つかりにくくて、…悔しい。」
言った途端になぜか冬馬がくくっと笑った。
「え!?笑うとこ!?」
「褒められたり、嫌厭されたり、気味が悪いって言われたことはあったけど、悔しいって言ったのは雪が初めてだなって思ってさ。あぁ、何も言わずに自然に張り合った奴はいるけどな。」
「これでも私も張り合ってるつもりなんだよ?」
「何を張り合うの?勉強とか運動とか?」
「それよ。それくらいしか張り合えるものないんだよね。勉強だって個別科目で比べたら負けてるもの多いし。運動も、冬馬とまともに体力勝負なんかしたら勝てっこないし。加えて友達の多さとか人づきあいの上手さとか全部合わせた総合勝負されたら張り合えるどころか同じ土俵でなんか戦えないんだよねー。…そこで張り合う必要あるの?という顔しないで?これは今までいろんな領域で高みの見物をしていた私の単なる意地だから。上には上がいるのねっていうね!」
「雪は十分規格外だと思う。それに俺、そんなに性格よくないよ?」
「えー…Sなとことか、いたずら好きなとことか、幼いとことか、そーゆーのは欠点じゃないもん。むしろ知ったらみんな可愛いって思うよ?プラスに評価されるって。」
「それは褒められてる…んだろうけど、嬉しくはないな。」
可愛い、と言ったところで複雑そうな顔だ。男の子って可愛いって言われるのに抵抗があるもんなんだなぁ。
「それにね、それだけ完璧だと不安になるんだよ。」
「…雪、俺が彼氏で不安ってこと?」
初めて不安そうに冬馬の声が揺れた。
「あ、冬馬が浮気する、とかそっちじゃないよ?ただ、私でいいのかなぁ、愛想尽かされないかなって気持ちには、たまになる。特に私はゲームっていうただでさえ厄介な事情を抱えているわけでしょう?もっと他にたくさんいい子がいるのにな、ってね。いっそ冬馬に欠点があればこんな私でも釣り合えるかなーとかね…そんなこと考えてた。ごめん、独り言だと思って忘れて。」
星を眺めながらぼやくと、冬馬が少しだけ私を引き寄せる腕に力を籠める。
「欠点だらけだよ俺。」
「…謙遜しすぎは嫌味だよ?」
「俺は外面がいいだけだから。…前に俺が壁を作ってるって雪、言ってただろ?」
「うん。」
「俺にとって仲良いやつ以外って、なんて言うかな。個性がないんだよ。」
「個性がない?」
「うーん。すごく悪く言えば、みんな棒人間みたいに見えてるって言えばいい?」
「棒人間…。」
「まぁそれは言い過ぎだとしても、似たようなもん。この人はどういう人ですか?って訊かれたら概略は言えるし紹介も出来る。どこどこ高校の何部に所属してて~ってね。だけど人柄の説明はすごくよそよそしくなる、そんな感じ。自分にとってどうでもいいってことなんだ。それなりに仲良くても、昼間みたいな非情なことを平気で言える。本気でそう思ってる。…こんな人間に欠陥がないと思う?俺にはむしろ人として大事な何かが欠けてるんだよ。」
こういう話をするとき彼の目が虚ろになるのは、彼の過去が影響しているのかな。
「釣り合う釣り合わないなんて誰に言われようが関係ない。…まぁ俺としては雪で釣り合わないって言われたらむしろ他に誰がってみんなが突っ込むと思うんだけど…。」
そうか?去年私に寄せられたお手紙の数々には「お前に彼 (ら)は見合わない!」って赤い文字で書かれてたぞ?
そして案外素直に納得してしまったりもした。
だって私、中身はかなり枯れた女(精神年齢通算38歳)だもん。ぴちぴちキラキラの攻略対象者様なんて似つかわしくない。
「それにな?そんなこと言ったら俺だって不安だよ。俺から見れば、雪の方が危なっかしいんだ。」
「まぁ確かに。イベント多いからね。特に今年は危ないもんなぁ。」
するとなぜか頭を抱えられて「それは事実だけど今のはそういう意味じゃない。」とうめかれた。
意味が分からず腕を解いてから冬馬の顔を見上げると、拗ねたような顔をする。
「?どうしたの?」
しばし黙ってこちらの回答を待っていてくれたのだが、私が首を捻ってばかりで埒が明かないと思ったのか答えを教えてくれた。
「……雪、無自覚に他の男とデート行こうとしてただろ?」
デート?そんなものあったか?
「花園だよ。」
「あぁ。花園くんは一度面倒見てあげちゃったから、最後まで付き合ってあげた方がいいかなぁって。デートなんかじゃないよ。」
「あいつが男だって言ったのは雪だよ。」
「そりゃあそうだけど。それは花園くんに自信を持たせるためであって深い意味はないよ。」
「男と二人で出かけたらそれだけでデートだろ?」
「冬馬は太陽みたいなこと言うなぁ。花園くんは弟みたいなもんだよ。大体、小さい頃の秋斗や太陽に似てて放っておけなかったから声かけたんだもん。」
「向こうはそうは思わない。あいつの中では雪は女の子だよ。恋愛対象になるんだからな。」
「えー…よく分からない…。だって姉妹に恋するっていうことはないでしょう?」
納得できずにいれば、はぁと大きくため息を吐かれてしまう。
「これだから油断ならないんだよな。雪が本人無自覚のまま人に好かれやすいのは知っているから警戒は怠ってないけれど、それでも元々べったりの太陽くんや三枝に加えて湾内までいつの間にか懐いてるだろ?」
「太陽や葉月や祥子なんて完全に弟妹だって。」
特に太陽は実の弟ですって。
「その執着され度合が恐ろしく高いっていうのが困るんだよ。この合宿中だって俺が近づく暇も隙もないぐらいじゃないか。」
「……もしかしてやきもち妬いてたりする?」
「だったら何?」
暗闇でも赤くなってむくれているのが分かって胸から湧き上がるように嬉しさがこみ上げる。触れる腕が愛おしい。
こんな気持ちになるのはあなただけなんだよ?
「あのね。」
「うん?」
「私、冬馬が好き。」
刹那に頭の後ろに置かれた冬馬の手に引き寄せられて優しく唇が重ねられた。
しばらくして唇が離れてから冬馬がぎゅっと抱きしめてくる。
さすがに夏の薄着でこれだけくっついていれば冬馬の心臓がドキドキしているのも分かる。
「わ、私がドキドキするのも抱きしめられたいと思うのも好きだと想うのも冬馬だけだよ?」
「…雪は不意打ちで俺を喜ばすのが得意だよな。」
「へへ、お褒めいただき光栄です。」
冬馬の目を見てにこっと笑うと、冬馬が私の首元に手を伸ばしてきて、いつもどんな時でも着けている雪の結晶に触れる。
「雪の気持ちは分かってるよ。だから俺はまだ雪を拘束しないでいられる。平常心っぽい顔していられるんだ。そうじゃなかったら今頃俺、どうなってるかな…。」
とん、と私の肩に軽くおでこをあてて冬馬がぼやいた。
「…こんなに他人に嫉妬するなんて昔の自分じゃ想像もつかなかった。重い、のかな、俺。」
「ごめん私、冬馬がなんでそこで重いって結論に至ったか分からない。冬馬が予想以上に嫉妬深いってことは分かってきたけど、不快に思ったことなんて一度もないよ?大体この程度で音をあげてたら、秋斗の幼馴染や太陽の姉はやっていけませんぜ、だんな。今まで散々見てきたでしょう?あの二人がいかに過保護か!」
「…間違いない。正論だな。」
すまんね、説得力がありすぎて。
苦笑した様子の冬馬に、それにね。と付け加える。
「私も冬馬のことが大好きだからお互い様だよ、それは。」
しばらくの沈黙ののちに、冬馬が微笑む気配がした。
「…ここでそう来るか。だから、なんだろうな。」
いやいやいやお兄さん。日本語は分かるように話してください。指示語と接続語しかなくて大事な部分全部飛ばされたら分かりません。
「今の文に主語と述語を補った説明を求めます。」
50字以内で、と付け加えるとくすりと笑った冬馬が軽いリップ音を立てておでこに唇を触れさせる。
「どんどん雪が好きになってるなって思っただけだよ。」
「か、解答になって」
「なってない?」
熱くなった私の頬に手を触れさせて至近距離で笑いかけるとかずるいでしょう!
とは思いつつも、これはこれでいいな、なんて思ってしまう。
寄り添って、こんなにも傍にいる。それだけでこれだけ幸せなの。
その後もしばらく一緒にいた私たちは、風呂の順番で冬馬を探していた(ケータイは使えないので地道な作業だ)神無月くんに発見された。可哀想な神無月くんは暗闇の中でも分かるくらい顔を真っ赤にして「すみません、お邪魔しましたっ!」と謝り倒してきた。