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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校2年生編・1学期~夏休み】
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先輩方のオンオフ切り替えをマスターすべし。(生徒会合宿編その2‐1日目)

若干、うっすら、R15要素あり?なので苦手な方は回避してください。以後この程度では注意書はつけないつもりなのでご了承ください。

三馬鹿と愛ちゃん先生と四季先生が挨拶してから残りの全員も軽く自己紹介し終えたので建物の中に入る。今年も去年と同じようなコテージだが、合宿所のように広い内装になっていた。

荷物を運び、愛ちゃん先生と四季先生は先生部屋でお仕事に入り、生徒たちは去年と同じようにそれぞれの役職の仕事を習うことになる。人数が多いので今年はもっとわいわいとにぎやかだ。


まずは隣でやっているのが書記。

猿がそれぞれの場所にジュース、紅茶、コーヒーを準備し、それを雉と桃が手伝って運んでいるのを見たこめちゃんが猿に話しかけている。

「ねーねーどーやってこんなに用意したのー?」

「俺っちが持ってきたッス!一部桃も持ってきたッス!」

「だから猿くんは荷物多かったんだねぇ!みんなの何倍もあったでしょう?」

「猿、お手柄なのです!」

「へへへへー泉子先輩に褒められたッス。」

「顔がきもいよ〜猿くん!」

「いいですね!!増井さんの罵り!はぁはぁ。」

「雉、それ以上やると命の危険があるんすよ!会長閣下がこっち見てるんす!」

「泉子先輩、葉月は抱きつかれるより抱きつく専門なのですが…。」

「いいのです!ほら、らんぴょんもこっちでみんなでやるのです!」

「…は…はい…っ。」

1年生時の俊くんですらダメなのでおそらく無理だろうという予想どおり、花園くんは泉子先輩に男子認定されなかったようだ。ほんわりした空気の広がる女子3人だけの部署だから花園くんも少しは怯えないかもしれない。書記は専門の仕事内容としては一番楽な部署で、特に雉が資料の半分をデータ化している君恋側での仕事量は少ないので葉月は書記兼広報を担当することになっている。



お次がその広報。

私は既に会計要員とみなされたので広報にはいない。

東堂先輩がパソコンソフトを起動し、三枝くんを指導している。彼も飲み込みが早い方らしくスラスラと画面を進めているようだ。あとから合流した葉月に俊くんが基本的な作り方や去年作ったサンプルを見せている。

と同時に、美玲先輩は雨くん相手に風紀のお仕事の情報を共有している。天夢では元々の身分制度の名残か、彼がいるだけである程度風紀取り締まりできるらしいが、それだと雨くんがいなくなる再来年以降対応できないので仕組みを整えたいのだそうだ。

「そっちでは没収品は何が多いんだ?」

「こちらでは勉強に関係ないコミック類や、あと雑誌ですね。」

「ほう?なかなか厳しいんだな!こちらは漫画も雑誌もOKだからな。没収品にはタバコとか酒、危険物、その他が多いな!」

「その他が怖すぎですね。例えばで聞いていいですか?」

「どこぞの会長や会計にも言えることだがこちらは共学だからな、アレを持ち込んで明らかにアウトなことを構内でしようとする馬鹿者が多いんだ。検査は先生たちがかなり厳しくやっているが、それでもかいくぐれるそこの阿呆どものようなやつらは結構いてな!」

「あぁなんだアレですか。こっちもアレを持ち込んでるやつはいます。」

「なんてことだ…!…ん?なぜソレが必要なんだ?」

「男子校では男子同士で付き合うやつらもいますからね。逆にアレを取り上げると病気等が危険なので取り上げません。むしろ、そちら(きみこい)の方は取り上げられるとまずいんじゃないですか?だって」

「あああああああああ!雨くん!ちょっと手伝って!三枝さんがパソコン苦手らしいんだっ!」

真っ赤な俊くんが雨くんを引きずり広報を手伝わせる。

美玲先輩は「そうか。確かにそういう危険があったな…没収品から外すよう先生にかけあってみるか?いやそれでは逆に推奨しているように見えるし…うむ難しいな。政策論もこれと似たようなものなのだろうな…。雪くんと太陽くんとも相談するか。」と至極真面目に呟いていた。

ちょっとは動揺しましょうよ!男前すぎて悲しいですよ美玲先輩!




お次が生徒会長組。

冬馬が雹くんに様子を尋ね、会長が神無月くんに生徒会長の理念と具体的な仕事内容を指導している。普段は無駄なことしかしていないように見える君恋生徒会(おちゃらけ)だが、会長が議長を務める審議の時間は大人の社内会議よりよっぽど効率化されている。時間を無駄にすることは人生を無駄にすること、という君恋生徒会モットーを立てて能率を高めるメリハリの効いたお仕事システムを作った会長は仕事人として見習うべきところの多い人だと素直に尊敬できる。あくまでこめちゃんがいないバージョンの会長だが。

そんな「ただの超人」の会長を初めて見た神無月くんは普段(変人溺愛彼氏)とのギャップに困惑していた。



一番大変だったのはここ、会計だ。

今、太陽、祥子ちゃん、そして天夢一年の卯飼くんはそれぞれ私、桜井先輩、斉くんに会計処理の一年の流れを教えられた後、計算処理や事務手続を練習している。

「何度言えば分かんだよ!部活の予算申請分はまず計算があってるか機械的に確認して処理をしていく、項目ごとの必要性はそのあとに別途検討すればいいってさっき説明あっただろ?!」

「つい気になっちゃって…」

「部屋の掃除するときに本を捨てようとして本の中身を読み始めるくらい効率悪いんだよそんなもん!その計算だってさっきから何度電卓打ち間違えれば気が済むんだ!?」

「太陽落ち着きなよ。」

叱りつけているのは先輩でも私たちでもなく太陽で、その対象はあの祥子ちゃんだ。

彼女は自己紹介の時に「全力でやれば何でもそこそこ出来る」と言った。まさにその言葉通り。正確に言うなら、彼女は「全力でやってもそこそこしか出来ない子」だった。あの私を糾弾するために行っていた調査の雑さはわざとではなく、素だったようだ。

「ご、ごめんなさい。真面目にやろうとしてはいるんですけど…。」

「それは見てれば分かるよわんこちゃん。ボクが付ききりで見てるからそこもう一度やり直してご覧?」

彼女は電卓操作にも慣れておらず、何度も失敗して消してしまったりしている。

祥子ちゃんははっきり言って手際もかなり悪い。要領が良くないのだ。

彼女が1つ終わらせる間に天夢でそれなりのスペックを持つ卯飼くんが6の仕事量を終わらせ、太陽は10の仕事量を終わらせる、という差が出てしまっている。

そんな様子で彼女が仕事説明の足を引っ張ってしまう状態が続いたためか、とうとう太陽がキレた。それがさっきのガミガミモードにつながる。

「だから低スペックなやつって嫌いなんだ…!」

「太陽。言い過ぎ。」

太陽の指導は私が担当しており、吐き捨てるような今の言葉にぺん、と頭を軽く叩く。

「だってよ!」

「あんたは高スペック過ぎなの。太陽、出来る人間は分からない人にも分かるように説明して指導できる人だよ。あんたは有能だけど、出来る人ではないことを自覚した方がいい。」

「っ…くそっ。」

太陽の間近についてこうやって一から指導することは初めての機会だが、この子の有能さは会長レベルだ。

「全く。私でも同じ学年だったらついていけないでしょうよ。」

「ねーちゃんなら、同じ時間で俺の8割くらいの仕事量はこなせるだろ?」

「雪ちゃんは女子の規格外だと思うけどねー僕。むしろ女か疑う。」

斉くんがさらっと失礼なことを言ってくる。

「せ・い・く・ん?」

「事実でしょー?あの冬馬くんと同じだけ仕事こなせるんだから。普通推薦枠なんて女子を避けるはずなのに雪ちゃんにはせざるを得なかったってクリスマスパーティーの時に会長さん、言ってたよ?」

「うっ。…それはまぁ置いといてよ。」

「相田先輩ってすごいんですねー。俺、自分より有能な女の人って初めて見ました。」

「お褒め頂きどうも。そういえば卯飼くんはなんで天夢の生徒会に?」

「募集があったんですけど、俺入学時から先輩たちすげーなって思ってたんで、入りたかったんです。あと。」

「あと?」

「生徒会になると秋に自動的に君恋高校に編入できますよね?女の子がいっぱいいるじゃないですか!モテ放題ですよね!」

邪な目的を邪気のない笑顔で言われた場合ってどう対応すればいいのだろう?

「ならなんでお前は男子校に入学したんだよ?」

「男子校の方が女の子からの受けがいいかなーって。そんなこと全然なくて目論見外れたけどなー。」

「いいね!その行動原理!ボクの弟子にしてあげよう!」

「よろしくお願いしまっす!」

「じゃあ花園くんも立候補なの?そうは見えないけど…。」

そう言うと、卯飼くんは困った顔で斉くんを見、斉くんがため息をついてから答える。

「学校側、正確には理事長に言われたんだよ。生徒会を作るのを認める代わりに新入生で一番の劣等生を天夢の普通レベルにしろってね。彼はその劣等生で、その理事長の孫だよ。」

「なるほどね。ちなみに卯飼くんを選んだ理由は?」

「それ、俺も気になります!俺より優秀なやつ結構応募してましたよね?」

「んー。面白そうだったから。」

口元をひきつらせて固まる卯飼くんに桜井先輩が笑う。

「ショックを受ける必要はないよ、月夜くん。そこにいる斉くんにとって面白いは一番の褒め言葉さ!」

「え。そうなんですか?」

「斉くんはむしろ面白ければオッケーな人だからね。多分卯飼くんの明るさやカリスマ性、頭の回転の早さを見たってことなんじゃない?」

「ははっ、照れますねー。」

頰を染めて喜ぶ卯飼くん。

「それにしてもいいですね!美人お姉さんキャラって憧れなんですよー!今度から雪先輩って呼ばせてください!太陽と混ざりそうだし! 」

「ねーちゃんに手ぇ伸ばすな、お前!俺を名前で呼んでる時点で混同するわけねーだろ!」

太陽が卯飼くんを睨みつけている間に、祥子ちゃんに「師匠っ」と小さい声で注意される。

そうだった。彼は惚れっぽいのが特徴の攻略対象者。いかんいかん。

「あ、あたしは相田くんになんと言われようともめげないわ!あたしのモットーは全力投球!明日は明日の風が吹く!だから!!この15年毎日そう思ってるあたしにその口の悪さは通用しないわっ!」

メラメラと立ち上る炎を背景に握りこぶしを固める彼女は全くめげないたちらしい。

「祥子ちゃん、それって日々後悔するようなことがあるってこと?」

「…え!?ああっそっか!そういうことになるんですね?!」

その様子に太陽がいらいらとため息をつき、言葉を飲み込む一方で斉くんがあっはっは!と高らかに笑った。

「君は面白いから、スペック低くても合格!…でも花園は苦手なんだよね僕。うじうじしてて面白くないんだもん。」

「斉くん…。」

「まぁまぁ。そのうち仲良くなれるさ!ボクは彼の素顔に期待しているんだ!」

「素顔って、本領ってことですよね先輩?容姿じゃないですよね?」

「どうかな?」

きらん!と流し目を決めた桜井先輩が真面目な顔になる。

「太陽くん。」

「はい。」

「ボクたち3年は8月で引退なんだ。会計は秋斗くんの転校があってまだボクも手伝うつもりだけど、メインの仕事は9月から2年の白猫ちゃんの方に行くだろう。分かっているとは思うけど会計は結構大変だよ。生徒会の仕事はこんな個別なものに限られない。それに加えて白猫ちゃんは副会長だ。他にも山ほど仕事がある。キミの個人プレーがいかにすごくても1人では捌ききれない量があるんだ。そんな時に仲間内でけなしあって何か生産性はあると思うかい?」

「…それは…。」

「キミの大好きな白猫ちゃんの重荷が増えるだけだよ。だったら、もう少し同僚には優しくしてあげてもいいんじゃないかな?太陽くん。」

「……はい。すみません。」

それから桜井先輩は祥子ちゃんの方に向く。

「さてと。わんこちゃんはこの生徒会に所属するには少し能率が悪い。自覚はあるね?」

「はい…。」

「だからその分徹底的に覚えて早くしていこうじゃないか。」

「はい!」

「脳みそではなくて体で覚えるんだよ。」

「はい!」

「何度も繰り返すうちに好きになるはずだよ!好きこそものの上手なれ、さ!」

「あたし数学苦手なんであんまりそういうことは思わないかもですが…。」

「大丈夫!なんなら夜通し指導しようか?そう、それもお仕置き付きで…!いわゆる夜の指導というやつさ!」

それを聞いた太陽が顔を顰めてぼそっと言う。

「夢城先輩に密告しますよ。ここで卑猥なことを言うのはやめてください。」

「おっかしいなぁ。お仕置きの方法なんていくらでもあるだろう?それなのにそっちの方向に発想がいくなんて。そっか、太陽くんは欲求不満なんだね!いいよ、このボクがいつでも君にお付き合いをがふぅ!」

太陽が桜井先輩の顔左側面から書類の山を容赦なく叩き付け、先輩が垂れてきた鼻血を押さえている。

「本当に力いっぱい殴ったのね…太陽、あんたちょっとは手加減ってもんを…。」

「秋斗にぃに桜井先輩の後輩になった、って言ったら、『自分の身は自分で守れよ太陽。本気でやっていい。俺が許可する。』ってメール来たから。」

秋斗!!!早速ダメなこと教えてる!

…あれ?秋斗って太陽とは連絡取ってるってこと?

「あぁ愛する秋斗くん、君は太陽くんを通してその熱烈な愛をボクに届けているのか…!その穢れなきチェリーふがふが」

「鼻をあと1センチ縮められたくなかったら黙ってくださいね先輩。例え先輩と雖も秋斗にぃの侮辱は許しません。」

太陽が桜井先輩の「鼻の両穴」に脱脂綿を突っ込んだせいで途中から息が吸えなくなった先輩が喉を押さえて呻いている。

「…桜井先輩ってすごいですねー…。」

「いやぁ!先輩、僕、先輩のこと好きですよ!あっはははは!面白すぎ!太陽くんに行くなんて勇気あるというか無謀というか…!キャラの変わり方ナイスです!」

それを見ていた天夢の二人は一方は唖然とし、もう一方はお腹を押さえて爆笑している。私はといえば、一連の会話についていけずきょとんとする純粋そうな祥子ちゃんの頭に手を置いて、「気づかなくていいからね。」と呟いていた。


※ 7月17日追記:137話に高校2年生編 人物紹介と容姿紹介を掲載しました。よろしければどうぞ。

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