生徒会役員選挙の責任を取ろう
次の日。
「未羽!!あんた一体どこから覗いてんのよ?!というか絶対私に盗聴機しかけてるでしょう!」
「えーなんの話?」
耳をほじって、小指にふっと息を吹く未羽。あんた、完全におっさんだよ!
「昨日の、帰りの、聞いてたんでしょう?」
「『俺、今相田すごい可愛いと思うけど?』」
!っこの!!声音まで真似するなっ!
私は未羽をぎりぎりと締め上げる。
「痛い痛い〜」
「盗聴機の在り処を吐きなさい。今すぐ!」
「そんな殺気立たないでよ。監視カメラは仕掛けてないわよ。」
「盗聴機はあるってことでしょうが!」
「いいのかなー?そういうこと言って。」
「な、何よ。私は疚しいこと何もしてないわよ?!」
「へぇ。これまでの雪の家での行動とか、ぜぇーんぶばらされても?行動・習慣、全て?」
「う。」
そこまで言われると自信がない…決して疚しいことや危ないことはしてないはずなのに…!
「ここで取引しましょう、相田雪。私が欲しいのはあくまでも攻略対象者たちの現世生ボイス。もしこれからも盗聴を認めるなら、家での行動の時は聞かないであげる。ちゃんと私が作り出した専用の妨害電波機を貸してあげる。もしこの条件が飲めないのなら…。」
盗聴機認めた!あと、これ犯罪だよ!間違いなく!
ぐあああああ!と怪獣映画の悪役ばりの悲鳴と共に私はその条件を飲んだ。
この女、本当に恐ろしい…!このゲームの中で一番恐ろしい!
「その技術を試験に生かしなさいよ!」
「なんの話?そういえば、そろそろ結果出るはずよね?生徒会役員の。」
「ああ。」
忘れていた。あれだけの演説をしたのだから私はないはず。その後にあった諸々のことでいっぱいになっていた。
「ゆき!結果見に行こう?」
秋斗とこめちゃんが寄ってくる。
「うん。こめちゃん、足どう?」
「平気だったよ、軽い捻挫だったもん。心配かけてごめんね。」
「なら良かったよ。」
会話しながら掲示板まで行く。
人の集まったそこには1枚の紙が。
生徒会新役員 結果
上林冬馬
増井米子
相田雪
新田秋斗
海月俊
以上5名を次期生徒会役員として認める。
はぁぁぁぁぁ?!
「やったぁ!雪ちゃんやったよ!」
こめちゃんが喜んで飛び上がる。それは、いい。
「先生っ!」
そこにいた四季先生の肩を背伸びして掴みがくがく揺さぶる。
「な、なんですか相田さん。」
「これ、どうなってるんです?先生、票数え間違えたでしょ?」
「それはないですよ。」
「「「海月先輩!」」」「兄さん!」
「これは厳正に取り行った選挙の結果ですよ。投票数もちゃんと揃ってますから。増井さん、足は大丈夫ですか?」
「あ、先輩。昨日はありがとうございました。その、ただの捻挫でしたから。」
「ただの、なんて言わなくていいですよ。痛かったのでしょう?」
なんか分からんが甘い空気が漂い始める。
あ、俊くんの魂が抜けた。
秋斗と上林くんまでもがそれに気圧されて後ろに下がっている。
私はそれどころではない。
なぁ―――――んでえええぇ?!
あんな演説したのに!
未羽が隣にやってきて、ぽん、と肩を叩いた。
「だから、無駄な努力だって。ちなみにさ、私の情報網だと意外にも雪姐さんのファンクラブが出来たとか出来なかったとか。」
なんじゃそりゃあ!!!ゲーム補正ってか!
「あとね。」
声をひそめる未羽。
「本当は生徒会に入るはずだった夢城愛佳が落ちてる。」
「そら見れば分かるさ。」
「あの様子、見てよ。明らかに先輩のとこ空気違うじゃん。このままだと一番危ないのは誰でしょう?」
「!こめちゃん!」
「そゆこと。ま、先輩が守るとは思うけど、こめちゃんも鈍いからね。そんなこめちゃんを守れるのは?」
くうううぅ〜。
「やってやるさ、やってやるともさ!!こめちゃんを巻き込んだ責任は取るよ!!」
だが本格的に巻き込んだのは、未羽、あんたでしょう!!!
「相田、クラス委員共々よろしくな。」
ぽん、と肩に手を置く上林くん。
「ゆきに触るな!」
がるるるると唸って上林くんの手を払う秋斗。
にやにやする未羽。
ああ、平穏な生活よ。誰か代わりにやってください。
生徒会役員選挙編、これにて終了です