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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校2年生編・1学期~夏休み】
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自分のことでも蚊帳の外。(茶道部合宿編その7)

「最近の親ってすごいんだな。仲良く、の意味がまさかあっちだったとは思わなかった。」

子供たちがきゃあきゃあ騒ぎながら帰った後も冬馬はくすくす笑っている。

私は真っ赤なままだ。

「と、冬馬もこないだまで顔を赤くしてたのに!」

「前も言っただろ?俺、ポーカーフェイスできるからって。ほら。」

冬馬は私の手を掴むと、去年したのと同じように、シャツの胸元のあたりに私の手を当てさせる。確かにその鼓動はあの時と同じで普段より少し速い気がする。

「いつもよりちょっと速い、かな?」

「雪の返事はあの時と違うね。あの時はこれだけで顔を赤くしてたのに。」

「もう赤いもん!」

「比べられる『いつも』ができたしな?」

「うううっ。そ、それはそう…だね。」

5月以来、人前ではしないけれど、それでも冬馬に抱きしめられることが増えた。その時も彼が少しドキドキしているとしたら、それよりも速いんだから結構ドキドキしてるってこと?だったら少し顔に出してもいいんじゃないかな!?

私を一度柔らかく抱きしめてから、冬馬は話し始めた。

「雪に連絡する前日の夜くらいかな。湾内に呼び出されたんだ。『相田先輩のことで先輩に確認したいことがあります』ってさ。」

「確認したいこと?」

「そう。『今からお話することを聞いても、先輩のお心が変わらないか確認していただけませんか?』ってな。」

「それで?」

「さっき雪から聞いたことのもっとざっくりしたやつを聞いたよ。あと、ところどころ違ってた。俺が首を傾げたら、湾内は『夢城先輩の言う通りなのか…』って呟いてたよ。」

彼女は、冬馬という最大の「被害者」に直接訊くことで彼女の中で膨らむ「私が悪者ではない」という疑惑を確たるものにしたかったのかもしれない。冬馬への訊き方がストレートなところも、彼女の生真面目なところを表している気がする。

「全部聞き終わって『それで、お答えは?』って訊いてきた。」

「冬馬は…なんて答えたの?」

冬馬はくすっと笑って答えてくれる。

「『だから何?』って返した。」

「だから何、って…それは湾内さん、驚いたでしょう?」

「驚いてたな。『初耳なんですよね?』って訊き直された。でもさっき雪に言った通りだよ。『確かに今君が話した話に近いことが去年あったし、俺の過去についても近いと思う。でも君の話の中に出てきた先輩や新田の人柄は違うし、何より雪はそんな子じゃない。それからそもそもその話を信じる信じないは置いといて、俺が雪を想う気持ちは変わらない。』って返した。」

こうやって言ってくれる冬馬が好きだな、と実感する。

何度伝えたって足りないくらいだ。

どれだけ好きかをどうやって伝えていいかも分からなくて、繋いだ手に少しだけ力を籠めると、冬馬は私の内心が分かったかのようににこっと笑って私の頭を撫でてくれてから続ける。

「湾内から雪に伝言があるんだ。」

「伝言?」

「あの時はその深刻さが分からなかったんだけど、今は分かる。だから本当は伝えたくない。でも、一応伝言だからな。そのまま伝える。…『相田雪先輩。今まですみませんでした。あたしが誤解していたようです。あたし、湾内祥子はあなたへの発言を撤回し、深くお詫びします。今は伝言という形になりすみません。またお詫びにあがります。そのうえでお願いしたいことがあります。上林先輩からあたしがこういう話をしたことをお聞きになった後でも、このあたしでも助けてくれるというお心になりましたら、教えてください。よろしくお願いします。』だそうだ。」

一言一句違えずこれだけの文章を覚えている冬馬の記憶力に驚いた。あと冬馬の口から伝言の形とはいえ「あたし」という単語が出たことに地味に破壊力があったというどうでもいいことはひとまずおいておく。

一体どういうことだろう。この話をした上で私に助けを求めているとするなら99%ゲームに関連することだ。それも第3弾に。

彼女は私に第3弾の知識があると思っているのかもしれない。そうだとすれば私は何の助けをすることも出来ない。こういうのは未羽が専門なの(プロフェッショナル)だが、彼女も第3弾は全クリしているわけじゃない。湾内さんのアテは外れたことになる。

「雪。」

「あ、ごめん、冬馬。考え込んじゃった。」

「だろうね。雪って勉強しているときもそうだけど没頭すると周りの状況忘れるだろ。」

「あ、はははは。ごめんね。今の話は考えとく。それより私も冬馬に訊きたいことがあるの。」

「何?」

「冬馬、この世界がゲームを元にしているとか、自分がゲームのキャラに似ているというか同じというか…そういう話を聞いて、思うことはいっぱいあるって言ってたよね。何を思うの?」

黙って言葉を整理しているようなのでこちらも待つ。この猛暑で汗をかいた顔を拭いてから手で弄んでいたハンカチを丁寧に折りたたんでいるけれど、何かを考え込む表情なので単に手慰みにしているようだ。

それにしても、持っているのがこれまたブランドものの趣味のいいハンカチだったり、男の子なのにシャツで拭ったりとかがないところがお坊ちゃまだよなぁ。こう、あからさまにじゃなくて、さりげない所作にお上品さを感じさせるのは小さい頃からきちんとしつけられたからなんだろうな。

よし、私も気を付けるようにしよう。別に行動ががさつなわけではないはずだから気を付ければなんとかなると信じたい。こういうものは一朝一夕に身に付くものじゃないとかそういうことは言ってはいけないのだよ。これ以上冬馬にお上品さで負けると女が廃るんです。お里は知れているのでいいのですが。

そんな私の内心は知らない冬馬はしばらくしてから口を開いた。

「…それこそ、雪が心配していたようなことも思った。もしそのゲームっていうのが元になっているという想定が正しいとしたら、俺の人生って何なんだ。俺のこれまでの何もかもが誰かに作られたものなのか。あんなに母さんが苦しくて辛い体験をしたのも、俺の人格形成の一端を担わせるためなのか?ってな。それなら俺は、ゲームっていうこの世界を許さない。」

「冬馬。」

私の心配を見て取ったのか、冬馬がくすっと笑った。

「でもさ、結局元のゲームそのままじゃないんだろ?俺の雪に対する気持ちは間違いないって思えるし、増井や野口みたいにゲームが本来わざと作ろうとしていなかった人たちがこんなにもいいやつらばかりだし、先輩方も全く違うし、ここは現実だって思えるよ。それにな。」

冬馬が言葉を切ったのでその顔を見上げて、凍り付いた。

「あの男がしてきたことを、ただのゲームだ?設定だ?そんなもので済ませられると思ったら大間違いだ。あの男には、母さんを蔑ろにしてきたことを後悔させてやる。俺が、絶対。」

それを言った冬馬は夏なのに凍えるほど冷たい目をしている。

そこにいたのは、今まで私が見ていたどの冬馬でもない冬馬だった。

少し斜に構えたところのある人当たりのいい優等生でもなければ、頑固でまっすぐで少し腹黒い男の子でもない、今まで見たことのない目をした冬馬がいる。復讐に燃えている人間の目。これが、沙織さんが話していたあの冬馬なのか。

「まさか…冬馬が頑張ってきたのって。」

「小さいころは母さんを喜ばせるためだけに努力してた。俺自身の意思であの男に復讐しようと思ったのは、小学校高学年くらいからだったかな。…この話は今はいいよ。」

「冬馬。ちゃんと話して。その感情を押し込めるのは多分冬馬にとってよくない。」

冬馬の目をまっすぐに見つめて言えば、冬馬がふっとその顔をいつもの優しい彼氏の顔に戻す。

「大丈夫。俺、雪が彼女になってくれてから自分でも分かるくらい変わったから。雪がいてくれることがどれだけ俺にとって救いになっているか、雪は気づいてないんだろうな。…この話は、また今度。話せば長くなるし、こんなに暑いところで長々話す話でもないから。」

「ちゃんと、話してね?」

「約束は守るよ。」

この人の痛みを、私もちゃんと分かりたい。共有できなくても、知ることはできるはずだ。

「それよりも、俺の方もやらなきゃいけないことがあるんだ。雪、さっきの話だと、去年雪が寺から落ちそうになったり、監禁されたり、不審者に襲われたりしたのはイベントってやつのせいなんだよな?」

「うん、そう。この世界ではゲームの想定したイベントがより過激化するみたいなんだ。」

「それでそれが今年も始まってると?あの左手の怪我もそうなの?」

「あれは私…というか。湾内さんに起こりそうになったのを阻止しただけ。本来ならあれは今回(第三弾)の悪役の葉月との乱闘が起こるだけだったはずなの。それがあんなに危ない物が…。」

「なるほど。雪は自分に関わらないのに自ら足を突っ込んだ、と。」

「うっ。…で、でも!怪我するのを分かっていて放置は出来ないもの!」

私の様子を見て、冬馬がはぁ、とため息をつく。

「だろうな。雪、なんだかんだ放っておけないんだよな…。なら俺にも考えがある。雪、横田はゲームをプレイしたことのある転生者だって言ったよな?」

「そうだよ。」

「横田をここに呼び出せる?」

「うん、大丈夫だと思う。」

冬馬だって未羽の連絡先くらい知っているけれど、あえて私に呼ばせている。きっと私の方が話が通りやすいからだ。その未羽は私が今日、冬馬と話すことを知っている。だから電話をすれば来てくれるはずだ。

その予想通りコール1回で繋がった。

「未羽?今、中央公園の北側にいるんだけど、これから来られる?」

『オッケー。すぐ行く。』



未羽は言葉通りすぐにやってきた。

私と冬馬を見てその雰囲気から察したらしい。

「雪、ちゃんと話せたのね。」

「ありがと、未羽。心配かけてごめん。」

「いーのよー。それで?上林くん。私にご用?」

未羽が冬馬の前に立つと、冬馬も立ち上がる。そしてその上背のある状態から未羽を見下ろした。

「雪から聞いて色々納得いったよ。雪と横田がよく一緒にいて二人だけで話してたこと、それから去年よく雪が授業中に誰かとラインしてたこと、横田が天夢編入中のことや初対面のはずの人物をよく知ってること、それから雪のことをかなり把握してたこと。全て線で繋がった。」

「そりゃあよかった。」

言葉少なの未羽はどうやら盗聴機のことを言うつもりはないらしい。

「でー?上林くんは私にお怒り?それはヤキモチ?」

「いや。雪は横田だけに許してる部分があるし、それは俺や新田とはまた違う繋がりだろ。それに妬いてても仕方がないからな。」

「あらぁそれは意外なお答え!」

未羽はチェシャ猫のように笑った。

ねぇ、なんでそんなに怖い目で未羽を見ているの、冬馬。

「単刀直入に訊く。横田、君の目的はなんだ?」

冬馬が未羽を見るその目には私に向ける優しさや甘さが全くない。

でも未羽は怯まずにさっさと答えた。

「私のこの世界での生きがいは、乙女ゲーム攻略対象者様の観察。そして目的は、この世界で私の一番大事な親友がトラブルに巻き込まれて危険な目に遭うことを防止すること。」

「なるほどね。横田は去年、俺や新田が雪相手に苦戦していたのを見て楽しんでいたわけか。」

「冬馬!そんな言い方!未羽は」

冬馬にしては攻撃的な言い方から未羽を庇おうとしたのに未羽は私を遮った。

「そうよ?気分悪いでしょうね?でもあなたたち転生者じゃない人には分からないでしょうよ。早くから転生に気づいて、自分の生活が『ゲームの設定』と同じことに気づいたときの絶望が。ゲームと同じ両親がゲームと同じ言葉で私に君恋高校の話を出すことを聞く虚しさが。自分が死んだ時の気持ちや生前の痛みを覚えていることの辛さが。大事な人たちをあっという間に失う苦しみが。二度と会えないという寂しさが。」

未羽だって私と同じだったんだ。

未羽は去年から強かった。でもだからと言って未羽が同じ苦しみを持っていなかったというわけじゃない。

「…転生だと気づいてから、私はこの世界で大切な人は作らないと決めたわ。だから家族とさえ、そこそこの距離を保った。幸い中学までは予定通り終えたわ。君恋に入ることが決まってから私はあなたを始め、攻略対象者が主人公の夢城愛佳と絡んでいくのを観察していこうと思ったわ。私はあのゲームが前世で大好きだったからね。それを陰で楽しんで一人で生きようと思っていたの。そしたらね、入学式初日からどんでん返しをしてくれる女子がいるじゃないの。それが悪役の相田雪だと分かったとき、この子は転生者なんじゃないかって可能性が浮かんだわ。でもその転生者がどういう意図を持っているか分からないから1か月間観察した。それでもどうも様子がおかしいから訊いたら、全く乙女ゲームをプレイしたこともない、ゲームに巻き込まれたことだけに気づいた転生者だったじゃないの。だったら私の生活を邪魔されないようにしようと思ったし、だからこそ雪と共闘宣言をした。…だけどね。この子がさ、その後もゲームを乱しまくったのよ。本来予定されていなかった方向にどんどん持っていく。びっくりしたわ。生まれてからすぐに転生に気づいて準備してきたわけでもない子が、決して覆せないと思ったゲーム設定を覆していくことに。そうやっていくうちにこの子はここが『現実』だと気づかせてくれたのよ。一緒にいればこの子が私と同じ悩みを持っていることぐらい分かったわ。それがいかに辛いか、分かっているはずなのにこの子はなぜか特攻していくのよ。自分の痛みの方向を避けようとしているように見えて、避けてなかった。大切な人をたくさん周りに作っていった。…いつの頃だったかしらね。そんなこの子に魅了されている自分に気づいたのは。ゲームという理に負けないで奮闘しようとするこの子に、私は心奪われたの。だからね、今の私は自分の意思でこの子を守ろうと思っているの。この子のため、というよりも私のために。」

未羽の思っていることを聞いたのは初めてだ。

未羽は決して自分の思っていることを語ってくれなかったから。そしてそれは暗黙の了解として訊いてはいけないものだったから。

冬馬はそれ(未羽の回答)を聞いて、ようやくふっと笑った。

「利害は一致したな。俺としては、雪を守る砦がいくつもあった方が助かる。」

「信用してもらえたみたいでなにより。」

「横田って成績はよくないけど、頭いいよな。」

「頭脳明晰と名高い上林くんに言われたらこそばゆいわね。」

「未羽は勉強の方向に力を注いでいないだけ。多分私よりハイスペックだよ。」

読唇術は使えるし、記憶力はずば抜けているし、盗聴機や監視カメラの作成もお手の物だし、スリまがいのこともできるし、観察力もある。私などよりよっぽどハイスペックな女なんだ。これは冬馬には言えないけど。

「なんでわざわざ冬馬に話したの?今まで私にだって話そうとしなかったのに。」

「どこの世界に友達本人にここまで熱烈な愛の告白をしようとするバカがいるのよ。」

「あ。それもそうか。」

今のが愛の告白というのは冗談にしても、確かに熱烈な想いであるのは間違ってないな。だとすれば恥ずかしくて(本人)になんか言えたもんじゃない。

未羽はふは、と欠伸をしてから私の持っていた缶を取り上げて勝手に飲み干すと、「ぬるい」と文句をつける。

相変わらずの傍若無人ぷりだが、彼女の行動はいつも私への思いやりに溢れている。

矛盾しているようで矛盾していない友達。

「それに、上林くんは私のことを信用してなかったからね。上林くんが本当に無防備な自分を晒すのは、多分あんただけでしょうよ。」

「横田はよく見てるな。…俺が見ている中で一番、どんなやつよりも人への評価がシビアでドライなのは君だよ。同じくらい他人に固執していない。そんな君が唯一身を挺するくらいこだわっているのは雪だろ?君がそこまで雪に入れ込む理由が知りたかった。人間は私利私欲以外で動かないからな。雪が君にどれだけメリットを与えているのか、君が雪を不可欠と思っているのか知りたかった。」

「ふふん。お眼鏡にかなったってことかしら。」

「そうだな。横田が精神的にかなりの部分で雪に依存しているってことくらいは分かった。」

その冬馬の言葉に「はぁ、めんどい人に。」と言って未羽が空き缶をゴミ箱に放る。

「あ、外れた。……ま、いっ」

「よくないわ!放るなら百発百中で入れるかダメなら拾いに行くくらいの根性見せなさいよ!もう!」

私が走ってそれを拾いに行くと、未羽が後ろで笑っている。

「雪の『投げるな』って言わないとこ、気に入ってるのよね。あの姿とか癒しでしょ?」

「分からないではないかな。…横田、君が知っている攻略対象者?とやらの情報とそれからこれから起こるイベントについて教えてくれ。」

「上林くんも補正の協力者になるってことで理解するわよ?」

「個人的に『補正』はどうでもいいけど、雪が怪我するのは困る。」

「じゃあ私とほぼ目的は同じね。私、第3弾は生徒会合宿までしかやれてないし、太陽くんルートだから、三枝五月と神無月弥生は知らないわよ。」

「知っている範囲で構わない。」

空き缶を捨てている間に二人で勝手に分かりあっている。

なんだかこの二人はとても似ている気がするのだけど気のせいか?

気のせいじゃないよね、腹黒いし、何考えているのか悟らせないようにするのが上手いし、タッグを組んだらこれ以上なく相性のよさそうな…。

「あ、雪はもう帰って?」

「え?」

未羽がしっしっ、と手を払う。その邪魔な犬を追い払う動作に憮然とするのに、冬馬までもがそれに同意する。

「横田が雪にわざわざ伝えてない情報もあるんだろ。ってことは、雪は知らない方がいいってこと。俺、送るから。」

なにそれ、自分のことなのに私はまさかの蚊帳の外?

「え、嫌だよ。私も知りたい!」

「だめ、これ以上は遅くなるし。送る。」「だーめ!あんたにはあんたへの情報をあげるから。」

「むぅ。二人とも息がぴったり。」

「雪ぃ、嫉妬?大丈夫よー?私、あんたに全部の情報伝えてないのと同じで、上林くんに全てを伝えるつもりはないから。」

「浮気はしない。そういう意味では全く横田に興味はないよ。」

「浮気の心配なんかしてないよ。そうじゃなくて冬馬に未羽を取られるんじゃないかって…。」

「え?!嫉妬されてるのは俺?取り合う対象は横田になってる?」

「だって二人、似てるんだもん。意気投合したら未羽が私よりも冬馬のとこに行きそう…。」

しょんぼりすると、未羽がにやぁと笑って私の首回りに両腕をかけてしなだれかかってくる。

「なぁに?寂しいの?今からでも、私を彼女にしちゃう?」

「そーゆー関係は望んでませんっ!ていうか、私が男なのね?!」

「ふふふふふ。だいじょーぶよぉ?それこそ、上林くんは真の共闘相手。雪に関してのこと以外で心を許したわけじゃないからね!上林くん、事務的な相手だったらベストだけど、個人的に話すにはつまらない。からかう相手は可愛くないとねぇ!」

「ちょっと!私で遊んでるってこと!?私そんなに面白くないよ!むしろツッコミ担当なのに!」

「最近雪がボケる機会がわりかし多いのに気づいてる?」

「…!否定できない…!」

冬馬は私と未羽がじゃれているのを呆然と見た後、つぶやいた。

「…横田が男だったら、新田と並ぶか、それ以上に危険なライバルだった気がするな…。」

冬馬くん、大事なこと失念してますよ。

未羽が男だったらそもそもここまでじゃれてませんから。


茶道部合宿編はこれにておしまいです、ありがとうございました。7月7日の活動報告に七夕小話いつもよりずっとしょーとしょーとを掲載したのでよろしければどうぞ。

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