生徒会役員選挙に出馬しよう
生徒会役員選挙編スタートです
色々あった体育祭も終わり、日常が帰ってきた。梅雨でじめじめする毎日だ。
夢城さんは相変わらず攻略対象者たちに絡みに行っている。東堂先輩は知らないが、少なくとも秋斗や上林くんに関してはあまりうまくいっていないようで、こちらに鋭い視線が来ることが増えた。
そんな顔したらせっかくの美少女が台無しなんじゃないのかな……。
私の日常は、勉強して、部活行って、クラス委員の仕事こなして、のルーティーン。いいんです。ルーティーン万歳。
女の子たちからのやっかみは依然としてあるけど、秋斗と私の関係が姉弟のようなものだと気付いたクラスメートたちが少しずつ話してくれるようになったのは小さな幸せ。
席が近いことと、部活が一緒のことで未羽と話すことが多くても不自然さがなくなったのもいい。相変わらず腐ったラインは来るけども。
「雪ちゃんは日替わり定食ー?」
甘い女の子らしい声をかけてきてくれたこの子は増井米子。「まいこ」と読むのだが「こめ」と呼んだ方が可愛いよねということで、こめちゃんと呼ばれている。茶道部でできた同じクラスの友達であり、今はこの子と未羽とご飯を食べることが多い。ちなみに、私にべったりだけど、友人関係もうまくやってる秋斗は昼を友達と食べるらしく昼食時には私に絡まない。
「もう6月も終わりだね」
「そ。そして今日は生徒会役員候補のマニフェスト演説日」
ぶっ。
口に入れていた味噌汁が出ていきそうになった。
ごめんあそばせ。
「雪、汚い」
「思い出したくないことを思い出してしまった……」
私が遠い目をすると未羽が自分のカツ丼を食べながら言う。
「あー。生徒会長に誘われてるんだっけ?」
「ええ、雪ちゃん、生徒会に誘われてるのー?さすがー!」
「全然嬉しくないよ」
「え、どうしてー?生徒会って言ったらあのすごい人たちが集まるところって有名だよー?」
だから嫌だっていうのはこめちゃんには、分からないだろうなぁ。
「こめちゃんだって十分優秀じゃない」
こめちゃんは小テスト含め20番以内をキープしているし、顔も可愛い。ほんわりした小動物系美少女だ。ちょっと天然で、心根も素直なこの子が主人公だったら……と思わずにはいられない。
「この子が主人公だったらなぁ……」と小さく隣で未羽がぼやいているから、考えてることは一緒なんだろうな。
「で、二人ともどうすんの?この後のマニフェスト」
今日は生徒会の選挙日。候補者たちが抱負を述べてその場で全校生徒が投票。次の日に結果が出て5名の新生徒会員が選ばれる。
自己推薦枠や他己推薦枠の他に現生徒会からの推薦枠があり、この枠の人は選挙戦に強制参加させられる。つまり、辞退できない。今年の枠は私と上林くん。ゲームでは上林くんだけだったらしい。
なんてふざけたシステム!やる気ないやつにやらせてもしょうがないじゃん。
「ん?二人って?」
「え?雪とこめちゃん?」
こめちゃんがパンを手にしたまま完全に硬直してる。
「なんでこめちゃん?」
「私が他薦しちゃった。だって、こめちゃんだったら条件に合うし」
「し、知らなかった……どどどどうしよう、雪ちゃん!!」
「辞退も出来るよ?」
ただ、その場合には辞退した旨が全校生徒の前で発表されるという公開処刑付きだ。
「ううぅ、それは嫌だよう」
こめちゃんがうるうるしてる間に私は裏で未羽の胸ぐらを掴んでいた。
「何してくれてんのよあんた、こめちゃん困ってるじゃないの?!」
「えー雪だって思ってたんでしょう?こめちゃんが主人公だったらって。生徒会って攻略対象者が集まるとこだよ?新しい主人公登場の兆しあるじゃん」
今年の候補者は私と上林くんをいれて25人。その中には秋斗も夢城さんも入っている。秋斗は私と上林くんが二人だけで当選するのを防ぐためらしい。夢城さんは言わずもがな。
「た、確かに……」
「こめちゃんが主人公になったら雪は当然悪役から完全に降りられるし、私はうざい主人公見なくていいし、一石二鳥!!」
「そんな友達をスケープゴートにするような真似!」
「手段選んでる場合?」
この女怖い!!絶対夢城さんより怖い!!
「それに、ゲームについて知らない子だったらイケメンに囲まれて幸せな生活送れるだけだよ?」
うううっ。こめちゃん、ごめん!
「こめちゃん、私も手伝うよ」
「雪ちゃん―――!」
ああ、神様ごめんなさい。