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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編 小話まとめ(第三者視点話とif話)】
136/258

リクエストif話 秋斗×雪 6年分の想いをこめて

べた甘です。この話のためだけにR15つけました。苦手な方バックを!!

秋斗好きな方は飛び込んでください!

※設定上、秋斗の渡英期間は6年になっているので、本編と違います、ご注意を。

秋斗が転校した日から10年が経った。


「ただいまー。」

私が家に帰ると、キッチンからぴょこんと見慣れた金髪が出てくる。

「お帰りっ!ゆき!今日は白身魚のムニエルだよ!あとソースだけ!」

本当だ。ちょうど作ろうとしているのか、ホワイトソースっぽいいい香りが部屋に漂っている。

「いい匂い~。」

「もうすぐできるから早く手を洗っておいでよ。」

「うん、そうする!」

君恋高校卒業後、私は前世の母校の大学に入学、前世念願の試験に合格して資格を取り、大手の事務所で働いている。

秋斗も一流外資系商社で働いているのだが、外国で過ごした期間の長い彼はその有能さを発揮して時間内にきっちり仕事を終えてしっかり休みを取ろうとするタイプ。今日もその主義通りきちんと仕事を終えて私より先に帰ってきてから夕飯を作ってくれていたみたい。この若さでそれが許されている彼はどれだけ効率よく仕事を終えてきてるんだろう。

うがい手洗いを済ませスーツから部屋着に着替えてからリビングに戻ると秋斗が嬉しそうににこにこする。

「今日は早く帰ってこられたんだね!」

「早くって言っても10時だよ。秋斗、先にご飯食べててよかったのに。」

「それだとせっかく結婚したのにゆきとほとんどすれ違う生活になるでしょ?そんなの意味ないから。」

昔からいつもこう。結局私はいつも私の都合に彼を振り回してしまう。

「秋斗…。ごめんね。今日はなんとかもっと早く帰って来たかったんだけど…。それでもこの時間…。」

「いいんだよ。しょんぼりしないで。」

秋斗が苦笑している。

「それより、なんでそんなに早く帰ろうと思ったの?今日より早く帰れたことないのに。」

「忘れちゃった?今日は秋斗が転校したあの日からちょうど10年目なんだよ?」

「あー…そうだったね。」

秋斗は今思い出した、という様子を見せるけど、私は毎年その日を忘れられない。

「だからかな。なんか一分一秒でも早く秋斗に会いたかったの。…無性に恋しくて。」

私の大学卒業を見計らって帰ってきた秋斗と大学卒業後すぐに結婚して4年。もう慣れてもいい頃なのに、秋斗と同じ家で夫婦として一緒に暮らしているということにまだ慣れない。いくら小さい頃からお互いの家を行き来していたと言っても同居して毎日寝食を共にするのとはわけが違う。それに結婚してからもお互い仕事が忙しくて会えない日も少なくない。

「あ、だから今日はバレンタインデーでもあるんだよね。作ることはできなかったんだけど、デパ地下で今一番美味しいって評判のやつを無事に手に入れられたの!昼に買いに行ってなかったら絶対売り切れてた!すごいでしょ?私!取ってくるからちょっと待っ」

そんなこと話しながらチョコを取りに寝室に戻ろうとUターンしたところで後ろから秋斗に捕まった。

「…秋斗?どうしたの?」

その抱きしめてくれる腕は、一度いなくなってまた戻ってきたもの。

私を包み込んでくれる優しさは今も昔も変わらない。

秋斗は私の体を自分の方に向かせるとちゅっと軽いキスを落としてきた。

「ちょっと、秋斗っ。」

秋斗は、ちょっとしたことですぐキスをする。昔からスキンシップは好きだったけど、離れていた間に余計甘えん坊になっている気がする。

外国に行って離れている間に少し大人っぽく変わってくるかなと思ったけど、どうやらここは変わらなかったようだ。むしろ悪化している。

「ゆきがあんまり可愛いこと言うからいけないんだよ。」

そう言って今度は深く口付けてくる。

「んっんん!…ん。あ、秋斗。ご飯…!火!」

至近距離で口を離してから、もう止めてる、と囁いてくる。

「やめていいの?」

そして意地悪く笑うと小悪魔のように小首を傾げる。

そんな仕草が似合う大人の男ってどうなの!?

「…やだ。やめないで。」

自分から伸び上ってキスを返すと、ああああーっと秋斗が悶え始めた。

「もう!ゆきのせいで俺、止まんないかも。とりあえずご飯後ね。」

「え、ちょ、ちょっと!!秋斗!」

軽々とお姫様抱っこをされ、寝室まで運ばれる。

「え、ちょっ!…んんんっんー!」

ベッドにぽん、と軽々と運ばれてそれから再度キスを落としてくる。

「ゆき、嫌?」

「い、嫌じゃないけど…。」

「俺、ゆきと離れてた期間、すっげー寂しくて、でもゆき以外の人なんて全然考えられなかった。離れているのにゆきが好きって気持ちはどんどん強くなるんだから。だからこうやって今ゆきに触れられるのが幸せでたまらない。」

私を見下ろすエメラルドの瞳が切なげに揺れた。

「秋斗…。」

「ゆき、俺のプロポーズ受ける時に言ったよね?あの時の分も俺が甘えるのを許すって。」

「そ、それはそうだけど。」

「俺、ゆきの全てを手に入れるまで満足出来ないと思ってた。でもさ、手に入れても満足出来ないんだ。ゆきが俺だけのこと考えてくれないと。」

「か、考えてるよ!私っ、秋斗のことが大好きで…!それ以外の人のこと、そういう風になんか考えてないもん。」

「ゆきの職場は男の人がいっぱいでしょ?」

「でも!全然そんな風には見られないよ!…秋斗ほど、想うと胸がドキドキして、大事にしたくて、好きな人いないよ!」

私の言葉に秋斗が蕩けるような笑顔を向ける。

昔から私だけに向けてくれていた笑顔はいつまで経っても変わらない。

綺麗で、魅力的で、私の心を絡み取って放さない。

こんな笑顔を見せられたらどんな女の子だって一発で恋に落ちてしまう、そんな顔。

昔は当たり前だと思っていたその笑顔が当たり前じゃないと気づいたのは、彼が傍にいなくなってから。そして今はその存在が逆に私を落ち着かなくさせる。

「あ、秋斗こそ!!」

「ん?何が?」

「…秋斗なんか、外資系の会社なんだから、いっぱい…その、魅力的な女性がいるでしょ?…既婚者でも秋斗を好きだと思う人は絶対いると思うし…私より綺麗で可愛くて若い人もたくさんいると思うけど……それでも、あ、秋斗は私を見てくれる…?」

秋斗は私を見て顔を綻ばせる。

「ゆき、嫉妬してる?」

いたずらっ子の笑みで、楽しそうに、からかうように訊かれる。

でも冗談でだって否定できない。

彼の傍に私以外の女性がいることを想像するのだって嫌だ。

だって昔から彼は私だけのもの。

「…し、してるっ!秋斗、小さい頃からずっと女の子に人気あるし、惹かれる人はいっぱいいるもん。会社なんてどんどん若い子が入ってくるんだよ?それに引き換え私は年とっていくし…それに仕事忙しくてなかなかこうやって早く帰ってくることもできない…。わ、私なんか飽きられて霞んじゃうんじゃないかっていつも不安なんだよ…?」

考えれば考えるほど不安は募る。

一度離れてしまったから。

また彼が離れて行ってしまうんじゃないかって。

私がこんなに真剣に悩んでいるのに、秋斗は嬉しくて仕方がないという表情でこちらを見て来るだけだ。

「あ…秋斗。」

「なーに?」

「私のこと、いつまでも好きでいてくれる?もう、どこにも行かない?」

下から必死で見つめると、秋斗が私のことを抱く腕に力を込めた。

「あ――――も―――!ダメ!!」

「え?!何が?!」

「ゆきが可愛すぎて!!我慢できない!」

「ちょっと!秋斗っ!!」




秋斗の満足するまで体を合わせてから、ようやく私は解放された。

ベッドで向かい合わせになって、満足そうな顔で私の頭を撫でる秋斗の胸に顔を擦り付けて自分から秋斗の方に寄る。

温かい体がそこにあることが幸せ。

「ゆき、どうしたの?」

「秋斗の匂いだなぁって。昔から、好き。男の子って汗臭かったりするイメージなのにどうして秋斗は違うのかなぁ?昔からいい匂い〜。」

「…ゆきって疲れると素直になるよね。」

「ん…?何か言った?」

「ううん、なんでも。ゆき、俺のこと好き?」

「うん。大好き。」

「それは恋愛って意味で?」

「それ以外に何が?大好きで、大好きで、もう二度と離れたくない。」

自分から秋斗にぎゅっと抱きつくがそれよりも強い力で秋斗が私を抱きしめてくる。

「それは俺のセリフ。二度と放さない。二度と俺の手元から逃さないから。」

「うん。放さないで。」

一番安心できるこの腕に私をずっと閉じ込めていて。

「…あ、ご飯。」

「俺はゆきで満腹。」

「もう!」

傍にいられなかった期間は6年。

秋斗の誕生日は6回祝えなかった。いや正確には、直接会ってお祝いすることはできなかった。

大学時代、秋斗の誕生日はちょうど夏休みだったけれど、早く試験に受かって就職するために日本で勉強していたから。

なんで愛しい彼氏に会いに行くことをしなかったかって?

お互いに目標を達成できたら結婚しようって約束をしていたから。

少しでも早く結婚したかった。

目に見える形で彼との繋がりが欲しかった。

そして彼もそれは同じで、だから会いに来なくていいと、むしろ、頑張って。と言ってくれた。

でももうこれからは、そんなことは決してない。

あなたの顔を見て、触れて、そしてあなたが生まれてきてくれたことに感謝するの。

「ゆき?」

「ん?」

「愛してる。これ以上ないってくらい。」

「私もだよ、秋斗。」






最近、体の調子がおかしい。

だるいし、眠い。もともと大嫌いだった粒あんのお菓子がなぜか食べたくなって駅前の和菓子屋さんで買ってしまった。

なんなの。仕事疲れ?

「ゆき、どうしたの?!粒あんのお菓子なんて!!高校時代いきなり嫌いになってたのに。」

「どうしてだろうね?この前小さい頃の話したからかな?それとも君恋の茶道部が懐かしくなったからかな?食べたくなっちゃったんだよね。」

そう言うと、秋斗はちょっとむぅと頬を膨らませた。

「最近食欲ないのにお菓子は食べたいの?俺、栄養にいいもん作ってるはずだし、小西先輩じゃないから毒物じゃないはずなんだけど、ゆき、ほとんど残すよね。」

秋斗の料理は間違いなく美味しい。仕事で行く高級レストランよりも上のレベルの時も多い。向こうに行って更に腕を磨いたんだろう。かの国はあまり外の食事が美味しくないから自分で作ることが多かったと言っていた。

「ごめんね。秋斗のご飯美味しいよ。でもここ最近ご飯はあんまり食べたくなくて…。風邪かなぁ…。明日病院行くことにする。」

「うん、そうして。氷枕とかいる?頭は痛い?熱は?」

「ないよ。ただ、だるくてすごく眠い。あとたまに気持ち悪いの。こないだいきなり職場で吐きそうになっちゃって困った。」

「大変じゃんか!それいつ!?」

「えー結構前。1週間…2週間くらい前かな?この慢性的な気分の悪さはなんなんだろうね…。秋斗のストーカーか誰かに呪われているのかな…。」

「冗談言ってる場合?慢性的な気分の悪さ、か……。他には何かある?」

血相を変えた秋斗がケータイで私の羅列する症状を打ち込んでいる。

「んー。下腹が気持ち悪いというか張っているというか…なんか違和感がある気が…。」

「……待って。ゆき、生理、来てる?」

いきなりなんで生理?男性が口に出すもんじゃないだろうに秋斗は昔からそういうデリカシーに欠いたこと言うよねぇ、全く。

あれ?でも夫だったらいいのかな。

「んー…?もともと周期が長いから…あれ?ここんとこ来てない、かなぁ。どのくらい来てないっけ。これは深刻な病気かなぁ…。まずいかも」

「ゆき!!」

秋斗がぎゅっと、でも確実に4割以上いつもより柔らかく私をかき抱く。

「何?!いきなりどうしたの?!」

「…明日、休み取れる?」

「う―――。今抱えてる案件を進めておきたい気も…。明日じゃないとだめ?」

「だめ。」

「う…分かったよう。でもなんで?」

「病院、行くから。俺も一緒に。」

「子供じゃないんだから一人で行けるよー。高2の時に40度近い熱あっても一人で行ったし!」

「それはさすがの精神力だったね…じゃなくて!!あーもう!ゆきはほんとに鈍いよねっ!そういうの!」

「ん?」

「行くのは、産婦人科!」

「産婦人科…?え、まさか?」

「こうしてはいられない!俺、ちょっと薬局行ってくる!まずは検査すればいいでしょ!」

ええええええ。




結果は陽性。

病院でも、あと少しで4か月です。とはっきり言われた。

お医者さんには

「新田さんは日ごろから不調を我慢する傾向にあるから気づかれなかったんだと思いますが、これからはそれは厳禁です。不調を感じたらすぐに病院に来てください。」

と言われてしまった。


病院帰りに秋斗と一緒に電車に乗って実家に行ってご報告。

「ようやく私もおばあちゃんになるのね〜雪と秋斗くんの子供なら、すっごく可愛いでしょうね――!今から楽しみだわっ!」

「ねーちゃんと秋斗にぃの子か。なんか遺伝子やばそう。ていうか、俺、おじさん?!」

「雪ちゃん、妊娠したって?!ようやく秋斗も父親ねぇ!よかったわねぇ!」

双方の両親と太陽は飛び上がって喜んだ。

でも、一番喜んだのはもちろん。

「ゆき、そこ段差。」

「うん、見えてるから。」

「ゆき、1キロ以上の物持っちゃダメ!」

「え、パソコン入った鞄もダメなの?!昨日までは5キロの物余裕で運んでたりしたからね?私のバック基本2キロはあるからね?」

「はい没収。」

「あ、ちょっと!!平気だってー。」

もらったばかりのマタニティーマークを付けた鞄すら取られてしまう。

過保護な夫に見守られてようやく帰宅し家のソファに座ると、秋斗は私のお腹に耳を当てて顔を擦り付ける。

「もー過保護なんだから。」

「あったりまえ。俺とゆきの子供だよ?俺、何があっても守る。」

「そんな大げさな。普通にしてれば普通に産まれるって。昔の人も言ったでしょ、案ずるより産むがやすし!」

「ゆきは注意しなさすぎだから俺がこれくらいでちょうどいいの。」

それからすぐ隣でぴったりと寄り添って座ると指を絡める。

意地っ張りで鈍い私のせいで秋斗が向こうに行く直前に気持ちが通い合ったからすぐに離れてしまった。だから結婚までの恋人期間に恋人らしいことはあまりできていない。その代り結婚してからもこんな風に未婚カップルがするように手をつなぐ。

「…俺、6年分の誕生日プレゼントより大事な物もらうんだね、ゆきから。」

「私が一方的にあげるわけじゃないよ?秋斗も一緒に、なんだから。」

「…そうだね。」

秋斗は私の肩を抱き、口付ける。

「…んっ。」

秋斗のキスは、優しくて、思いやりに溢れていた。

「これからも一生大事にする。ゆきも、ゆきと俺の子供も。」

「…うん。」

「だから」

そう言って秋斗が私のお腹に手を当てて撫でた。

「早く産まれて。俺のゆきをあんまり苦しめないでね。」

「…秋斗、どっちが大事なの?」

「どっちも。…けどやっぱゆき。」

「これは男の子だったら大変。」

「ふん。例え子供にだって負けないよ。ゆきはあげない。」

「大人気ないお父さんね。」

「俺以外のやつに渡すことはないから。二度と手放さないって言ったでしょ。」

「…うん。」



私と秋斗の家族はこれから増えようとしている。

秋斗と二人、大切に大切に育てていくから。

早く顔を見せてね。



おしまい


5月11日の活動報告に続編についてのお知らせを載せました。

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