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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編 小話まとめ(第三者視点話とif話)】
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バレンタイン特別小話 俊くん×雪のif話

2月14日掲載 バレンタインデーif小話 俊くん×雪 本編中と比較した甘さの度合いがやばかったと思います(当時)。


「雪さん、今日どうする?」

先生に任されたクラス委員の仕事中に俊くんが声をかけてきてくれる。

「んー。ちょっと寄り道したいかも。本屋に行きたい。問題集の補充を!」

「雪さんらしいね。」

にこにこする俊くん。

「あとどれくらいかかりそう?あんまり遅くなるとよくないし。」

「もうちょっと、だと思う…!これ書いたら多分行ける!」

俊くんが私の手元を覗き込んでから苦笑する。

「まだかかりそうだね、僕も手伝う。」

「ありがとう、俊くん。」



仕事を終えて二人で帰る。

なぜ俊くんと帰っているのか?

それは私がどの攻略対象者様でもなく俊くんと付き合っているからだ。

お目当ての問題集を購入してから帰る途中で、隣の俊くんの袖をちょっと引っ張る。

「どうしたの?雪さん。」

「夜ご飯食べていこうよ。」

「でも遅くなっちゃうよ?」

「いいの。もう少し一緒にいたい。」

俊くんはちょっと顔を赤くして、それからにっこり笑ってくれる。

「分かった。行こっか。」

ファミレスに入ってご飯を選ぶのだが、AセットのエビフライもBセットのパスタも魅力的で、つい時間がかかってしまう。

「うーん。」

「雪さん、どうしたの?」

「AセットのエビフライとBセットのパスタで悩んでるの。」

「じゃあ、僕がAを頼むよ。雪さんはBを頼めばどっちも食べられるよね?」

「じゃあそうする!ありがと!」

お料理が運ばれると、俊くんは自分のエビフライを1つ私の方に寄越してくれる。

「雪さん、どうぞ!」

俊くんはいつでもにこにこしていて、優しい。

私はパスタを食べていた手を止めて訊く。

「俊くんはパスタいらない?」

「じゃあちょっとだけ。」

そう言って少しお皿を寄せてくる俊くん。

甘いな、俊くん。

私はフォークをくるくる回してパスタを巻きつけると、そのまま持ち上げる。

「はい。」

「え?」

「俊くん、あーん。」

「ええええ。あのっ、雪さん!ここファミレスだから!周りの人見てるから!」

焦る俊くんが可愛くて、余計意地悪をしたくなる。

「えー俊くん、私と間接キスになるのは嫌?」

私が首をかしげると、俊くんは真っ赤になる。

「嫌とかそんな…。」

それから決心したように目をつぶって口を開ける俊くん。

そこにフォークを入れて、もぐもぐする俊くんを楽しそうに見る私。

俊くんはまだ顔を赤くしたままだけど、美味しいと返してくれた。



ご飯も食べ終わり、もう暗くなったので帰る時間。

でも今日は、渡さないといけない物がある。

「俊くん、ちょっと公園寄っていこう?」

「もう暗いし帰った方がいいんじゃないかな?」

俊くんとはこれからも毎日顔を合わせられる。クラスも部活も生徒会も一緒。席だってそんなに遠くない。でも、俊くんは恥ずかしがり屋だし、みんなの前では遠慮して手も繋いでくれないから、それがちょっとだけ寂しい。

「でも…。もう少し一緒にいさせて?」

自分から俊くんの手を握りおねだりしてみる。

俊くんは逡巡していたけど、「少しだけだよ?」と困ったような笑顔を見せて了承してくれた。


手を握ったまま一緒に歩いて散歩する。冬の夜の公園は静かで落ち着いているから好き。

この時期だったら寒いから人が少ないと思ったのに、結構カップルはいっぱいいる。

それは今日がバレンタインデーだからだ。

ちょっと渡すだけでいいのに、周りでこれだけいちゃつかれてしまうと、なかなか渡せない。

俊くんだって見えているはずだ。これを、奥手な俊くんはどう思っているんだろう。

周りを見ながら歩いていたので、段差で躓いてしまった。

「きゃっ!」

「危ない!」

前に飛び出た俊くんが抱きとめてくれたから助かった。

ふぅ。と俊くんがほっとしたように息をつく。それからようやく自分が私を抱きしめていることに気づいて、真っ赤になる。

「うわ、ごめん雪さん!そういうつもりじゃ…!」

「いいの。」

そのまま私は俊くんの背中に手を回してぎゅうっと抱きつく。

「ありがと、俊くん。」

俊くんは耳まで赤くなっていたけど、ようやく私の背中に手を回してきゅっと抱きしめてくれた。

それから、俊くんは腕を解き、自分から私の手を握って、「行こっか。」と先導してくれた。



しばらく公園の中を歩いて噴水の前のベンチまで来たので座る。

お互いに手を握ったまま、静かに噴水を眺める。話さないけど、でも隣に彼がいてくれることが安心できるし、幸せ。

「俊くん。」

「何?雪さん。」

「これ、作ってみたんだ。食べてくれる?」

用意していた包みを渡す。

「え。」

「バレンタインデーだもん。今日。」

俊くんはきょとん、としていたが、納得がいったのか、にこっと笑う。

「ありがとう、大事に食べるね。」

そう言って、包みを開けて取り出した1個を口に含む俊くん。

「美味しい」と言ってにこにこしている彼の方に寄ってそっと肩に頭を預けてみたら、俊くんが驚いたように少し身じろぎした。

俊くんにはこれぐらい積極的にしても拒絶されることはない。彼が自分から私に何か要求してきたりしたことはないけど、私が甘えることを全部優しく受け止めてくれる。穏やかで優しい俊くんらしい。

「…あの、雪さん。」

「なぁに?俊くん。」

「あの、その。」

俊くんの歯切れが悪い。

「どうしたの?」

肩から頭を上げて、俊くんの顔を覗き込むと、俊くんは私から目を逸らし、恥ずかしそうにしてから、ようやくその琥珀色の目をこちらに向けて、言う。

「あの、僕、雪さんにキスしても、いい、かな?」

「え?」

「いやあのっ。その。さっき、ファミレスで!か、間接キス…が嫌だったんじゃなくて…!むしろ僕が、お願いしたかったくらいで!」

「え?あーん、を?」

「そ、それもそうなんだけど。あの、公園にいる人たちみたいなの、見てて、雪さん普通にしてたから、言ってみても、いいかなって。あ、でも、嫌じゃなければ、で。」

珍しく慌てている俊くんに、くすくす笑う。

「嫌なんて、そんな。そんなことないよ。俊くんのこと好きだもん。もっと触れたいもん。」

俊くんの頰は既に赤いけど、琥珀色の瞳まで揺れるようにこちらを見る。

「僕も。なかなか言えなかったけど、雪さんに触れたい。」

「同じだね。」

私がにこっとすると、俊くんもにこっとする。そして。

「じゃあ、えっと。雪さん、目をつぶってくれる?」

私がくすっと笑ってから言われた通りに目を瞑ると、隣の彼が動く気配がした。少しだけこちらに体を寄せて、手は握ったまま、触れるような優しいキスをしてくる。

心の奥がドキドキして、熱くなる。

それから唇が離れていく感じ。

寂しい。嫌。もうちょっと。

私はパチリと目を開けて、俊くんのタイを手で掴んで顔を寄せる。

「え、えっと、雪さん?!んっ。」

自分からもう一度唇を重ねると、俊くんが動揺した気配がした。でも。

今度は俊くんが私の肩を掴んでそのままキスを深めてくる。

「んんっ。」

チョコの味のする、俊くんではないような、大胆で激しいキス。

とうとう息が苦しくなってドンドン、と俊くんの胸を叩くと、俊くんはすぐに身を離してくれた。

「あ、ごめん…。僕。」

ちょっと後悔したような顔。

「違うの!」

そのまま直ぐに彼のシャツを掴んで顔を埋める。

「…嬉しかったの。俊くんが私を求めてくれたのが。だから全然。後悔しないで。」

そんな私の背中を俊くんが優しく抱きしめてくれた。

「いいの?…ああいうのでも。」

ああいうの、というのはああいう激しいキスって意味だろうか。

「うん。」

私が頷くと、俊くんは「そっか」と呟く。それから、

「僕の方こそ、ありがとう、雪さん。嬉しかった。僕を求めてくれて。」

と言ってくれた。

私たちはしばらく二人だけでベンチで抱き合っていた。



家の近くまで送ってくれた俊くんは、少し照れたような顔で、

「また学校で。」

と言ってくれる。

「うん、また。またお散歩しようね?」

そう返すと、にっこりと、「うん。」と言ってくれた。



おしまい


雪が小悪魔でしたね。俊くんって草食系、なのか?私にも分からんです。

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