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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・前半】
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体育祭では借りられよう

 未羽と生徒席に戻ると、ちょうど借り物競争が始まろうとしていた。

 東堂先輩の姿が見えないから、おそらくまだ保健室から帰ってこられてないんだろうな。


「未羽、黄色席に行く?」

「いや、ここでいいよ。面白いものが見られそうだし」

「なんで?」

「借り物競争はね、上林くんと新田くんが出てるんだよ。ちなみに、本来なら海月先輩も出場予定だったよ。今は出られるか分かんないけど」

「なぜ?そんな足の速さも問題にならなさそうなものに」

「借り物競争のお題って、大抵面白くしてあるよねー!ここは元が乙女ゲームだし」

「あーなるほど」

「本人たちは現実的に自分が借りられるのを防止する目的で。乙女ゲーム的には借りられる主人公との絡みイベントですよ♡」


 あ、確かにいつの間にか夢城さんが戻ってきてる。


「体育祭で好感度が測れる唯一の競技だからね〜逆ハーがうまくいってればおそらく、攻略対象者が何人も走り寄ってってシーンになるんだー囲まれるところとかもう!」

「あの主人公で観たいの?」

「それよ、楽しみ激減。あー私のこの世界での喜びを奪った恨み、必ず晴らしてくれようぞ」


 あんたは江戸の亡霊か!


 競技が始まったものの、私は興味がなく、期待した目の夢城さんの方をぼーっと見ていた。

 おや、こっちに秋斗が走ってくる。


「ゆき、お願い!借りられて!」

「え、やだよ目立つの。大体お題何?」


 未羽がすごくにやにやしてるから碌な題じゃないと思うんだ。


「『俺の大事なもの』!ゆき以外にいないから」


 それはダメなやつでしかない!

 でも、ここに秋斗が来たせいで、上級生も含めた女子が色めき立っている。早く出るしかない。

 間近でにやにやする未羽は分かっていたに違いない。これを知ってたら教室にまだいたわ!


「うー、分かったよ。どうすればいいの?」

「これ、これつけて!」


 リボンだ。さっき裏方で用意させられてたやつ。色は黄色。チーム色っていうことか。

 私がはいはい、とそれをポニーテールにした髪に止めようとすると。


「待って。ごめん、俺もお願いしたい。同じ相手を借りられるのは1人だけだから」

「上林くん?」


 黄色いリボンを取り上げられて青いリボンを渡される。


「お、お題は?」


 ぴら、と紙を見せられる。

『自分の尊敬する人(生徒限定)』


 まともなお題じゃないか!

 そして生徒限定が地味に嫌がらせだ!


「海月先輩は出場者で声かけられなくてさ。俺に中間で勝ったの相田だけだろ?理由説明しやすいからな」

「ていうか説明しなきゃいけないの?」

「審査員の前でね」


 定番すぎる。


「秋斗、どうやって証明するつもり?」

「ゆきが大事だってことを証明するやり方なんて幾らでもある!」


 ない!トラブルに巻き込まれる予感しかしないからそれ!


「ごめん、悪いけど秋斗、上林くんの方を取るわ」

「ゆき?!」


 証明の仕方が予想できすぎて怖い。

 いつの間にか2メートルくらい離れた未羽がよだれ垂らしそうになって本物のカメラを構えてるんだから、絶対ダメだ。


 秋斗に文句を言う暇を与えずに私は青いリボンをポニーテールに着けて上林くんと走る。


「なんで笑ってんの?」

「いや、相田が俺の方来るって思わなくて。新田の顔やばいぞ」


 競技どころじゃなくなった秋斗の絶望した顔が見える。


「あくまでも、私の利益のため。大事ってどうやって証明するつもりだっての、本当にもう!上林くんがこっちに来た理由の方が納得いくし、説得力満載だった」

「じゃあとりあえず俺が1勝かな」

「青組は黄組より断然上位じゃない、今」

「そういうことじゃないけど、そういうことにしとくよ」


 何ですかそれ。


 審査員の前に行った上林くんがお題を見せて、さっき言った理由を説明してあっさり競技終了。

 秋斗はフリーズから解放された後に自分の茶道部の帛紗(ふくさ)を持って行ってた。


「俺にとってあの部に入れたことはすっごい大事なことなの!だからこれはものすごい大切なの!」「エクセレ―――ント!」という愛ちゃん先生の一言でそれは大事なものと認められていた。

 どうでもいいが、愛ちゃん先生のコスチュームは全身ピンク色のジャージだ。かろうじて無地だけだけど、目立つ。

 白チームのみんなにはなぜ青に協力した!とちょっと責められた。

 でもそれより何よりメデューサみたいな目でこっちを睨みつけてる夢城さんに気づいて絶望した。明日から私の未来はないかもしれない。



 最後の1年女子のダンスは何か事件らしい事件が起こることもなく終わった。

 出来?聞かないでほしい。普段でも未羽に異様なトーテムポームと呼ばれた私のダンスは、夢城さんの刺すような視線でますますぎこちなくなり、あらゆるところでミスをした。

 終わった後に俊くんが、「やっぱりさっきポールが倒れてきたの、怖かったの?」と聞いてきてくれたし、怒っていたはずの秋斗が、「ゆき、体どっか痛めた?」と聞いてきた。


 どこも痛めてないよ、ばかやろう!


 最後には四季先生が「とっても可愛くて面白かったですね。」と言ってきた。

 あのダンスは白鳥を連想させる優雅な白い服を着た夢城さんが主役で、悲恋と悲哀に満ちた美しさメインの物語だ。面白い要素はないはずなのだ。

 それを聞いた未羽が笑いを堪えられなくなり退場する中、私はにこにこと笑う先生を殴りたくなった。

 1人くらい醜いアヒルの子がいてもいいんです!


 最終的には東堂先輩が抜けた赤組が、海月先輩のいる紫組に負け、1位は紫組となった。

 こうして、波乱の体育祭は幕を閉じた。


体育祭編はこれで終わりです

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