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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・後半】
121/258

クリスマスパーティーでみんなのことを知ろう

秋斗が出してくれたケーキとドルチェを食べた。もうクリスマスパーティーも終盤だ。

「さてさて、気を取り直して。みなさん。クリスマスと言えば〜?」

四季先生が楽しそうに言う。

「「「「「「「「「「「「「「プレゼント交換!!!」」」」」」」」」」」」

「よねん?持ってきている?用意はいいかしら?」

「「「「「「「「「「「「「「いいとも!!!」」」」」」」」」」」」」

「え、先生たちは生徒との物品の交換はまずいんじゃないですか?」

「私たちはお金のかからないものにしておきましたから大丈夫ですよ。」

「これも音楽流して単にプレゼント交換するのはつまらないわよね。だから、こうしましょう。他己紹介しあう会。」

「他己紹介?」

「そうよ。くじで当たった人が、誰か指名して、相手を紹介するのよ。そして、相手もその指名してきた相手を紹介する。ここに来て1日過ごしたことで、少しはみなさん交流ができたでしょう?そこで知ったことをお互いに披露するのよ。紹介が終わった組からそこにみんなが置いているプレゼントを取っていっていいわ。ただ、いつも一緒にいる人同士で紹介してもつまらないから、君恋生徒会2年組、君恋生徒会1年組+補助員、茶道部組、天夢組、教師+相田くんのペアで、同じグループになっている人以外を指名して紹介するようにしましょう。できれば、一番関わりのない人を選んで発表するようにすれば面白いわよ?」

ゲーム性はないが、なかなか斬新なアイディアだ。

「愛ちゃん先生ってまともな企画もするんだ…。」

「新田くん、聞こえているわよ?教師ですからね。おふざけや地獄の罰ゲームだけじゃかっこつかないでしょう?」

「…先生、地獄の罰ゲームとはもしや私のクッキーのことでは、ないですよね…?」

「美玲、珍しく気づきましたね…!貴女もこの1年で成長したということでしょうか。」

「海月ぃぃぃ!」

「事実です。毒を食らわせた人に同情の余地はありません。」

会長は、こめちゃんの代わりに犠牲になったことは後悔していなさそうだけどあれを食べさせられたことは根に持っているようだ。

愛ちゃん先生の提案に反対する人もおらず、準備をしていると、三馬鹿が一斉に手を挙げた。

「俺っちらはいいです。」

「どうしてなのです?」

「俺っちらはドレイの身分んすから、対等な立場で紹介なんて恐れ多いんす!」

「片付けの方をやっておきます!」

しつけの行き届いた使用人になってしまっている。

「そんな、でもせっかくだし…。」

「「「身分が違うッス (んす、ます)!」」」

なんて徹底した身分制度ができてしまったんだ…!

「じゃあ三人が先にそこからプレゼント選べよ?それで平等だろ?」

冬馬くんの提案に三人は雄たけびをあげていそいそとプレゼントの山に向かった。誰のか分からないようになっているプレゼントを楽しそうに選び出す。

「でもこれだと奇数になっちゃいますね?」

「じゃあ最後の一人にはここにいる全員をどう思っているか、言ってもらいましょうか。」

「四季くんの言ってくれた案でいいわね。じゃあ、こちらも始めましょう?」



くじで最初に指名権を得たのは。

「空石雨くんね。」

「はい!俺は…」

明美か?明美を指名するのか?

「相田太陽くんを。」

太陽に来た!

「お、俺ですか?」

「そう。」

華奢な美少年がニコッと笑う。

「相田太陽くんは、真面目で姉思いの中学三年生です。君恋高校を受験しようと思ったのは、お姉さんの相田雪さんがいつも楽しそうにおうちで話をするから、そして東堂さんを尊敬しているからだそうです。俺と会ってまだ2か月くらいですが、少し話しただけでもとても有能な少年だということは分かりますので、うちに来てくれないのは残念ですね。是非来年君恋の生徒会に入って頑張ってほしいと思います。」

「じゃ相田くん、どうぞ?」

「あ、えと。空石雨さんは…一途な方だと思います。俺、前に何があったとか知らないんですけど、明美さんに対してはまっすぐで、一生懸命な思いを持たれていると思います。…あと、お話してて、頭いいなぁって。俺、結構自分の出来がいいんで、それでちょっと奢っていたところがあったんですけど、雨さんと話していて俺の世界の狭さが分かったんです。だから、俺、雨さんも東堂先輩同様、尊敬する人だと思ってます。」

次の指名権は未羽だ。

「んっと。私は、美玲先輩を指名します。」

「お、私か?意外だな。」

「今まで先輩とはお話したことはあまりありませんでしたが、私は美玲先輩のこと、好きです。なんでかっていうと、ご自分の欲求に正直だからです。私と似てて共感しちゃうんですよね。愛情表現がはっきりしていて、うやむやにしない物言いにも好感を覚えています。でも、料理の腕は別として、お姉さんとしていつも雪たちのことを見守っていて、先輩の方が私なんかよりもっと大人です。美玲先輩は、後輩に『こういう人になりたい』と憧れられる素敵な方です。」

「未羽くんは…そうだな、私が見ている限り、実は感情表現はどちらかというと苦手だろう。だが、雪くんが関わることについては誰よりも敏感だ。未羽くんは自分よりも友達のことを優先するタイプだから、きっと損もするだろう。それでもいいと思って行動している節がある気がするな。それは言うは易し、行うは難し。一人の女性としてかっこいいと思うよ。」

次は斉くんだ。

「僕は冬馬くんを指名しようかな。冬馬くんはね、本当に眉目秀麗・文武両道・冷静沈着って言葉がぴったりな気がするよ。最初は、ちょっと気取ったやつだと思ったけどね、でも秋斗くんとの絡みを見てて、幼いところも見えてむしろほっとした。うちの学校で、そこのまいこちゃんが行方不明になった時も必死で探していたし、自分が大切だと思った人をとことん大切にするやつだと思って親しみがわいたよ。ま、もう少し面白くなってくれるとよりよいかなー。」

「種村は、いつでも笑っているやつだと思う。それは悪い意味じゃなくて、いい意味で。いつでも面白いって思えることを見つけられるってこと。種村が笑ってるとつられて他の奴も笑うから、周りに笑顔を持ってこられる奴なんだと思う。それは俺にはできないことで、羨ましい。それから、鮫島や空石たちのことになると、容赦なくなるよな。天夢編入の時の最初の突っかかり方もあいつらのためだろ?お前こそ、友達思いだと思うよ。」

次が愛ちゃん先生だ。

「ワタシはね、海月春彦くんにするわ。あなたはね、優秀なのは言わずもがなだけど、うちの学校に初めて疑問を持って立ち上がった人ね。あなたほど行動力があって勇気のある人はいないわねん。どれだけ反対されてもめげずにやり通した、その精神力は必ずこれからも役に立つわ。誇っていいことよ。少し増井さんに執着しすぎなところはあると思うけれど。弟君も大事になさい?」

「はい、すみません。私は、愛ちゃん先生を尊敬しています。先生がいらっしゃらなかったら生徒会は出来なかったと思います。いつもその口調で軽くおっしゃいますが、おっしゃっていることはいつも真理をついている。物事の本質を見抜く力を是非見習いたいと思っております。」

次が遊くんだ。

「俺は、四季先生にする!担任じゃねーし、かかわりもねぇもん。四季先生って聞いていた以上にドジで、やらかしている人だなって思う。けどさ、俺が知っている先生の中で一番生徒思いで生徒に近いところにいてくれて生徒のこと見てくれてる先生だと思う。生徒がダメでも、自分の時間をかけて一生懸命教えてくれて、ぜってー見捨てないからさ!そんな先生を、俺、かなり好きです。」

「野口くんは、明るいですよね。どんな場所にいても、一番最初に友達を作る子ですね。初対面だろうが、もともと気まずい状態にあろうが関係なしに切り込んでいくそのコミュニケーション能力はなかなか得難いものです。たまにデリカシーのないことも言ってしまうようですか、それは照れ隠しのようなものですよね。世の中に出たらその人脈を作っていく力は何よりも強みになると思いますよ。」

次がこめちゃん。

「私は、桜井先輩にしますっ!桜井先輩、こないだの告白、かっこよかったです。先輩はどんな女の子にも優しくて、分け隔てないです。先入観とか、悪い感情とかそういうのすら出されないです。だからきっとあの夢城さんも先輩のことが好きになったんだと思います。緊迫した空気でもそれを読まずに面白いことを言ってくれる先輩が、私の先輩でよかったですー!」

「ハニーちゃんはね、可愛いよね。それに尽きる。うん。天然で、いつも一生懸命。うちの生徒会の和やかな空気を作ってくれているのは君なんじゃないかな?でも必死になって、あのラブラブの春彦にすら食って掛かるときもある。ガッツがあるところとほんわりしたところと、どっちもがハニーちゃんの魅力だよ。」

次が明美。

「私は鮫島くんを指名します!さっきの未羽の身代わり、カッコよかったわ。侍って感じ!恩は絶対に返す!そういうの、女の子には絶対萌えるポイントだよ。あとね、私がそこの空石…雨くんを殴り飛ばした時、絶対怒ったと思うのに、ちゃんと事情を聞いてくれた。冷静な判断もできる人だよね。」

「武富士さんは…雨の想い人で…流されない、揺るがない芯を持っている人だと思う。武富士さんは間違っている、と思ったことを誰が相手であっても間違っていると主張するんだろう?流されやすい日本人にないその勇気に俺は敬意を表する。」

次が泉子先輩。

「私はきょーぴょんを指名します!」

「…きょーぴょん?」

「多分京子のことだと思います。」

「きょーぴょんはしとやか大和撫子なのです!それは外見だけじゃなくて中身もだと思うのです!さっき聞いた話なのですが、あけみぴょんがあめきゅんに対して結構きついことを言ったときに諌めることのできる子だそうです!ただ単に優しくすることは簡単ですが、仲のいい友達をきちんと叱るのは難しいです!それができるのはきょーぴょんの強さで、美しさなのです!私はそんなきょーぴょんの写真を今日いっぱい撮れて満足なのです!」

「泉子先輩はみなさんのことを見守ってらっしゃる方ですね。それは雪たちだけでなく、生徒会二年の先輩方をも見守っていらっしゃるとか。お体が小さいので、体力的には一番きつかったのに、去年一度も生徒会のお仕事で弱音を吐かなかったと先ほど美玲先輩からお聞きしました。強い女性だと思いますわ。私も一人の女性として先輩のようになりたいものです。」

次が雹くん。

「俺は東堂さんを指名する。東堂さんとまともに話したのは今回が初めてだが、いつも君恋の生徒会の良識派、ストッパーとして活躍されていると聞いた。特に生徒会長の暴走を止められるのは東堂さんだけだとか。東堂さんはご本人も目立つのに、普段は一番周囲に目を配り、裏方を務めているとも聞いた。目立つだけが華じゃない。東堂さんみたいに何でもできる人にそう言われたら今までの天夢でのさばってた俺が恥ずかしい。俺も来年こっちで生徒会を作ったときにあたりを見回せるようになりたいと思う。」

「空石…おっと、弟がいるか、雹だな。こいつはそれこそ上林と同じで何でもできる万能タイプだろ。さっきのさばってたと言ったが、みんなのリーダーとして引っ張っていく力は誰もが持っているもんじゃない。カリスマ性と頭の回転の速さが必要だ。それに雹は努力家でもある。女が苦手だそうだが、こうやって女子がいっぱいいる場に来て慣れようとしている。そういうお前なら、きっと来年いい生徒会を作って引っ張っていけるだろうと俺は期待している。」

そして最後の指名権を引いたのは私だ。

「んー次は相田さんね。」

「でも先生。あと残っているのが、俊くんと秋斗っていう生徒会一年メンバーだけです。」

「それは仕方ないわ。もともとあなたたちの繋がりが多いんだから、関係が薄い人から指名して紹介していくことにしたら必然的に残ってしまうでしょう?罰ゲームもないし、お好きな方を紹介してくれればいいわ。」

「じゃあ…秋斗は一番近くで見ちゃっているので、俊くんを指名します。俊くんは…良識派で苦労人です。実は茶道部、生徒会、編入時のクラス、広報、全部私と一緒にやってくれたのは俊くんなので、語りたいことは山ほどあるんですけど…。優しくて、穏やかで、落ち着いているのは見た目そのままです。でも、それだけじゃなくて、お兄さんのことはすごく誇りに思っていて、お兄さんのためならあの穏やかな俊くんでも激高したりするんだな、とびっくりしました。実は熱い人なのかなとも思います。最初の生徒会の役員選挙の時は裏方って言っていたけど、俊くんは生徒会になくてはならない人物で、既に裏方ではないと思います。」

「雪さんかぁ。話せること多すぎて、難しいね。雪さんは、冷静で落ち着いていて、周りを常に見ている才媛です。でも、負けず嫌いで、ちょっと抜けているところがあったりして、可愛いと思います。それから、最初は一人でやっていけるっていう空気があったんだけど、最近は少しずつ周りに頼ってくれるようになって、ようやく信頼してきてくれたのかなって僕は嬉しいです。これからも、一緒にいろいろと活動していけるのが楽しみです。」

俊くんがにこっと笑ってこっちを見てくれる。

最後は、秋斗だ。

「俺が最後かぁ!てことはみんなに対してだよね?…ここに入る前、俺の世界はゆきだけでした。それは外国で生まれて日本に来た経緯とかが問題なんだけど、それはおいといて。で、ゆきだけが俺の世界のすべてだったはずなのに、いつの間にか、俊とか、こめちゃんとか、未羽ちゃんとか、茶道部のみんなとか、先輩方とか、先生とか、天夢のやつらとか、いっぱいなくしたくない人が出来ました。みんなあったかくて、でも信念を持っていて、俺の尊敬する人ばかりです。でもその中でも一番、俺が、心からライバルだって認めているやつは、上林、お前だと思う。お前はほんとにいけ好かなくて、なんだかんだゆきに付きまとって、最初は嫌いだったけど、でも今は、お前がいなかったら学校生活こんなに楽しくなかったよなぁって思う。だから、俺、お前には感謝してる。それからそんな関係を築く場所を与えてくれた君恋って高校が俺は好きです。…まとまりないんだけど、こんなとこでいい?恥ずかしいわ!」

「大丈夫、秋斗くんちゃんとまとめてくれたよ!」

「恥ずかしいのはみんな同じだったのです!」

みんな、照れた顔をしている。

関わりの薄い人の紹介だったはずなのに、みんながお互いのことを知ろうとして、知って、繋がっていっている。

「さ、じゃあプレゼントは取ったわねん?後片付けするわよーん?」


みんなで後片付けをしている最中に、

「新田。」

冬馬くんが秋斗に声をかけた。

「俺も、同じことを思っているから。」

「…あっそ!でもゆきのことは別だから!」

「はいはい。」


秋斗だけじゃない。私にとってもここにいる人みんなが大切だ。いつまでも、大切にしていきたい。

そのためにも、私はそろそろ足踏みをやめるべきなんだろう。

言い合いをする二人の横顔を見ながら、そう、思った。



その決断が遅かったことをその後あれほどまでに後悔することになるとは、その時は想像もしていなかった。



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