クリスマスパーティーを楽しもう
4月26日追記:私のクリスマスに関するてきとーな記述で誤ったことを愛ちゃん先生に言わせてしまったのでその点を改訂しました。ご指摘ありがとうございました!
愛ちゃん先生の乾杯の音頭の後はみんなが料理を食べる。チキンを切り分け、秋斗が作ったオードブルを取り、サラダを摘み、買ってきたお菓子も食べる。
こめちゃんがお菓子ばかりつつくからお腹を壊さないよう、会長がセーブをかけているようだ。
雨くんは明美から「50センチ以内には近寄らないで!」と言われたので、きっちり50センチの場所をキープして太陽と喋っている。あの二人は君恋祭以来かなり仲良くなったらしい。
遊くんは、「ここここここのメンツで俺は…!」と嘆き、三馬鹿に「お前らいつも辛くないか?」と訊き、「俺らはいいんす!その身分なんで!」「 それで満足ッス!」「 むしろ足蹴にしてくれた方が…!」と返されて愕然としていた。その様子を見ていた斉くんと雹くんが爆笑している。
京子はにやにやした美玲先輩に「もしかして夏樹に興味あるの〜?」と捕まり、尋問を食らっている。
泉子先輩はみんなの様子を写真に収めることに忙しい。
俊くんは、今日はお守りがないことでかなり幸せなのかマイペースに食事を楽しみ、秋斗と喋っている。
四季先生は振ってもいないし、あっためてもいないはずの2本目のシャンパンを開けようとしてぶしゃあ!とやらかし、東堂先輩がその片付け、そしてその被害者になった冬馬くんが愛ちゃん先生に風呂に案内されていた(四季先生が冬馬くんに平謝りしていた)。先生、先生のお家の不運は多分先生が全部代わりに引き受けてるんだと思います!
「みんな楽しそうね。」
未羽が隣にやってきた。
「あんた、鼻血とか卒倒とかないの?全攻略対象者様が集ってるけど?」
「ふっ。既に興奮しすぎて丸2日寝てないのよ。昨日は吐血しそうになったわ。」
「病院に行け!!!」
「今はイベントでもなかったこの光景を脳に永久保存するのに忙しいの。」
おそらくこないだまで詰め込んでいた期末勉強の内容が全てデリートされているんだろう。
「白猫ちゃん。楽しんでいるかい?」
「桜井先輩!先輩、あの後夢城さんとは…?」
「付き合っているよ。もちろんね。」
「じゃあ博愛主義はやめるんですね?」
「そんなことないさ。それはやめられるものじゃないからね!ボクの一部だから!でも愛佳を寂しがらせることはしないように最大限気をつけるつもりだよ!」
あくまでそのスタイルは変わらないんですね。
そういえば。
夢城さんは転生のことを桜井先輩に言ったんだろうか。桜井先輩の横顔からは読み取れない。この人はもともと敏い人だし、きっとそれを夢城さんから聞いたら私のことにも気付くだろう。それでもきっと誰にも言ったりはしないんだろうな。
私はポッキーを咥えながら考える。
「ゆーきっ!」
「何よ、未羽?そんな恐ろしく似合わない可愛い声出して…」
振り返ったところで私が食べていたポッキーの端を未羽がぱくっと咥えた。そして
ポリポリポリ…。
え?
そのまま進行してきて、唇がぶつかる。
「なななななななっ!!」
「「「「「「「「はぁぁぁ?!」」」」」」」
周りが唖然としてこちらを見ている。
「ね、ねーちゃんのキスが…。完全にノーマークなところで奪われた…。」
太陽なんかフォークを取り落としている。
「あんた、ちょっと午前の様子変だったわよ。何があったか知らないけど、今は今で楽しみなさいな。」
盗聴魔の未羽には筒抜けだったらしく、私の耳元で他の人に聞こえないように呟いてくる。
「だだだだからってこれは!」
「ポッキーゲームショック療法。効果あったでしょ?」
ゲームの開始合図すらなかっただろうが!!
棄権の余地を与えてくれないとかゲームとして成立してないと思うんだけどな?!
「が、が、が、ガールズラブ!!!」
「美玲先輩違いますっ!未羽がふざけただけです!そして泉子先輩、写真撮ってないですよね?!」
「未羽さんは、まさか、そっちの方…?」
鮫島くんが驚いて尋ねる。
「んー?綺麗なら両方オッケー?」
「鮫島くん、未羽の言うことの8割は冗談と思って聞き流していいから!」
「おぉ!子熊ちゃんはボクと同類だね?!」
未羽はクマなのか。
「先輩と決定的に違うのは、私は夢城愛佳には絶対キスしないことですね。」
「そりゃあ安心だね☆」
明美と京子はさっきの様子を見た秋斗と冬馬くんが放心しているのを見てにやにやしている。
「未羽ちゃんってすっげー!面白い!」
可愛い系イケメンが台無しになるくらいゲラゲラ笑う斉くん。
こんな濃い人たちが集まって騒ぎ出したら収拾がつくとは思ってなかったんだ…!全く、誰かどうにかして!
その後はチームに分かれて人生ゲームをした。私が結婚するマスに入った時に「相手は誰だろうねぇ?」という未羽の言葉を発端に「人生ゲームにおける私の結婚相手が誰なのか」という謎の論争が起こった。
「俺、俺でしょ?ゆき!」
「んなわけねーだろー秋斗にぃ!これはダンナじゃなくて家族!俺って可能性もあるんだよっ!」
「いや太陽くん、それかなり厳しい解釈だろ。『結婚』のマスじゃないか。」
「上林さんは黙っていてください。」
「んなっ!?生意気…ッ。弟だからって許されることと許されないことがあるからな?太陽くん。」
「上林が大人気ねー!珍しー!」
「冬馬くんは雪ちゃんのことはそんなにひかないもんね~。」
「上林が引かなくても俺が引かせるよ?」
「うるさい新田。お前には負けないってずっと言ってるだろ。」
「二人で完結しないでもらえますか?俺、ねーちゃんのためだったら断固戦いますよ?」
「あっらまぁ。雪ちゃん愛されちゃってー。楽しいねぇ。」
にやにやした未羽と明美と京子に脇腹をつんつんされたり、先生や先輩たちに冷やかされる。天夢の四人は大分このノリに慣れてきたのか楽しそうに観察してくる。車の模型に刺さった青い棒にここまで執着されるのは面倒だったので私が「俊くんにしとく」と言っておいたところ、その後俊くんは二人と太陽からかなり睨まれ、俊くんには「雪さん、こっちに振らないで…」と嘆かれた。ごめんね俊くん。
お次がカードゲーム。
始める前に愛ちゃん先生が言う。
「今日はクリスマス!クリスマスはどういう日かしらん?」
「イエス・キリスト様誕生のお祝い、ですよね?」
「その通り。主たる神の誕生に感謝する日。そうであれば…命というものに心から感謝を捧げる機会を得るのもいいんじゃないかしらん?」
「……まさか…。」
「小西さんがね、今日もお菓子を作ってきてくれたのよん!!」
「今日はクッキーだぞ!…ん?命に感謝って今の話の流れと一体どういう関係が?」
出されたのは、クッキー。のはずの物体。
普通、「クッキー作りに失敗した」というと焼き加減に失敗したとかで真っ黒の炭となっているのを想像する。硬くて歯が通らない、とか、苦くて辛いとかそういうのが定番だ。
しかし美玲先輩のはそこにとどまらない。
そこにあるのは、もにゃっとした柔らかいナニか。先輩が取り出した時に形が変形したから間違いない。
色は全体的にオレンジ色がかっているのでここは夏のカップケーキより幾分マシだが、濃いオレンジのスジやなぜか青色や黒い色素が混ざっている。
「み、美玲先輩〜。こ、これはえぇっと…オレンジピールか何かを入れたんですかぁ?」
こめちゃんが代表して訊くが、美玲先輩は、ちっちっち、と指を振る。
「私を甘く見てはならんよ。そんな定番な物はいれていない!」
定番な物を入れてください!!頼むから!!
「先輩、これは焼いているんですよ、ね?」
今度は俊くんが恐る恐る訊いた。
「もちろんだとも!オーブントースターでな、チーンと!」
火力足りない!生焼けの可能性も大!
「お、俺、今からでも焼きましょうか…?少しでもまともになるかも…。」
秋斗がそれらを台所に持って行こうとするのを冬馬くんが止める。
「やめろ、新田。アレからナニか液体が出てきてオーブンが使えなくなったらまずい。」
冬馬くんは夏の体験からそれを毒物と認定しているらしい。
予想していた生徒会メンツですら、うっと引くレベルの代物なので、夏にはいなかった三馬鹿や茶道部員や天夢メンバー、太陽は完全に青ざめている。
「美玲先輩、味見は…?」
「大丈夫だぞ?少し甘味が足りないくらいか?あと、柔らかめだったな。」
「美玲は極度の味オンチな上に、お腹がやたらと強くてインドの生水飲んでもケロリとしているレベルなのです!みんな信用してはいけないのです!」
泉子先輩の適切な解説が入る。
「さぁ、真剣勝負をしましょう?三人が生贄として捧げられるとしましょう。」
「先生、どういう意味です!?」
愛ちゃん先生がゴングを鳴らした!
カードゲームでは愛ちゃん先生がぶっちぎりで強い。生徒では東堂先輩が滅法強かった。後のメンバーは運でしかないはずなのに真剣勝負を繰り広げる。かつてババ抜きでこれほど神経を研ぎ澄ませたことがあっただろうか?かつてダウトでこれほど必死で表情を読んだことがあっただろうか?
結果 生贄となったのは、雉、こめちゃん、未羽だった。
「う…。」
「これ、食べ物なんですかぁ?先輩いいぃ〜?」
「失礼な!クッキーはれっきとしたお菓子だぞ!それ以外のなんだというんだ?」
クッキーは、お菓子ですね。クッキーなら。
「間違いなく生ゴミでしょう。まいこさん、代わります。」
「は、春先輩…!」
「まいこさんにそんな毒を食らわせるなんてできません。」
「でも、でも春先輩が…。」
「あなたの代わりに死ぬのなら惜しくありません。」
「春先輩…!」
「そこ二人!なぜ命を懸けているのだ?」
こめちゃんの代わりに会長が食べることになった。
「さ、猿…。も、桃…。」
「なんッスか、雉?」
「ぼ、僕たちは友達だよね?」
「友情は脆いものなんす。」
「潔く散ってくれッス。」
「うわああああああ!」
雉は見捨てられた。
未羽は、くっ。と言ってから私をチラと見るが、あえて視線は外しておく。
「雪、なんで視線を外すの?」
「私、夏に一かけら食べて知っているからね、破壊力を。」
「雪くん!?」
「ぐ。食べるしかないか…。」
「待て、未羽さん。俺が代わる。」
「え?!結人!?」「鮫島!?」
鮫島くんが未羽を止めた。
「鮫島、それは本当に、冗談じゃなく毒物だぞ?俺は一度体験したから知っている。」
冬馬くんが鮫島くんを止める。
「上林くん、君とも少し話す必要がありそうだな。」
「鮫島くん、私、あなたに代わってもらう義理ないんだけど?」
「天夢祭の借りを返すつもりだ。」
「ああ、あれか。別に大したことしてないんだけどね。話聞く限り、これ多分見合わないよ?」
「構わない。」
真剣な表情で未羽に向かい合う鮫島くん。
おお?もしかして、鮫島くんって、未羽のこと、ちょっと気にしている?
未羽はふーん、と鮫島くんを見てから
「じゃ、任せる。私もまだまだ死にたくないし。」
あっさり選手交代した。
残り話数を数えてみたところ、あと10話ほどでした。もう10話切るくらいですねー。残りも少しですが、最後までお付き合いいただけると幸いです。