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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・後半】
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クリスマスパーティーの準備をしよう

そして25日、クリスマスパーティーの日がやってきた。

私は秋斗と一緒に予定時間よりも3時間以上早く四季先生のマンションに向かっている。それは、一部のオードブルは買うのではなく秋斗が作った方が美味しいんじゃないかということになったからだ。私はその手伝いに来ている。ちなみにドルチェは予め秋斗が作ってきてくれたので私と秋斗で分担して持ってきている。

「…ね。秋斗、住所によるとここだよね?」

「…そうだね。」

「ここさ、どう見ても、マンションっていうか…億ションだよね?」

「俺もそう見える。」

豪勢な建物の前で立ち往生しているとちょうどドアが開いて先生が出てきた。

「あ、新田くんに相田さん!来てくれたんですね。どうぞどうぞ!」

先生が1階のフロアに私たちを案内する。

「先生、会場になる部屋はどこですか?」

大体、生徒会(補佐員と先生含む)計15人+茶道部4人+太陽+天夢4人=24人もいるのだ。一部屋に入るものなのか、この人数。と思っていたのだが。

「え?このフロア全部ですけど?」

やっぱりな!そんな気がしたんだよ!

「先生、なんで教師やってるんですか?お家継がなくていいんですか?」

「私は小さいころから教師という、人が一番大きく様々な形に成長する過程に関わる仕事に憧れていましたから。」

「ご家族は反対されなかったんですか?」

そう訊くと、先生は苦笑する。

「うちは商家なんですが、代々運に恵まれていて規模が大きくなっていっているのに、なぜか私だけ運がないんですよ。だから家族もあっさり認めてくれたんです。家は兄が継ぐことになっています。それに、私はお金よりも何よりも、みなさんに一番近いところにいて成長させてあげられる教師になりたいんです。反対されたとしても諦められない夢なんですよ。」

そう言って先生は優しく微笑んだ。信念を持って教師になった人が担任でよかったな。最近はニュースとかで報道される通り、いろんな先生がいるからね。

まぁ、先生が生徒を育てているのか、それとも育てられているのかは微妙なラインにある気もするけど。

「あ、相田さん今なんか考えましたね?」

「いえ、何にも!それより先生、台所は勝手に使っていいんですか?」

「どうぞ!鳥の丸焼きとケーキの方は今朝、伊勢屋先生と一緒に買いに行きましたから安心してください。」

愛ちゃん先生がいるならケーキが寄ったりつぶれたりしてはいないだろう。。



秋斗と一緒にキッチンでお料理タイムに入った。秋斗の指示に従って卵を混ぜたり野菜を切ったり、オーブンで焼き具合をチェックしたり。テレビのお料理番組のアシスタントのような立ち位置だ。

ちなみに先生の協力申し出は謹んでお断りした。

「秋斗、こっち、こんなもんでいい?」

「オッケー。ゆき、これ味見して?」

「分かったー。」

クリームをつけた指先を目の前に出してくるから、それを自然に口に含んでしまい、慌てて口を離す。

こういうことは私たちの間では小さい頃からそれほど違和感なく行われていた。でも高校生になってからはこれが友達としての距離を外れていることを分かっているし、秋斗を男の子として意識し始めてからは恥ずかしくなって赤くなってしまった。

でも今は。

「ゆき、味どう?」

秋斗は全く気にしていなかったのかそれをしてからすぐ作業に戻っていたのだが、私が何も言わないことに気づいてこっちを振り返る。

「え!?ゆき、なんで泣いてるの!?どうしたの?」

あれ。

私、泣いてるの?言われるまで、気づけなかったけれど、つうと涙が頬を伝っていた。

秋斗とこうやってちょっとした触れ合いをすることは、もう「いけないこと」だと、心のどこかで分かっている。その罪悪感。

もうこういうことができなくなること、それが秋斗との距離を生ませることへの寂しさ。

それらがごちゃまぜになってしまった。

秋斗は驚いて困った様子を一瞬見せたけど、安心させるように私をぎゅっと抱きしめてくれる。

「ゆき、落ち着いて。何があったのか分かんないけど、ゆきが泣くってよっぽどだよね。何か、あったの?」

答えられない。どうしても、言えない。

「秋斗っ。…いなくならないでね。…嫌だ。…秋斗がいなくなるのが、嫌だ…。」

秋斗がそれを聞いて、腕の力を強めてきた。

「…ゆき。俺はここにいるよ。ちゃんといるから。」

「うん…。」




準備を終えた頃、次々とメンバーがやってきた。

「「「お邪魔しまぁーす!」」」「お邪魔いたしますわ。」

茶道部のメンツが来たなと思っていると、

「お邪魔するのですっ!」「「「「失礼します。」」」」

生徒会の先輩方やこめちゃんたちもも来る。

「と、東堂先輩、秋は色々とお世話になりましたわ。」

「あ、辻岡か。いやいや、大したことはしていない。気にするな。」

「うわぁ!おいしそうな匂い~!!秋斗くんと、雪ちゃん、作ってたの?」

「うん。ほとんど秋斗だけどね。」

「ゆきも頑張ってくれたよ。全部俺とゆきの力作だから!絶対うまいから!」

「うわ、なんかすごいの作ってる!?秋斗くん、編入の時にも思ったけど料理すごいよね!?」

会話に乱入してきたのはいつの間に来たのか、斉くんだ。天夢の方も来たらしい。

「明美さんっ!!俺、明美さんとクリスマスを過ごせるとは思っていませんでした!」

「私も思ってなかったわ!ちょっと!そんなに近寄らないで!鳥肌がぁっ!」

「武富士、落ち着いて。」

「雨くんも一気に行ったら明美さん逃げちゃうよ?!」

明美に迫る雨くんを冬馬くんと俊くんが押さえている。

「お、お、女が多い…!」

「雹くん、よく来たねー。」

「な、慣れるためもあるからな。一応そこの…修学旅行の時に会ったやつらは大丈夫だ、と思うんだが。」

「新しく増えたのは美玲先輩と泉子先輩だけだと思うけど?」

「君がもう一人の天夢の皇帝か。小西美玲だ。」

「私は馬場泉子なのですっ!」

「…一人は男、一人は幼稚園児。一人は男、一人は幼稚園児…。」

「美玲先輩っ!泉子先輩!許してあげてください!これは彼なりの現実を受け入れるための精神統一なんです!!」

殺気だったお二人をなんとか止めるのも私の役目だ。

「おー雪が頑張ってるぅ。」

「未羽さん、久しぶりだな。」

「鮫島くんか、おひさー。天夢のみんなも変わりないみたいだね。」

「見ての通りだ。」

「良識派はお疲れ様だね。」

「痛み入る。」

「遅くなりましたー!」

最後にやってきたのは塾の冬期講習から直接来た太陽だ。

「え、冬期講習終わるの早くね?」

「あ、野口さん、お久しぶりです。今日は試験だったので、半分の時間で終わらせて途中退出してきました。」

「でたぁ!!!相田DNA!!嫌味ったらしーなーお前っ。」

「努力の成果なんですけど…。」

「さぁさ、全員そろったみたいねん。こっちに来なさいな。乾杯するわよん?」

先生方はシャンパン、私たち未成年はシャンメリーだ。

「メリークリスマス!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



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