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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・前半】
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体育祭で盗み聞きをしよう

 弁当をゆっくりと食べてから、実行委員テントに向かうと、そこは戦場だった。


「次の種目は!?」

「大玉です!玉の配置終わってます!」

「その次のは!?」

「綱引きです!綱がまだ届いていません!」

「何だって!?早く届けさせるようにしろよ!」

「東堂先輩、放送用マイクが壊れました!」


 帰ろうかな。


「そこにいるのは、相田雪か?!」


 なんで気づかれたのかなー。


「はい。四季先生に応援を頼まれました。うちのクラスからは夢城さんが係になっているはずですが」

「あいつは倒れた委員を保健室に運んだ!次の大玉の選手だからそれから競技場に直行することになっている。悪いが、マイクを放送室から取ってきてくれないか?お前なら速いからすぐだろう?」


 見られてたんですね、そして手伝う前提ですか。

 責任者が東堂先輩だってことは知ってたから嫌だったのにな。


「分かりました」


 軽いダッシュで放送室から替えのマイクを取る。隣は保健室だ。

 今日は晴天。5月末の快晴だからそれなりに熱中症患者が出ているのかもしれない。梅雨に近づいてムシムシした暑さになっている。

 っていけない。さっさと戻らないと、俺様先輩にどやられそうだ。


 そのまま放送室を出ようとしたところで、とても聞き覚えのある鈴を転がすような可愛らしい声が聞こえた。


「全く、なんでうまくいかないのかしら。こっちは完璧にこなしているのに」


 夢城さんだ。なにか運営でうまくいかなかったのかな?


「私は主人公なのよ?なのに、秋斗くんも先生も全然私にかまってくれないし。特に冬馬くんなんて全く接点ないじゃないのよ!?それもこれもきっとあの相田雪が邪魔しているに違いないわ」


 どえええええ。ちょっと待てい。私はどっちかっていうとあなたを主人公にするように流しているはずなのに!


「でも相田雪の動きがゲームと違うのよね……中間も1位取るし、今日だって大玉に出ていないし、あえて同じ競技にしようと思ったら100メートル走とかの個人競技に出てるし。それじゃあ絡みないじゃないの。なんなの?本当にもう」


 この感じだと、間違いない。夢城さんは乙女ゲームの世界だって分かってるんだ。


「違う動きといえば、横田未羽も。サポートキャラのはずなのに。私がいなくなった後に第3弾が出たのかしら。ま、こっちは木本舞がいるからいいけどね。私がイベント起こしたから一応ルートには乗ったと思うし……とにかく、私の逆ハールートを邪魔させないようにしなくちゃ!今日は海月先輩と絡まないとね」


 ひぇえええ。これが世に言う、転生者がいっぱいってやつですか。多分未羽が予想していた通りなんだろうなぁー。にしても、転生って簡単に起こるもんなんですね。

 私は夢城さんが出て行ったのを見計らってから放送室を抜けた。



「遅くなりましたー」

「遅いっ。競技始められなかったんだぞ!」


 そうだった。


「すみません、電池入ってるマイクがなかなか見つからなくて」

「まぁ、いい。とりあえずあとはこっちの放送準備と誘導とこっちの旗持ちの方頼む」


 何、この後もこき使われるの?

 この感じだと、夢城さんは私が東堂先輩と絡んでいるのを見たら怒り狂うだろうし、困るなぁ。とりあえず、大玉とか二人三脚とか夢城さんが出る競技は裏方をさせてもらえばいいや。


「大丈夫ですか?」


 振り返ると、生徒会長・海月晴彦先輩が立っていた。


「う、海月先輩……どうしてここに?」

「私も呼ばれたんですよ、人手が足りないってね。夏樹とは仲がいいですし、個人的手伝いに」


 まずい事態だなーせっかく『春』とは関わりがなかったのに。

 裏方仕事だから海月先輩から逃げられない。


「俊と仲良くしてくれているそうですね。ありがとうございます」

「いえ、私の方こそ、彼にお世話になっています。俊くんとは同じ茶道部になりましたし」

「茶道部ですか。それは素敵ですね」


 にこり、とほほ笑む先輩。このシーン、おそらくスチルになっているんじゃないか?

 ジャージ姿というそぐわない恰好をしててもそこだけ空気が優雅なのはなぜですかね。


 向こうでは、放送担当の四季先生がなぜかマイクのハウリングを引き起こして慌てすぎてマイクを落として更にものすごい音になっているのが聞こえる。必死に謝る先生とキレる東堂先輩。それをなだめになぜか競技側から走り寄る夢城さん。

 ああ、これ、イベントなのか。先生側かな?

 ていうか、競技側の生徒が走り寄るって違和感満載だろうに。

 生徒観覧席を見ると、未羽が双眼鏡でその様子を見ているのが見える。

 イケメン2人を一度に収めるシーンなんて、彼女には垂涎ものだ。実際よだれでそうだよ、未羽。


 私が当たり障りなく海月先輩との会話を収めたころ、ようやく収拾がついて、競技・大玉転がしが始まった。


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