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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・後半】
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天夢祭でベストカップルショーを見よう

きょとん、としている雹くんを前に、私は偉そうな口の利き方をしたわりには内心どきどきしながら彼の返事を待つ。

これが私が考えたゲーム補正を超えた補正への第一歩なのだ。

主人公が対象者の女友達になる。恋愛対象から外れる。友情エンドのない君恋ではんなことをする主人公はいないだろう。

ここで雹くんが頷けば、ゲーム補正に一勝できる。

「どうする?雹くん。恋愛なんて枠に縛られない方が面白いと思わない?それに私で慣れれば他の女の子も友達になれて、世界が広がるのよ?例えばそこにいる未羽とかね?」

雹くんは私をじっと紫の目で見つめてから、くすっと笑った。

おぉ、やっぱ笑うとかなりかっこいいな!

「…面白い、やっぱお前、すっげー女だな!お前みたいな女は、一生一緒に居られる方が面白い!」

げ。ミスったか?!

「一生一緒なら、友達だろ!」

「…そこは結婚とかじゃないの?」

「結婚は一人としかできねーだろ?恋愛とかは別れたらなかなか会えねーって言うし?お前をそこに置いとくのはもったいねー気がする。よし、相田雪、これからお前は俺のベストの女友達だ。」

雹くんがなかなかたんじゅ…いや自分の気持ちに素直なタイプで助かった!

雹くんの、自分の気持ちに正直な人柄を私は実は羨ましいと思っている。初めて会ったときから敵意を露わにし、自分が間違えたと思ったら素直に謝る。人と距離を置こうとして無関心を貫こうとした私とは正反対。ど真ん中正面からぶつかり合おうとするのが雹くんだ。そんな彼とせっかく知り合えたのだからこんなところでお別れするのはもったいないと思っていた。

…というわけだから決して彼をけなしているわけではないのです、はい。

「僕、分かったよ。雹が雪ちゃんのこと気に入った理由。」

「え、理由って何?」

「雪ちゃん、中身が男らしい。いや、男なのかも。」

斉くん、友達やめるぞ?

俊くんと斉くんがぼそぼそと会話している間に、鮫島くんが未羽に向かい合った。

「俺も見習わないと、だな。俺もかなり差別的な扱いをしてきたから…。えっと名前、なんて言うんだ?修学旅行ではそういえば訊いていなかったな。」

「ほへー?横田未羽だけど。」

なんとか見えないところで着替えさせることに成功したのか、未羽のセレクトに着替えて出てきた鮫島くんはさっきより断然見られる感じになっていた。

「今日のことは恩に着る。何か困ったら俺を頼ってくれ、未羽さん。」

「別に私は大したことしてないよー。ま、でも恩を売っておくにこしたことはないね。」

はっはーと笑う未羽。

あの子はしたたかな女だ。


結局、移動して、みんなで雹くん雨くんの特等席でミスコンショーを観た。大本命の斉くんが優勝、鮫島くんも大奮闘で5位入賞だった。



「さてお次は、ベストカップルショーだな。」

雹くんがなぜか彼らのために用意されていた特等席でふんぞり返って言う。

あなたそうやってると確かに皇帝っぽいよ。

「ゆき、ゆき、出てみようよ!」

秋斗が私の袖を引っ張って会場まで連れて行く。

「え、ちょっと、秋斗!私たちはカップルじゃない…!」

「新田、待てよ!」

秋斗も男の子だ。引っ張る力は強い。あっという間に出場者受付まで引きずられていくのを冬馬くんが止めてくれるまで止められなかった。

「相田は嫌がってるだろ?やめとけよ。」

「ゆき、ダメ?」

うるうると、大きな綺麗な瞳を潤ませる秋斗。

…うっ。だめ、だめよ。いつもこの目に負けちゃうんだ!危ない危ない。

それよか。いいことを思いついた。

「出場の方ですかー?」

「はい。」

「え?!ゆき、いいの?」

「相田?!」

「この二人が。」

とん、と二人の背中を押す。

「おお、男性同士の出場者です!」

大きなアナウンスに周りの女性から盛大な歓声が上がっている。

腐ったおねーさま方だろう。

「ええええぇ?!ゆき?!どういうこと?」

「何してくれてるんだよ、相田?!覚えてろよ?」

騒ぐ二人は無視だ。あとがとっても怖いけど。ちょっとは仲良くしなさい。

観覧席に戻ると、会長とこめちゃんがいた。

「あれ、お二方は出ないんですか?」

「見てる方が面白そうだから見てようと思って〜!」

「上林くんと新田くんが出るんですか?」

「あの二人、自分たちがどれだけ仲良いか分かってないんですよ、だから証明してもらおうと思って。」

空石兄弟が驚いて会場を覗き込み、着替えた斉くんが身を乗り出して未羽の隣に並んで大笑いしている。

「いい!いいね、雪ちゃん!僕、マジ好きだわ!」


出場カップルは秋斗たちを入れて20組だ。

「さぁさぁ始まりました!天夢の伝統ベストカップルショー!今年は色んなカップルがご参加下さっていますね!みなさんベストカップルを目指して頑張ってくださーい!それではルールを説明しまぁす!これからお題を言いますので、お相手の方がなんて答えるか想像してもらって、紙にお答えください!合っていれば点数が入ります!出題は交代式!お互いの心を合わせて、レッツトラーイ!」

「とらぁーい!」

未羽が双眼鏡を構えてよだれを垂らす寸前の状態で二人を見ている。

こういう会場で見ると分かるが、二人はどのカップルよりも美しいカップルだ。

下の選手たちが紙に書く準備時間の間に雹くんが私を手招きする。

「なぁ。」

「何?雹くん。」

「雪さっき、言ったよな。『俺には』ドキドキしないって。」

「…言ったけど?」

「他のやつらにはちゃんとドキドキすんだな。つまり、あいつらには。」

雹くんはこういうところはアホじゃなくて嫌だ!

赤くなった私を見て雹くんはくくっと笑う。

「協力はしてやるよ、ダチだからな!」

「いや、いらない。私自身が自分の気持ちを持て余しているから。」

「ふぅーん。それは、分からないってことか?」

「そう。彼らを好きなのは間違いない。でもそれは恋愛的な意味にはまだ行っていない気がするし、でも実はもう恋愛的な意味で好きなのかも。分からない。」

「…でもよ。最終的には一人だろ?」

「そうよ。私は恋愛するなら…一人を選ぶことになるんだわ。」



下の準備が終わったようだ。

「お待たせしました!早速行きましょう!第1問!だだん!相手の嫌いなものは?好きなものは当然分かっている前提でさぁ、嫌いなものは分かるのか!?れっつとらーい!」

順々カップルたちが答えていく。もちろん、脱落カップルも既に2組出ている。

最初は冬馬くんが答えを言う方だ。つまり秋斗が予想する方。

「お答えをどうぞ!」

冬馬くんが回答する。

「お前。」

秋斗が面倒そうに紙をひっくり返す。

『俺。』

ピンポンピンポーン大正解。

「…つ、続いていきましょう!第2問!相手が一番欲しいものは?これは恋人なら鉄板で知っておくべきことです!さぁ、お答えをどうぞ!」

今度は冬馬くんが予想して秋斗が回答する方だ。

「相田雪に抱きつくこと。」

秋斗が紙をひっくり返す。

『ゆきに抱きつくこと。』

これは何か?私への羞恥プレイか?

「おおっと!これはどういうことでしょう?面白くなってきました!第3問!相手が一番喜ぶことは?」

秋斗が答える。

「口に出したくもない。」

「そう言わずに!」

「…好きな子と両想いになること。つまりゆきと。」

冬馬くんがひっくり返す。

『好きな子が自分を好きになってくれること。つまり』

それ以上見られない。

私は観客席で小さく縮こまって乗り出している未羽の足の傍で体育座りをした。

勘弁して。泣きたい。二人とも、完全に嫌がらせのつもりでやっている!

「ごめんなさい私が悪かった!」

「さすがー二人ともすっごいねぇ!息ぴったり!」

空石兄弟はにやにやこっちを見ているし、斉くんは腹筋が捩れるくらい笑っているらしく、這いつくばってひいひい言っている。

こんなものが散々4問続いて、決勝戦になった。

片や彼氏が彼女の髪をいじって抱きつかんばかりのラブラブそうなカップル。

片やお互い噛み付かんばかりににらみ合う虎と龍。

「最終問題!これは同時に言ってもらいます!今お互いが考えていることを当ててください!」

「えー恥ずかしいー。」「愛してるよ!」

「「俺らをBLだと思うな、馬鹿野郎!」」

息ぴったりな二人は当然優勝し、商品の夢の国ペアチケットをもらって

「んなもんいらない!」「勘弁してくれ…」

と同時に突っ返していた。

「あー楽しかった!…あんた、自分からネズミ取りの罠にハマりに行ったわね。」

「自己犠牲は人生につきものだよね…!これで二人がいがみ合わなければ私はそれで満足するよ…!」

未羽の呆れ顔が心に刺さったことだけは私は一生忘れないだろう。


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