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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・前半】
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体育祭を始めよう

体育祭編スタートです!

 5月末。快晴。

 体育祭は秋なんじゃないのと突っ込んだそこのあなた。

 ここの文化祭は結構大規模だ。それと1年合宿なる修学旅行に似たものが秋にあるせいで、体育祭までやっていると秋は授業がほとんどできなくなる。そのため、体育祭が春にあるのだ。

 この体育祭は、君恋高校に入って一番最初にある大きな行事で、そしてイベントとしても盛りだくさん、と未羽が言っていた。

 1学年600人、総勢1800人で参加する体育祭は10の色に分かれて戦う。

 ゲームの攻略対象者を見るとこんな感じになっている。

 赤:東堂先輩

 紫:海月先輩

 黄:秋斗

 青:上林くん

 夢城さん・木本さんは海月先輩と同じ紫組。ここで、図書館で海月俊くんとつながりがないことによるイベントなし状態を解消するゲーム補正が働いたんだろう、というのが未羽の見立て。

 どうでもいいが、これは各キャラのイメージ色でもあるらしい。


 未羽は秋斗と同じ黄色組。それから私は、というと。


「ひゃっはー!すんばらしい!体育祭というのは良き行事だね!!」

「テンション高いね、雪さん。雪さんって運動好きなの?」

「そこそこって感じ?なんで?」

「なんか、イメージ変わるはしゃぎ具合だったから」


 海月俊くんと一緒の白組。つまり、攻略対象者、主人公、サポートキャラと全く違うグループになっている。これはついにゲームが完全に私を悪役から降ろした、ということじゃないだろうか!?


「俊くんは、運動嫌い?」

「僕は得意じゃないかな」


 そうだろうね。図書委員に茶道部所属のインドア派の彼が運動をしているって感じはしない。


「今日は頑張ろうね」

「うん!」

「なんでそんなに仲良さげなの?」


 私と俊くんの間にぬっと入ってきたのは、秋斗だ。顔が剣呑です。イケメンがすごむと怖いね。


「あれだよね、君、茶道部の」

海月俊(うみつきしゅん)です。よろしく、新田秋斗くん」


 にこやかに俊くんが手を差し出す。


「ゆき、こいつと知り合いだったの?」

「こいつとか言わない。元々図書室で勉強してた時からの知り合いだよ」


 そう言うと、秋斗が眉間に皺を寄せてぷい、と顔を逸らす。

 握手しようと手を差し出した俊くんが困ってる。


「こら、秋斗、仲良くしなよ、クラスメートで、しかも同じ部員なんだしさ」

「ふん!お前なんかに絶対負けないからな!」


 秋斗は私の言葉を無視して行ってしまった。


「あれ、僕、嫌われるようなことしたかな……」


 俊くん、浮いた手をそろそろと引っ込めながら落ち込みぎみに言った。あなたの鈍さは癒しです。



 午前の部は何事もなく終わった。私の種目は2つとも午前の部だったから、あとはダンスだけだ。結果?


「相田さん、すごく足速いんだね……」


 俊くんとお弁当を食べていると秋斗がどこからともなくやってきて、それから同じチームの未羽も一緒にやってきた。茶道部つながりってことで大丈夫だろうけど、『体育着ジャージの新田くんをじっくり見るチャンスだからねっ(・∀・)』ラインに表示されたのは腐った理由だった。


 私は100メートル走で男子をぶっちぎり1位。同じく100メートル走に出ていた秋斗も別のレーンで1位になっていた。その時の女子の黄色い声が私の活躍を隠してくれたからよしとしよう。目立つつもりはないのだ。

 1000メートル走では2番手として最下位状態から3人抜いた。チーム自体は5位。まずまずの結果だろう。最終的には赤組から出ていたアンカーの東堂先輩と青組から出ていたアンカー上林くんの勝負となり、東堂先輩が1位になった。この時は競技場が割れんばかりの歓声に包まれた。未羽はそれぞれのスチルを生で見られてほっくほくらしい。


「そりゃそうだよ、ゆきは昔からすっげー足速かったんだから。小学校でも中学でもリレー選手だったし。高校男子と争って勝てるとは思ってなかったけど!」

「ダンスがあれじゃなけりゃ完璧なのにね……」


 ぼそっと呟いた未羽の頭をはたいておく。

 人には得手不得手というものがあるんだ。



「相田さ―――ん」


 走ってくる様子が怪しすぎるジャージの担任。

 あ、こけた。


「先生っ大丈夫ですか?」


 周りの女子が助けられ、「らいじょうぶ」と答える先生。

 あんなにドジでもさすがは攻略対象者。女子生徒にはとても人気がある。ドジで抜けてるところが可愛いと評判だ。

 先生はこっちに来ると、はぁはぁと息をつく。


「ふぁんふぇすか?(なんですか?)」


 口に入っているから揚げをもぎゅもぎゅしながら訊く。

 いい子は食べながら話しちゃだめだよ!


「実はですね、この暑さで委員に熱中症患者が出てしまって。実行委員の人出が足りないんですよ。相田さん、クラス委員として補充してもらえませんか?」

「保健委員の人に……」

「出払ってます」

「私はお弁当で忙しいので無理です」

「そんなぁ……相田さん、競技終わったんでしょう?」

「見てたんですか、せんせー?」


 訊いたのは未羽だ。


「ええ。とても速かったので。クラスのみんなの活躍は全部見てますよー写真もいっぱい撮ってますから」


 にっこりほほ笑む先生。土ぼこりで汚れてなければ満点でした。


「先生、後で俺にください!ゆきの完走シーンを!!」

「いいですよー。でも仕事がいっぱいで…なかなか現像できないかもしれないです……」

「ゆき、手伝ってあげようよ」

「えー」

「雪さん、手伝ってあげたらどうかな?」


 良識派・俊くんの言葉が耳に痛い。


「お、お弁当を食べ終わったら……」

「じゃあ、食べ終わったらテントの方に来てくださいね」


 俊くんに負けた。


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