Godfather Badboy
「彼は未来で君を殺すよ。」
その男は予言した。
「そう遠くない未来だ。それでも君は彼を愛せる?彼に、愛を誓える?全能の神の前で。」
-----過去が無くてもいい。未来なんか気にしない。
私は籠の中に閉じ込められている。
鳥かごを人間用に大きくしたような籠で、一番上に羽根が付いている。それが籠ごと私を空中に浮かばせていた。
羽根の羽ばたきで、籠はゆらゆら揺られている。
どうしてここにいるのか分からない。
「そぉもいかなくってさぁ。一応これ、仕事なのよ、俺の。」
目の無い男は口を笑みの形に歪めて、面倒臭そうに言った。
男には足枷がはめられていて、私から見れば自由を奪われているように見えるのに、彼は長すぎる前髪の下に隠れているであろうその両目をきらめかせて主張した。
「これは、自由の証なの。」
-----意味分かんない。どうでもいいから早くここから出してよ。飛んで帰るわ。
「飛ぶのには足を切り落とす覚悟が必要なんだよ。」
私が閉じ込められている大きな籠の錠をもてあそびながら、男はあごで上空を指した。
私は空を見上げた。
恐ろしく水色で雲の無い空には、美しい、乾いた微笑を浮かべた白い子供たちが大勢飛び回っていた。
よく見ると、彼らには足が無かった。
-----あれは、天使さまなの?
「そうねぇ、『人工天使』ってこの辺では呼ばれてるけど。」
-----人工天使。
「下では『点死』って愛称らしいけど。
」
-----目が白いわ。
「あぁ、目は見ない方がいーよ、目が合っちゃうとせがまれるから。」
-----何を?
「足だよ。」
むしりとられちゃうよ♪
男は口の端を少し引き上げて、笑みの形を造った。
私はゾッとして、慌てて視線を男に戻した。
-----わたしに何をしろって言うの。動けなければ何も出来ないのに。
籠は一畳程の広さしか無く、3日も居れば完全に気の触れる自身が私にはあった。
「動かなくても出来る仕事だよ。」
男は私を見据えた。
「ね、あれ見てよ。」
白い子供たちの飛び回るもっと上空に光る存在があった。
-----お月さま。
「あれをさぁ、守って欲しいんだ、君に。」
-----月を、守る?何から?
「ね、君には彼を許すための時間が必要だろ?」
-----・・・・・・
「いい機会でしょ。」
男はたたみかけるように言った。
私には、選択権は無かった。
何故なら、私は籠の中で、男は鍵を持っているから。
「君は、殺されるために生まれていける?」
-----わたしは、彼の全てを許すことができる。でも、
私はため息をついた。
-----でも、そうね、確かに生まれていくのには体力も、それに伴う時間も必要よね。
私は月を見上げた。その時全てが判った。
-----例え、生まれる前に死ぬのだとしても。
「まさか!そこまで言ってないよ。」
男は無感情に笑った。




