カラオケ☆レボリューション
とある日の金曜日……
「ねぇねぇ!今度三人で、駅前のカラオケに行かない?」
千夏からのおさそいがあった。
千夏曰く三人とは、私、千夏、あと、優華のことらしい。
いつの間に彼女らが面識を持ったのかは知らないが、共通の友人関係だったのが、三人とも友人という関係にスキルアップしたと考えていい。
「じゃあ、今週末、駅前のカラオケ店に集合ね!ついでにご飯も食べよう?」
「うん、わかった。じゃあ正午くらいでいいかな?」
と、割と簡単に約束が決定した。
そして瞬く間に日曜日に―――
「ふわぁ。珍しく九時に起きたぁ…」
休日は常に十一時とかに起き、朝食と昼食が一緒になってしまう。
だが、今日はそれではダメなのだ。
(友達とカラオケかぁ……)
友人関係がことごとく狭い私は、友人も片手で数えられるくらいしかいない。
というか、中学生まで優華しか友達はできなかった。
そのため、カラオケとかショッピングとかもあまり経験してない。
「だって、優華、あまりそういうところに行きたがらないんだもん」
優華はなんというか、クール系だ。
何でも一人でてきぱきとこなす。
女子の何人かは、彼女に憧れを持っているとも聞いた。
そういった感じの彼女は、あまり友達と馴れ馴れして歩くのをあまり好まない。
だから、必然と私もそんな感じになる。
「ま、今日は優華も誘ったし、楽しみますか〜」
ちなみに彼女を誘ったときに彼女が言った言葉は、『まぁいいんじゃない?楽しんできなよ。……って、私もその中に入ってるの?』って感じ。
嫌がってはいないけど、行きたい行きたいという感じではなかった。
身支度をし始め、わずか三十分。
まだ正午には時間もあるし、昼食をとるには早すぎるような微妙な時間。
そんなときに、なぜか電話が鳴る。
(うおっ、電話が鳴るなんて珍しい)
少し驚くと共に、電話に出る。
千夏からだ。
『ねぇ。今どこにいるの!?』
「へっ。家、だけど……?」
まだ出発するまでに一時間は暇があるだろう。
しかし、彼女が言ったのは、驚きの言葉だった。
『いや〜。あまりにも楽しみすぎて。もう駅前にいるんだよね、私』
「えっ」
一時間以上も前なのに。
いったいどれだけ行きたがってるんだ、彼女。
でも、私だけでなく、優華にも聞かなくちゃいけないのではないだろうか。
「優華にも聞かないといけないし。とにかく優華に一回連絡しt」
『優華とも、そこでばったり会っちゃってさ〜』
『……春香ぁ〜。まだ〜?』
「ってめぇ」
あんなクールに「楽しんで行ってきなよ」とか言いながら、自分もすごく楽しみだったようだ。
「……わかった。とにかく行くよ。できるだけ早く」
『うん。待ってるから〜』
とにかく、優華のイメージが、私の中で少し変わってしまったのは、仕方の無いことだと思う。
「おまたせ」
「もう少し早く来れなかったの?」
「む、無理言わないでよ。はぁ……」
結構全速力で、私は駅まで走った。
そのため荒くなった息を整え、汗を拭う。
「優華、あんた割と楽しみにしてたのね。『楽しんできな〜』とか言いながら」
ちょっと嫌みを込めて言う。
文句を言った罰だ。
しかし、優華から帰ってきた言葉は、予想したものではない。
「……一応カラオケの場所とか調べて。ついでに買い物とかもしたかったんだけど、途中で千夏に会ったから」
「買い物くらい、カラオケ終わった後にでも一緒に行けばいいのに」
買い物くらいなら、私も千夏も、別に嫌がらずに付き合うのに。
「……わざわざ他人引き連れて、私の都合のためにいろんなところに行くなんて、申し訳ないし」
「…………なるほど」
そう言われてみれば、優華も私と同じく、馴れ馴れしない主義なことを思い出した。
彼女が買い物したかったのだから仕方ないね。
「ま。ようやく集まったんだから、カラオケ行こう!」
「うん、そうだね」
三人で、カラオケ店に向かった。
手続きは千夏が全部行っていた。
彼女は、このカラオケ店の会員だったらしい。
何やら時間決めだの、機種決めなどをして、使う部屋を決めていた。
カラオケなんて、来るのは初めてだから、勝手が分からない。
「さ、行こう。405号室だって!フリードリンクにしたから、好きに飲んでいいよ」
「ありがとう」
私たちの部屋、405号室の場所は、トイレやドリンクバーのすぐそばだった。
「いい場所取れたね。じゃ、曲入れようよ」
「……この機械使えばいいの?」
機械にタッチして、曲名を選択。
あいうえお順の画面が出る。
「何の曲にすればいい…?」
「なんでもいいよ。好きな曲入れなよ」
要領が分かっている千夏は、私たちに先に曲を入れさせてくれるようだ。
「あっ、これにしよ」
私が選択したのは、よくいろんな場所でかかっている、有名曲。
『〜〜〜♪』
「上手いじゃん、春香ちゃん!」
「うん。いい感じだよ」
人前で歌ったことなんてなかったが、なんとか歌いきる。
「はぁぁ。緊張したぁぁ」
「よく頑張った、えらいぞー」
優華が言った。
上から目線な気がするのは、きっと気のせい、だと信じたい。
「……で、次は優華かな?」
「じゃ。私はこれで」
優華が選択したのは、80年代くらいに流行った名曲。
それも、かなり渋いやつを選択した。
『〜〜〜〜〜♪♪』
渋い歌声だ。
でも、正直言って上手い。
「すごいよ。優華」
「そう?ありがとう」
「じゃ、次、私入れていい?」
次に曲を決めたのは千夏。
千夏は何も迷わずに、とある曲を選択した。
『♪♪♪―――』
「「うわ、うまっ」」
優華と私、はもって全く同じ反応をしてしまった。
普段の歌い手として歌っているような、所謂アニメ声ではなく、ガチの歌手のような歌い方だった。
「これ、メカボの曲だ」
「ふぅん、メカボってこういうやつなんだ…」
流れる曲は、メカボの中でもかなり有名な部類に入る曲だ。
彼女はその曲を、実に楽しそうに歌っていた。
「やっぱ千夏ちゃんは、さすが歌い手っていうだけのことはあるよね。上手い!」
「へへへっ。そんなことないよ」
千夏が照れたように笑う。
「よぉし。じゃ、もっともっと、曲入れちゃおう!」
三人ともが、夢中になって曲を入れ、歌った。
「そろそろフリータイムの時間もいっぱいになるから、引き上げようか」
「うん。もうめいっぱい歌ったし。楽しかった」
歌ってみて知ったのが、歌うって意外にも体力を使うこと。
何時間も歌い続けた私は、すでに疲れはてていた。
「…また今度来ようね」
「うん。構わないわ」
「私もいいよ」
優華も私も、とても充実した時間だったと、満足げだった―――――