[ラン、ラン、ラン]
僕は、高校生になった。中学校の頃はあまり勉強なんてしなかった。もっぱら、ゲーム、漫画、ゲーム、アニメだった。特にアニメは夕方の6時頃からやるヤツが好きで、毎日毎日、その時間までには部活を終わらせて帰っていた。中学生とはそんなものだ。そもそも、私の場合、中学と自宅との距離が徒歩10分圏内という恵まれすぎた立地にすんでいたため、行動範囲が極端に狭かった。そのため、感受性という部分においては、このアニメやらゲーム、そして漫画などが私の全てだったような気がする。部活動はみんながやっていたからやっただけだとも言える。
まぁ、よくもまぁ、こんなクソ野郎だったのに公立の高校に受かったものだと思った。僕の一家はそれはそれは、現在時点においては家計が火の車だと思われる。僕は3兄弟の一番したであった。一番上に姉、その下に兄が居て、さらに下が僕だった。姉は、よくもわからない見栄を張っていた。この国で一番頭のいい大学に入ると、身の丈を考えないわけのわからないことを言って、現在一浪中である。故に、馬鹿みたいに塾代を消費している。そして、二番目も大学受験を控えた高校三年生であり塾に通い始めたばかり。つまり、僕が高校受験をするための費用など、我が家からでるはずもなく、親から「あんたなら公立に行けるから塾とか行かせないから」 と言われ、僕は塾代をケチられ、絶体絶命だった。
しかし、世間の波とも言うべき、少子化の存在によって私は救われた。受験者数がそもそも少なかったため、高校には願書を提出するだけで入れたのだ。もちろん、形式的には筆記の試験を受けたが、合格ラインと認められたのだろう。私は、無事高校に入れたのである。運が良い。
さて、中学校の思い出を振り返るのはこれにて終了。僕は今から高校へと自転車を乗り、走っている。僕の高校は、家から自転車で20分の所にあった。丁度家から一番近いであろう電車の駅の近くの高校である。バス停が高校の目の前にあるため、高校名がバス停の名称に使用されているのが、その高校の唯一の自慢だったかもしれない。部活動においては、有名な部活動は一つもない。しかし、なぜだが大学の進学率はよく、それなりの名門大学への進学者を排出する謎の高校であった。たぶん、それはこの高校の特殊性からくるものだろう。なぜならば、この高校は商業高校だったからだ。
僕は、初日から正直遅刻しそうであった。登校初日の緊張感からか、昨日の夜はほとんど眠れなかった。我ながらなかなかの緊張人間であると思った。ようやく眠れた! とはしゃいだのは良かったが、あまりにも遅かったため今度は起きるのが遅れてしまった。八時半には学校に行かなければならないのに、現在の時刻八時十分であった。目を覚ましたのが、である。
「お母さん!なんで起こしてくれなかったの!」
僕は、怒鳴った。
「何度も起こしたわよ!私があなたのベットに添い寝して起こしてやろうとしてもあんた、私を抱き枕代わりに使おうとしたから無理だと思ったのよ!」
普段の僕ならば、あまりの気持ち悪さに起きているはずなのだが、それすらも気づかないほどの熟睡だったとは。いや、丁度睡眠が深い時だったのかもしれない。
僕は、ウダウダとしている暇はないと思い、おろしたての制服とワイシャツを着た。商業高校と言う昔からある高校からなのか、制服は学ランだった。ネクタイを締めなくて良いのが幸いである。
「いってきます!」
僕は、これまた買い立ての自転車のキーを外して、僕は新品の愛車に跨がり高校へと急いだ。
僕が高校についた瞬間チャイムが鳴った。
「はわわわわ」
我ながら愉快な声を出しているつもりであったが、内心はかなり焦っていた。そもそも、登校初日から遅刻してくる猛者は僕くらいだと思った。そりゃ、学校に慣れてきたら、その慣れから来る何かによって遅刻癖がついてしまうこともあろう。それよりも、まず初めに登校初日から遅刻だ。これは、周りからの印象も相当悪いよな気がした。僕は、下駄箱に貼られたクラス分け一覧を見て、自分のクラスを確認した。
「えっと、一の三か」
五クラスある内の三組であった。
僕は慌てて走り、教室へと向かった。階段を忍者の如く素早く駆け上がり、教室までの直進を血の気たっぷりのサラブレッドの如く駆け抜けた。
「遅れてすいませんでした!」
教室中の生徒、および先生の視線を一気に集めることに僕は成功した。もちろん、望んでなどいない。しかし、生徒に関しても皆まだまだ中がよくないらしく、ざわめくことはあまりなかった。
「初日から遅刻とは。まぁいい。ええと君の席は……」
僕は名前を言うと、座席へと先生が案内してくれた。僕の高校デビューは、成功だったのだろうか。よくわからなかった。