[巨乳姉妹とリア充と私の激闘ジェンガジェンガ]
私は、よくわからない状況にいる。食堂のテーブルに座っており、目の前には、キリッとした表情の男。そして、まだまだ春とはいえ肌寒い4月。それにもかかわらず、ノースリーブのドレスっぽい服を着た女性2人が男の後ろに立っている。ちなみに、二人ともお乳がでかい。巨乳というやつであろう。
男は、年をとればとるほど、女性の見る位置が変わると言う。初めの頃はもちろん胸元をガン見するのだが、年が取るほど女性のお尻にいくというのだ。しかし、自慢ではないが、まだまだ私は若い者には負けじと、胸元ガン見お乳派なのである。むふふふ。
「まもるちゃんファイト!」
この合図で、後者の二人はジャンプをして、ぷるんぷるん。もう、私の集中力は削られて行く一方である。
話が、壮大にそれているような気がするのだが、それはご愛嬌だ。私は、今、目の前の男とジェンガ対決を今か今かと待っている状況にある。始まらない理由は、目の前にいるマモルちゃんのコンセントレーションが高まっていないからだと言う。その、当の本人はどこかよくわからない場所に視点をおいてなにか思い耽っているようなのである。
いい加減早く始めて欲しいものである。私も意外と暇ではないのだ。わけのわからないメールが届き、これが噂の巨悪さんでなかったら、私はすぐに帰ってお家で読みかけの小説でも読んでいたかったのだ。こんな、わけのわからない、世間で言うリア充という部類に属するような人間とは一秒も関わっていたくない。終わったら、なんとか後ろのとりまきの巨乳姉妹とのメールアドレスゥの交換でもさせてくれなければ、正直割にあわないと思うのは気のせいだろうか。
「よし、それでは、始めよう」
それは、いきなり始まった。私が、巨乳姉妹(そもそも、この二人が姉妹であるかどうかは定かではない。私が勝手にそう呼びやすいように名付けただけだ)にうつつをぬかしていた瞬間に始まった。
異様な雰囲気を、マモルちゃんは醸し出していた。積み木を一つ取る前に、はぁと息を鋭くはき、引き抜く瞬間に、かぁと鋭く声を発する。これが繰り返された。その方法のほうがむしろ取りづらいのではと、周囲の誰もが気づいていたような気がした。
そもそも、ジェンガとは何十枚かの積み木が積み重なってできたタワーを引き抜いて、その頂点に戻してタワーを上へ上へと増築していくゲームであり、倒した方が負けというシンプルなルールとなっている。面白いのが、全ての木が全て、同じ形をしてはいるが、微妙に力点が異なるのか、タワーにしたときに、軽い部分と重い部分が存在することのである。これは、奥が深くなる一員と私は缶んが得ている。
ちなみに、マモルちゃんは大学のジェンガサークルに所属しており、現在3年生で次期部長候補と言われる存在らしい。そんなどうでも良い情報は、この自分の両耳から自然と入ってきた。聞きたかったわけではない。彼の精神統一中に周りの誰かが親切ご丁寧に喋っていたのだ。ありがた迷惑である。
私も、慎重に慎重に積み木を引き抜いていった。引き抜こうとするたびに、目の前の巨乳姉妹が私を見ながら胸元を強調してくる。その度に私は、ハッとさせられる。これは罠だと。相手のハニートラップにひっかかるまいと、その度に心を整えた。
気がつくと、積み木タワーから異様なオーラが見えるようになってきた。これは、なんでなのかはわからないがピンク色のオーラが見えるのだ。きっと集中しすぎて見えてしまっているのであろう。最近ではテレビでよく、ちいさなおっさんがテレビの下にいたなどど、ひな壇に座る小賢しいアイドルとかが言っていたのを思い出した。つまり、その類いだろう。友達に、ジャンガがピンク色に見えたんだ! などと嬉しく方向久下としても、馬鹿にされることは目に見えていると思った。
さらに気がつくと、タワーの下位部分は、全て十字の形に綺麗になっていた。よくもまぁ、こんな風に積み上げたものだと正直私は感心していた。しかし、目の前にいる巨悪さんは、未だにはぁからのかぁに勤しんでおられ、あまり形は気にならないご様子だった。
私はというと、正直集中力の限界に近づいてきていた。積み木を取り出している右に関しても、なんだか感覚が鈍くなってきており、このままでは私の敗北は時間の問題かもしれないと思われた。私は、逆転の糸口をなんとか探していた。
私が、積み木を頂点に載せた瞬間だった。タワー全体が少々グラッと揺れた。
「ふ。いよいよ、クライマックスは近いということか」
マモルちゃんがキザっぽいセリフを吐いた。
「きゃぁぁぁーマモルちゃん負けないでー」
負けじと、巨乳姉妹はマモルちゃんに声援を送る。マモルちゃんは深呼吸をした。
「おう。まかせとけ」
キザっぽく返していた。
そもそも、私は思ったのだが、この勝負に勝ったとして私にはメリットはある。あの変人との約束に一歩近づくからだ。しかし、このリア充が勝ったとしてなんのメリットがあるのか。私は何も賭けていないからだ。しかし、今となってはどうでもいい。今は目の前の勝負に全力を捧ぐだけである。
私が、頂点に積み木を置くとグラッとまた揺れた。そろそろ限界に近づいているようだった。しかし、なんとか私の番では、タワーさんは思いとどまってくれたようだった。目の前で倒れてもらっては困ると念じたお陰かもしれなかった。
「ぐぬぬぬ」
マモルちゃんは、いよいよまずいと悟ったようだった。これが最後の一手になるとかブツブツとぼやいていた。
気がつけば、周りには大勢のギャラリーがつめかけていた。ジェンガを大学の食堂でやるという珍しい行為に、少々魅了されているのかもしれない。これで、この大学でジェンガ人口が増えるのならば、ジェンガサークルにとっても悪い話ではないのかもしれない。感謝されてもいいだろう。
「くらえ!ゴールド、、、ハンドュォォォオオオオオオ!!」
よくわからない言葉をいきなり発し、彼は手を天に掲げた。すると、右手の人差し指が光り輝いた。もう、なにがなんだかよくわからなかった。積み木に手が触れた瞬間だった。
「リバァァァァァススススゥゥゥゥ!!」
マモルちゃんは、引き抜こうとしたが、それは失敗に終わった。無惨にもタワーは崩れていった。
この瞬間、私の勝ちは確定した。私がなぜ勝てたのかはわからない。そもそも、ジェンガとは練習すればするほど上達するものなのだろうか。ジェンガを極めれば、彼のように巨乳姉妹を後ろにはべらせながら、ジェンガをすることができるのだろうか。ジェンガマイスターとはなんなのか。ああ、そういえばお父さんの必殺技の名前もこんな感じだったか。私は、勝った瞬間、これのことが走馬灯のように頭を駆け巡ったのだった。
「おめでとう、君の勝ちだ」
マモルちゃんは、私に握手をもとめてきたので、私はそれに応じた。
「いや、マグレです」
私は、謙遜した。
「ふっ。強がるなよ」
なんだかイラッとした。
「片付けは、俺たちがする。君は、何もしなくていいからな。それじゃな」
マモルちゃんは、俺に手を振り、帰れと合図をしていた。
「あ」
「なんだ。なにかようか」
「その、、後ろの女性の人たちの連絡先が知りたいなーなんて思いまして」
私は、下心を見せた。
「え、うっそーキモーい。あんた、ジェンガしながら、私たちの胸見てたでしょ。キモいキモい。マモルちゃん、はやく行こー」
私は、試合に勝って勝負に負けたような気分になったのだった。
私は、家につくと、すぐさま万年床に滑り込んだ。なんだか、体がとても重かったからだ。すぐに、深い眠りに落ちてしまった。
『おい』
誰かに呼ばれたような気がした。
『おーい。こっちこっち』
私は、目を開けたが、どうやらまだ夢の中のようだ。しかし、次の瞬間、私は激しい頭痛に教われ、現実世界へと戻ったのだった。
「うわぁ!」
私は、万年床を飛び起きた。しかし、別になにも変わった所はなかった。強いていえば、私が酷い寝汗をかいていたくらいだった。なんの夢だったのだろうか。私は、乾いたのどを潤すため、冷蔵庫に言った。
「うわ、何も無いや」
私は、なにもないことに愕然としたが、甘いオレンジジュースが飲みたかったので、近くのコンビニに買いに行くことにしたのであった。