[ばばぁ、ホットオレンジジュースを飲む]
私は、目が覚めると白い天井が見えた。身に覚えのない天井だ。私が、いつも見ている天井は、亀裂がはいりまくりでたまに天井から破片がふってくるような不思議な天井ばかりであったはずだ。
ここは、どこだろうか。
私は、さっきまでどこに居たのだろうか。記憶が大変曖昧であった。
そして、よくよく自分を観察してみると、両手を後ろにして手錠でつながれている。両腕が動かない。いや、しかしこれはおかしい。私は、死んでいるのだ。作者すら忘れていた設定だけれど、私は殺されている。なかなか理不尽な感じに。天狗の何かに。
死んでいる人間に手錠などかけられるわけがない。私は物体に触れることはできないのだから。
私は、天井を見るのをやめて辺りを見回した。何も無い殺風景な部屋であることはわかった。正方形の形に、薄いカーキの壁。しかし、天井は真っ白。なんとも奇妙な部屋だ。所々壁が黒いシミで汚れているのもまた恐ろしい。
コツコツと遠いほうから、音が聞こえてきた。革靴かなにかが地面を弾く音だと私は思った。そうか。誰か来るのか。
すると、目の前の薄いカーキの壁の一部がせり出して、右方向にずれた。
「あら、お目覚めかしら」
驚いたことに、水筒を方から斜めにぶら下げた中学生くらいの女の子が現れたのだ。
「なに。ずいぶんと驚いた顔ね」
それは、そうだ。驚くのも無理はない。いきなり、女の子が現れれば、誰だってビックリする。
「あ、そうそう。あたし、もうそろそろ400歳くらいだから。勘違いしないでね」
さいですか……。
「まぁ、いいわ。ところで、貴方のお仲間ってこれであってるかしら」
すると、頭に麻袋をかぶって、両手を背中に回されて手錠をかけられている人間が現れたのだ。よく見れば、スーツにネクタイというどっかで見たことのあるような出で立ちであった。
その麻袋の人間は、うーうーと唸っていた。たぶん、麻袋の下の口には猿轡を仕込まれていると思われる。そして、時折体を上下に揺らして、俺を自由にしろとばかりなアピールをしていた。
「おだまり!」
そういって、ハイヒールのヒールでその男の背中を踏みつけたのだった。若干のうらやましさを私は感じた。
「あなたに、ひとつ聞きたいことがあるの。この女を知っているかしら」
そういうと、彼女は私に写真を見せてきた。メガネをかけたカーディガンがよく似合う可憐な少女の写真であった。
「全く知らない」
全く知らなかった。
「しらを切るつもりね?」
いや、全く知らないのだ。
「わかったわ。嫌でも口を割らしてやるわ」
そういうと、彼女は麻袋の男の頭を持った。そして、どこからともなく、ナイフを取り出して喉元に突きつけた。
「言わないと、この人死んじゃうけどいいの?」
いや、待て。私は思った。それは困るのだけれど本当に知らないのだ。わたし、首を横に激しく振った。
「ふーん。そう。じゃ、仕方ないわね」
グサッ。
「あー信じらんない」
そう言って彼女は、水筒の蓋をコップ代わりに水筒の中身を飲み始めた。
「やっぱ、仕事の後はホットオレンジジュースに限るわね!」
私の目の前には、血の海の真ん中に倒れた麻袋の男と、水筒を飲む幼いばばぁが居た。ああ、そうか。この部屋の黒ずみとは血だったのか。ここは、拷問部屋か。




