[樹海カフェ・ノルウェイの穴]
男たち及び団地妻は部屋にある机の前に集合した。
「で、その新情報というのはなんだ」
サラリーマン風が鼻の息を荒くして聞いた。
「あら。お酒のほうが好きだったのでは?」
団地妻は嫌みったらしく、返事をした。すると、サラリーマン風は「すいません、すいません」と何度も心の籠っていない謝罪を団地妻に繰り返した。しかし、なぜか団地妻にはその謝罪が通じたらしく「わかりましたよ」と言って、話し始めた。私は、なんだかんだでこの二人は良いコンビなのかもしれないと思った。
「新情報と言うのは、どうやらあのノルウェイの穴という店は何軒もあるそうです」
「はい?」
男たちは、あっけに取られた様子だった。あの場所以外にもノルウェイの穴があるというのか。
「よくよく、調べてみたらあったんですよ。ホームページとかはなかったんですけど、電話帳を見てみたら結構載っていました。載っているだけども5件はありますね」
そういって、団地妻は私たちの前に電話帳を差し出した。私は、その電話帳を眺めたが確かに、ノルウェイの穴は5件存在していた。
「ということは、これはチェーン展開している店ということになりますか」
私は、団地妻に聞くと「そうね」と言った。
「でも、それとこれとどんな関係が。別に数件あったところでさっき行ったお店となんの関係もないでしょう」
「いえ、あります。その中に一つ別のお店がありますから」
「別のお店……?」
「本店だろ」
サラリーマン風が悩む私をしりめに、答えをパッと答えてしまった。たしかに、そうだ。5件のうち一件。本店と記載されたお店があった。
「本店であるということは、そのお店がノルウェイの穴の起源であることは間違いない。つまり、そこにその剣をブッさす場所があるかもしれねぇということだろう」
「そういうことね」
会話がなんとなく、盛り上がってきたのだが気がつけば時間は深夜を回っていた。寝なくては、と思ったのだが眠気は全くこない。しかし、なんとなく精神的には疲れていた。いや、正確には疲れてというものは感覚としてはない。本当に全てがなんとなくである。
「話が、盛り上がってきたんですけど、ちょっと休憩しましょうか。あ、私お酒が飲みたいです」
その後、お酒などを飲んでるうちに夜が明けた。自然の太陽の光がこの雲の上のにも降り注いだ。雲の上にある家だというのに太陽の光によっては燃えない家であることは、今更気がついた。どのような構造なのだろうか。私は、誰かに聞きたかったのだが、サラリーマン風は自分の部屋で小説を読みながらケラケラ笑っていた。団地妻にいたっては怪しい腰の動きをしながら自室の椅子に股がっていた。
私は、窓を見ながら思った。
「ああ、私はこれからどうなるのだろうか」と。
私たちは、朝食を取った。別にお腹が空いているわけではない。感覚として取る、この行為こそが生きている証なのかもしれないと、皆死んでから実感していた。日々適当にしてきた行為が、今となっては愛おしく思えるのだ。
「さて、それじゃあ行きますか」
サラリーマン風が出発の合図をした。
「待って、ポーチ忘れた」
相変わらず、団地妻はサラリーマン風の合図を乱した。しかし、サラリーマン風は、「おい」と突っ込みを入れたが、怒るようなことはしなかった。
準備が整い、私たちはノルウェイの穴本店へと行った。そのノルウェイの穴本店は、この国で一番大きい山の麓にある樹海の入り口近くにあるとの情報だった。現在居た雲の上の家からはどの地点も距離的には変わらない。飛ぶスピードも高速である。しかし、飛んでる最中はいつも通りかスローモーションに見えるから不思議だ。SF映画もビックリである。
私たちは、そんな高速飛行ののち目的の本店へとたどり着いた。本店の付近は大きな森で囲まれていた。しかし、本店はどうやらキャバクラではないらしい。どこから、どうみても喫茶店である。そのようなチェーン店は聞いたことがない。
「ここが、本当にあの店の本店なのか。雰囲気が違いすぎないか」
サラリーマン風は言った。一同賛同した。
そして、私たちが疑問視する暇も与えずに、その店の扉は開いたのだった。




