[森の中に木を隠す]
私たちは、かの有名な聖剣ランドスケープを手に入れることに成功した。成犬風景というなんだか親父ギャグポイのは置いておいて、これで二つのうちの一つが揃ったわけだ。今度は、ノルウェイの穴である。
「ところで、ノルウェイの穴とはどこにあるのですか」
私は、いの一番に発言をした。
「そりゃ、おめぇ……」
どうやら、サラリーマン風は具体的なことまで知らないらしかった。名前程度にしかしらないらしい。
「あたし、そんな名前のお店を知ってますよ」
お店ってあなた。聖剣をブッ刺すところが何か分からぬお店あるまい。
「お店って、ちなみにどんなお店なんですか」
「えっと……たしか、キャバクラですね」
私は、ずっこけた。それも盛大に。しかし、サラリーマン風は神妙な面持ちで団地妻を見ていた。
「それは、本当か?」
「ええ、たしかそうです」
「外れの可能性は高いな。しかし、行ってみる価値はあるんじゃないか」
いや、お前が行きたいだけだろ、と心の中で私は突っ込んだ。しかし、現状においてはその情報しかない。何もしないよりもまずは行動である。とりあえず、そのキャバクラとやらに行くことにした。
噂のキャバクラは大学から電車で二駅ほどの位置にあった。もちろんではあるが、電車など乗ってはいない。空を飛んでその場所まで来たのである。
「ありましたね」
そういって、団地妻は看板をさしていた。気のせいかサラリーマン風の鼻息が荒くなっている気がした。
「で、どうする」
「どうするってなにを。入れば良いじゃないですか」
私は言った。しかし、この時点において私はあることに気がついた。そうだ。このままでは誰もいないのにドアが開くというホラー現象が起きてしまう。それは、この店の人に迷惑だ。私は死んでいることを忘れていた。意外と、サラリーマン風はそういうところしっかりと覚えているようだった。案外、自分の欲求に身をまかせているものだと思っていたのだが。
「とりあえず、誰かが来るのを待ちましょうか」
そう、団地妻が言ってその場は収まった。
私たちは、誰かが店のドアを開けるまで店の前で待機することにした。その間に私は、二人に質問をしてみた。
「そういえば、お二方は何歳くらいなんですか」
少々気になっていた点だ。私は勝手に見た目から愛称をつけてしまったが。
「俺は、生きていれば今年で30だ」
「あたしは、生きていれば今年で26ですかね」
意外と団地妻が若い。若いのにその色気。生きていればそれはそれで、社会になんらかの明るい兆しが見えたかもしれないと思った。
「で、お前は」
私について話した。団地妻が「年下かぁ」と何やら意味深な発言をした。まさか、私はペロリと食べてしまおうという魂胆だったのか。団地妻という愛称はあながち間違ってはいなかったのだろうか。
私たちは、それから人が来るまでの間色々な話をした。学生時代の話、恋人の話、仕事の話。たわいもない会話をした。そのためか、やっぱり自分が死んだということを受け入れられない気がした。というか、死んだことが嘘のように思えたのだ。だから、この目の前の扉を開けたとしても、中にいるキャバクラのママが「いらっしゃい。あら、若い子ね。こういう店は初めてかしら」と、お色気ムンムンで話しかけてきてくれるのかもしれないと思った。開けようかと思った瞬間に、サラリーマン風に止められた。なにやってんだと。
本当に、私は生き返れるのだろうか。いや、今はそんなことよりもあの天狗人だ。奴を倒さないと気がすまない。
辺りはすっかり真っ暗になっていた。幾分肌寒いような気もしないでもないが、死んでしまった今はそんなことは全く感じなかった。しかし、いよいよその時はやってきた。従業員らしき人物がお店の扉をあけて入っていたのだ。これから出勤だろうか。
私たちは、後を追うようにして中に入っていった。




