[必殺技を思いついた時の作者の顔が見たい]
僕は、家に帰ってから自分の部屋に戻り、テレビを付けた。午後のワイドショーがやっていた。テレビでは、最近起こった殺人事件についてやっていた。容疑者の男は依然逃走中であると伝え、被害者親族の悲痛な会話をお涙頂戴形式で放送していた。淡々と流せば良いのにと僕は思った。
そして、勉強机として親が用意してくれたであろう物体の付属品たる椅子に僕は腰掛けた。クルクルと回転する不安定な椅子だった。いや、正確にはそういう仕様だろう。クルクル回って便利でしょと今にも椅子が喋りかけてくるのではないかとなんとなく思ってしまったが、声はかけてこなかった。そもそも僕的には、どうして回るのかよくわからない。後ろに何があるわけでもない。むしろ、不安定すぎて仕方ない。今は若いから良いが年を取ればきっと腰になにかくる。年を取りすぎる前にこの椅子を変えるべきかと思った。
その瞬間だった。僕は椅子から転げ落ちた。なんと。椅子からちょっとしたリアクションを得たのだった。ごめんなさい。とりあえず、しばらく捨てません。お付き合い致しますと心の中に誓ったのだった。
僕は、チャンネルを変えた。十八時になったから、アニメを見ようと思ったためだ。
今日は、某有名週間漫画誌でやっているアニメ化作品だった。この作品の特徴と言えば、刀でバッサバッサと敵を切り裂き、血まみれになった状態で決め台詞をいうことにある。必殺技なんて多彩だ。たかだか、刀を縦に振り下ろすだけなのに技名があるくらいなのだ。これなら、ちびっ子たちも真似できるという作者の心優しい配慮なのかもしれない。僕も、小学生の頃に見ていたらやっていたかもしれないなと思った。
そして、テレビを見ながら今日のことを改めて考えた。一応、高校に入ってから初めて出来た友達だ。いきなり彼の悩みを解決しないといけないとは、高校初日から波瀾万丈である。また、彼も彼でとんでもない欲を持っている。髪の毛ボサボサの黒ぶちメガネで根は暗そうに見えるのに、大した化け物を買っていたものだ。まさに、猫に小判。いや、違うか。虎の威を借る狐。いや、これも違う。
どうでもいい言葉を考えるのは辞めることにした。具体的な解決策だ。それを今考えるべきである。僕は、わりとこういう感じの話を考えるのは嫌いではない。昔から問題解決に関しては一定の自信があった。
まず、彼のその愛しの乙女を見つけることから始めないといけない。いや、乙女であるかどうかは正直微妙なところか。彼もまた彼だが、彼女もまた彼女で正直アレなところがあるからだ。
なんにせよ、その手段である。今でこそパソコンで名前を打ち込めば一瞬で出てくるに違いない。そうだ。それだ。どうしてそのことに気がつかなかった。とっても簡単な方法ではないか。それで簡単に出るじゃないか。僕は、自分のうちに秘めた才能に恐れた。これが、高校入学による化学変化であろうか。簡単なことを簡単に思いつく。シンプルイズアベスト。アは必要だろうか。
「天空流派双慈白剣!!」
アニメの主人公の必殺技がテレビの中で決まっていた。相手の敵は、真っ二つになり見るも無惨な姿となっていた。主人公は、お決まりのガッツポーズを決めてエンディングに入っていた。掃除しろ。僕は、誰かにそう言われた気がしたので机の周りを片付けることにしたのだった。
翌朝。僕は、彼が学校に来るのを待った。八時には学校についていた。八時に教室に居る人間など正直居なかった。昨日の遅刻の名誉挽回とばかりに早く来たのだ。しかし、よくよく考えてみると僕の名誉を知っている人間など高校初日からこの学校にはいない。中学からの同級生はこの高校に志願していないからだ。
しかし、彼は現れなかった。先生は、何も言わなかった。彼は、どうしてこなかったのだろうか。僕は、思い当たる節が見当たらなかった。高校生活二日目にして彼は学校を休んだ。僕は、最悪のケースが思い浮かんだ。彼は、もう学校にこないのではないかと……。




