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ランドスケープ  作者: 井上達也
私、飛翔篇
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[空飛ぶハンバーガー]

 僕は、高校入学初日にして、クラスメイトと学校近くのスーパーの中にあるハンバーガーチェーンにて食事をしている。このハンバーガーチェーンで思い出すのが、中学生の頃だ。僕は、何人かの友達とたびたび訪れては、スマイルくださいと言って店員さんを困らせていたのを思い出す。中学生の頃はそんな馬鹿げたことがなんだか、やたらと楽しかった。きっとその店員さんは高校生だったと思う。自分と一歳ほどしか離れていないのに、片や真面目に働き、片や相手を小馬鹿にしているこの現代社会。高校生になって初めて、自分の馬鹿らしさに気がついたのであった。

「おい。おーい」

 僕の目の前に座っている男が僕を呼んでいる。少々昔話にふけってしまった。

「ごめんごめん。そういや、君が注文したそのタコヤキバーガーって美味しいの?」

 目の前の男が口に詰め込んでいる物体について質問をしてみた。

「美味しくない。どうして、これが商品になっているのか正直理解に苦しむね」

「さいですか」

 なら、どうして食べている。ネーミングセンスからして絶対に美味しくなさそうだと推測しなかったのだろうか。

「ところでさ、どうして僕を呼んだんだい」

 僕としても、正直気になる点ではあった。どうして、彼から放課後のお茶に僕は誘われたのだろうか。たった、ホームルームの短い時間にちょっとした話をしただけなのに。特に、趣味が同じだったとかなかろうに。

「それだ。その話の続きがしたいんだ。どうだい、私と一緒に権力とやらを獲得してみないか?」

 いきなりか。そして、権力を獲得するとはなんだ。彼の話から察するに、部活動とか生徒会とかの類いの権力ではないようだが。

「待て待て。話が唐突すぎるよ。そもそも、その権力とやらはなんなんだい。どうして、君はそこまで権力に固執するんだ」

 僕がそういうと、彼は少々元気をなくしたようだった。表情が次第に暗くなっていくのが僕にはわかった。

「実は……」

 少々の間を置いて彼は喋り始めた。ことの成り行きとして簡潔に説明するならばこんな感じらしい。

 中学生の頃、好きで好きでたまらない女の子が居たらしい。そして、何回もの猛アタックの結果、なんとお付き合いをする中になることとなったのだと。そして、何回かの逢瀬を繰り返したのだが、ある時、彼は自分の中で押さえられない欲望に気がついてしまったらしい。彼女をめちゃめちゃにしたいと。中学生のくせに、いや中学生だからこそ破廉恥な考えが頭の中を駆け巡り覆い尽くした。そして、彼の脳みそはいよいよフリーズしたらしい。そして、再起動を試み成功すると、彼は彼女を押し倒そうとしたらしい。ビンタを一発くらい、失敗に終わったのはいうまでもないとのことだった。

 しかし、このことが原因で彼女との交際は終了した。そして、その去り際に言われた言葉が、「あなたみたいな中途半端な男にあたしの初めてはあげられない。あたしは、もっと権力にまみれた偉い人とが良いの。あんたみたいなチンケな男とは、公園デートまでだわ」とかなんとか言われたらしい。

 そして、彼は鼻の穴を大きくしてこういった。

「私は、彼女とよりを戻して、その続きがしたいのである。故に権力が欲しいのである」

 僕は、思った。いや、確信した。彼が、彼こそが真性の馬鹿であり、ただの変態であるということを。



 その後も、僕は彼の昔話を聞き続けた。あんなことからこんなことまで。中学生のくせにいろいろとおませなことをしてきたらしい。僕にない経験だった。その点に関しては素直に彼を尊敬することが出来た。

「時に、えっと……君はなんといったか」

 今更かい。そして、自己紹介も聞いていなかったのか。

「加藤新一っていうけど。まぁ、みんなからは大抵新一とか新ちゃんとかって呼ばれてるよ」

「大作くんか。良い名前だ」

「おい、聞いてなかったのか」

「大作、私が彼女とよりを戻すために良い方法はないだろうか。何でもする」

 彼の表情は真剣だった。

「うーん。しかし、彼女の居場所とか高校とか知ってるの?話はそれからだと思わないかな」

 僕が、そういうと彼はそういえばというような顔をしていた。どうやら、彼女の居場所は知らないらしい。高校は頭の良い高校に行ったということしか知らないらしい。なんという、欲深き男よ。本当に、彼女のことが好きなのか疑問である。

「まぁ、詳しい作戦とかは明日に考えよう。ほら、君の話を聞いてたらもうこんな時間だよ」

 僕は、店内にある時計を指差した。気がつけば午後3時を回っていた。午前授業だけだったとはいえ、なかなか話し込んでしまったようである。彼は、「しょうがない」と言って片付けを始めた。

「そういえば、君こそ名前はなんていうんだよ。自己紹介のときなんか適当だったじゃん」

 僕は、彼に聞き返してみた。



「名前?ああ。私の名前は……」


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