[物語を空想で書くから現実との齟齬が生じる]
僕は、高校に入学早々厄介な人物と顔見知りになってしまったのかもしれない。彼は、自己紹介にて自分の名前を名乗らず、仕舞いには自分は権力が欲しいと言い出した。これは、相当の頭が切れる人間なのか、それともただの馬鹿かのどちらかと言えよう。
「じゃあ、聞くけどその権力とやらはどうやって手に入れるのさ。部活動にでも入ればいいじゃん」
僕は、彼に聞いた。
「君は真性のアホか。部活動における権力を自分のものとするには3年になってからであろう。しかも、その部活動においてかなりの功績が認められなければならない」
「じゃあ、部活動でもつくればいいじゃん」
「そう言うと思ったよ。君のような漫画アニメ野郎ならね。だいたい、このご時世に新しい部活なんて早々誕生はしない。学校の予算は限られている。それなのに、わけのわからないバンドをやる部活とか、謎解きとか世界を救うとか、わけのわからん目的のために部活動の申請を認めるわけがないじゃないか。廃部寸前とか言うありえないシチュエーションもしかりだからな」
僕は、少々唸った。そういえば、僕は彼に漫画とかアニメが趣味だと言っただろうか。
「はいはい。わかったよ。じゃあ、生徒会にでも入れば良いんじゃない?それこそ、権力が集まる所だと思うけど」
「君は、進歩がないな。だから、それは漫画アニメの世界だといったばかりじゃないか。生徒会というものに君は所属したことがあるのか?私は、ある。中学校の頃にな。あんなものただの先生方のマリオネットに過ぎない。先生があれをやってこれをやってとあたかも権力を君たちにあげたという錯覚をさせるものだ。部活の予算割当てなんて、生徒にやらすわけがなかろう。新しい何か、例えば自動販売機を設置したいと、生徒会公約に掲げて当選したとしても、設置なんてさせてもらえない。結局あれはおままごとだ。時間の無駄にもほどがある」
どうして、こんなにも僕は怒られ、けなされているのだろうか。そもそも、彼が権力が欲しいと言ったから僕はそれらしいものをあげているにすぎないのだけれど。
「わかった、わかった。じゃあ君のいう権力とはなんだ。何かあるんでしょ。良いアイデアが」
この返しを初めからしておけば、僕の心は傷つかずに済んだのではないかと後悔した。
「ない」
即返答の一言だった。ない。彼はそう言ったのだ。
「ないの?」
僕は改めて聞き直した。
「ない。ないものはない。しかし、私は権力が欲しいのだ」
僕は、飽きれてものも言えなかった。僕があきれていると、先生が戻ってきた。生徒たちは席に着き始めた。
帰りのホームルームが終わり、僕は後ろの席の変な彼にまた明日と言って僕はそそくさと教室をでた。僕は、階段をおり、下駄箱に向かって歩いた。そして、下駄箱の前で一人の生徒にぶつかった。
「ごめんなさい」
僕は、言った。
「いやいや。大丈夫。ああ、新入生か。じゃ、俺は急ぐので」
そういって、彼は行ってしまった。その後、彼の後ろ姿を見ているとなにやら女子生徒と会話していた。ピンク色の少々大きめのカーディガンに、ウェリントン型のメガネをかけたその女性は少々僕の中でのタイプに入る容姿だった。これが、理想の学園生活か。うらやましいと思ったのだった。
僕は、ローファに履き替えて校門から出ようとしたら、後ろから声をかけてくる人が居た。
「おーい」
僕が後ろを振り返るとそこには見覚えのあるボサボサ黒ぶちメガネのイカレタ男が立っていた。
「お茶でもしないか」
彼は、言った。
「嫌だ」
僕は、言った。
「君に拒否権はない」
彼は、言った。
「ある」
僕は、言った。
「ない」
彼は、言った。
「ある」
僕は、言った。
「ない」
彼は、言った。
このままでは、オウム返しの如く結論だけが変わらないまま平行線をたどると僕は思い、僕は折れることにした。
「わかったよ。じゃあ、行こう。その辺のマックで良いでしょ」
僕は、提案した。
「いいだろう」
なぜか、彼の態度は偉そうだった。




