作戦?
「よし、あと少しで森を抜ける。渓谷が右手に見えるはずなんだけど」
ルミナの視線の先は、木々の間から光が溢れている。どうやら、あそこが森の終わりのようだ。
「ちょっとしたハプニングも遭ったけど、結果オーライよね。新しく地図買わなきゃなー」
急ぎ足で行きつつ、暢気そうにそう言う。
「ゴブッ?」
「へっ?」
ルミナの間の抜けた声。
「ゴブゴブッ?」
薄汚れた布で顔を隠している子供の身長程度の何か。それが、木々の間から現れたのだ。布の間から皮膚の色が、赤褐色だと分かる。
ルミナは剣を抜く。
「ゴブゴブって、もしかしてゴブリン?」
首をかしげるルミナ。
ゴブリンとは、人間より低い背丈に短い手足、大きな目と鼻を持つ。肌の色は赤褐色。よく村里に現れて、悪事を働く典型的な魔物。
ルミナは慌てて、辺りを見渡す。
性格はとても臆病なため、一体だけでいるのは珍しい。ほとんどの場合、五、六体程度で動いている。
しかし、周りには目の前の一体以外に気配を感じられない。
「珍しいけど、ちょっと安心。一体だけならなんも問題にはならないし」
胸を撫で下ろす。しかし、慌てるのはゴブリンの方。
「ゴッブッー!」
とゴブリンは思いっきり叫んだのだ。
「も、もしかして、仲間が来る感じ? 来る前に逃げなきゃ」
ルミナは慌ててその場を離れようとする。
「この森、オーガーもいたしちょっと危ない」
基本的にオーガーの住処は山岳地帯。こんな平野に近い森にいること自体珍しい。
「もしかして、魔物の群れが近くにいるの……なっ!?」
サッと攻撃をかわす。大きな棍棒がさっきまでルミナがいた場所に振ってきた。
「またオーガー!?」
筋骨隆々。大人の二倍以上もある大きさの魔物。オーガーがそこにいた。さっき倒したオーガーの仲間のように見える。
「私の推測が当たったかも」
適度に距離を離す。ルミナは周りに他の気配がないか探る。
「ゴブリンが近づいてきてる……」
オーガーに背を向けルミナは逃げる。
「何体いるかわかんないし、倒して体力がなくなるのは得策じゃない。早く、この森を出たほうがいいけど」
ルミナはここで悩む。
魔物がいるのが森の中だった場合、いち早くこの森を出たほうがいい。しかし、魔物が外からこの森にやってきている場合、森を出るのは得策じゃない。ここは、平野。森を出た瞬間、身を隠す場所がないのだ。すぐに、魔物に見つかってしまう。
「でも、ここにいても、ジリ貧になるはこっち。時間が経つにつれて不利。なら、この森を出る!」
決意を固め、ルミナは魔物の気配を探る。辺りを散策するのはゴブリン一行。
ルミナはそこに目をつける。ゴブリン一行を軽傷程度に攻撃し、自分は森の外へ出る。しかし、ゴブリンたちは森の中でルミナを探し続ける。
「この作戦で行きましょう」
ルミナは剣を構え、忍び足でゴブリン一行に近づく。
ルミナは気がつかなかったが、黒いローブをきた何かがルミナを見ていた。
「何だこの数。異常すぎる」
銀髪の少年は悪態をつきながらも剣を振るう。
少年の斬撃で倒れるゴブリンたち。
「それに、オーガーも、うじゃうじゃといる……最悪だな」
剣を左手に持ち直し、少年は手を突き出す。
「セット、レプカ」
少年が唱えると、突然オーガーの体が炎で覆いつくされる。オーガーの苦しい叫び声。
「行くか……」
少年はオーガーの死体を後に、去っていく。




