↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

宇宙人を拾った俺、宇宙へ嫁ぎます。

作者: こはこは
掲載日:2026/09/15

宇宙人と恋をした。……たぶん。


 その日、俺は宇宙人を拾った。


 正確には、空から落ちてきた。


「……え?」


 午後8時。


 コンビニ帰りの俺――高校二年生の佐倉悠斗は、家の近所の公園で空を見上げていた。


 星が綺麗だなぁ、とか。


 明日も学校かぁ、とか。


 そんなことを考えていた、そのとき。


 ――ドォォォンッ!!


「うわぁぁぁ!?」


 公園の砂場に何かが墜落した。


 砂煙が晴れる。


 そこにいたのは――


 銀色の髪。


 紫色の瞳。


 白い肌。


 そして、どう見ても地球人ではない、やたらとスタイルのいい女の子だった。


「…………」


「…………」


 目が合った。


 女の子はゆっくり立ち上がると、俺を指差した。


「あなた」


「えっ、はい」


「地球人ですね?」


「見れば分かるだろ」


「なるほど」


 彼女は深く頷いた。


「では、あなたを食べます」


「なんでぇえ!?」


 初対面で食われかけた。


 俺の人生、物語開始五秒で終わりかけた。


「冗談です」


「冗談にしては目が本気だったぞ!?」


怯えながら叫ぶ。


「地球の挨拶を勉強しました」


「絶対違うだろ!」


 彼女は首を傾げた。


「では、正しい挨拶を」


「……よろしくお願いします、とか?」


「よろしくお願いします」


「うん」


「あと、食べてもいいですか?」


「間違えた挨拶に戻るな!」


 こうして俺と宇宙人の奇妙な生活が始まった。


 彼女の名前は、ルル。


 惑星ネビュラからやってきたらしい。


 地球へ来た理由は――


「恋人を探しに来ました」


「壮大な目的だな」


「私の星では、十八歳になると異星人との婚姻相手を探す風習があります」


「へぇ」


「なので、一番近かった地球に来ました」


「距離感どうなってんだ」


 しかも宇宙船が壊れたらしく、帰れないらしい。


「……それで、俺の家に?」


「はい」


「いや、なんで?」


「あなたが最初に話しかけてくれたので」


「いや、話しかけたというか……落下してきたから心配しただけだぞ」


「それが愛ですね」


「違う」


「愛です」


「違います」


「では結婚しましょう」


「話が飛びすぎだ!」


 しかし、ルルは本気だった。


 他の人には――


「親戚の子」


 ということにした。


「宇宙人です」


「言うな!」


 なんとか誤魔化した。


 そして翌日から、ルルは俺と一緒に学校へ通うことになった。


 転校生として紹介されたルルは、教室に入った瞬間、クラス中の視線を集めた。


「ルルです。宇宙から来ました」


「…………」


「好きな食べ物は地球人です」


「…………」


「嫌いな食べ物は星です」


「…………」


 担任が頭を抱えた。


「佐倉。お前の親戚、大丈夫か?」


「俺が聞きたいです」


 ちなみにルルは地球人を食べなかった。


 代わりに給食の牛乳を飲んで、


「エネルギー効率が悪いですね」


と言った。


「普通に飲んでるじゃん」


「はい。地球人の食文化は面白いです」


「そうか」


「でも納豆は敵です」


「なんで?」


「糸が多すぎます」


「そこ?」


 そんな毎日を過ごしているうちに、俺は少しずつルルに惹かれていった。


 彼女は変なやつだった。


 とにかく変だった。


 信号を守る理由を聞かれて、


「車に轢かれるから」


と答えたら、


「では車を倒せばいいのですね」


と言った。


 自動販売機を見て、


「中に小人がいる」


と言い出した。


 猫を見れば、


「小型の宇宙獣ですね」


と言いながら追いかけ回した。


 でも。


 俺が落ち込んでいると、必ず隣に座ってくれた。


「悠斗」


「ん?」


「元気がありません」


「……ちょっとな」


「では、私が元気にします」


「どうやって?」


 ルルは両手を広げた。


「踊ります」


「なんで!?」


 そして本当に踊った。


 公園のど真ん中で。


 しかも謎の宇宙ダンス。


「……ぷっ」


「笑いましたね」


「いや、だって……なんだよそれ」


「成功です」


 ルルは笑った。


「悠斗が笑えば、私は嬉しいです」


 その瞬間だった。


 胸が、少しだけ熱くなった。


 ――ああ。


 俺、この子のこと好きなんだ。


 そう思った。


 だから、ある夜。


 俺はルルに告白することにした。


「ルル」


「はい」


「俺……」


 緊張する。


 心臓がうるさい。


「俺、お前のこと――」


 その瞬間。


 ――ピピピピピッ!!


 ルルの腕時計のような機械が鳴った。


「緊急連絡です」


「今!?」


 ルルが機械を操作する。


 空中に巨大なホログラムが映し出された。


『ルルへ。宇宙船の修理が完了しました。明日の朝、迎えに行きます』


「…………」


「…………」


 俺の告白、宇宙船に負けた。


「帰るのか?」


「はい」


「そっか」


 胸がズキッとした。


 ルルがいなくなる。


 そう考えただけで、寂しかった。


「悠斗」


「ん?」


「先ほど何か言いかけていましたね」


「ああ……」


 俺は拳を握った。


「好きだ」


「はい」


「俺、お前のことが好きだ」


 ルルは黙った。


 数秒後。


「私もです」


「……え?」


「私も悠斗が好きです」


 胸が跳ねる。


「じゃあ――」


「なので、一緒に来てください」


「宇宙に!?」


「はい」


「学校は!?」


「辞めましょう」


「人生の話が軽い!」


「私の星では普通です」


「普通じゃない!」


 翌朝。


 俺たちは公園にいた。


 空から巨大な宇宙船が降りてくる。


「本当に行くのか……」


「はい」


「俺、宇宙行ったことないぞ」


「大丈夫です」


「何が?」


「酸素はあります」


「最低限すぎる!」


 宇宙船の扉が開く。


 俺はルルを見る。


「……いつか戻ってこれるよな?」


「もちろん」


「じゃあ、行く」


「はい」


 ルルは笑った。


 そして俺に手を差し伸べる。


「悠斗」


「ん?」


「地球では、恋人同士は手を繋いで歩くそうです」


「誰から聞いた?」


「地球の恋愛漫画です」


「情報源が最悪だな」


「では練習しましょう」


「今ここで!?」


「はい」


 俺たちは手を繋いだ。


 その瞬間。


 宇宙船の中から声が響いた。


『ルル。地球人との交際は許可します』


「えっ」


『ただし――』


「ただし?」


『次に来るときは、もっとマシな宇宙人を連れてきなさい』


「失礼ですね」


 俺は思わず笑った。


「……まあ、いいか」


 宇宙人と恋をするなんて。


 普通ならありえない。


 でも。


 空から女の子が落ちてきて。


 その子が俺の毎日をめちゃくちゃにして。


 気づけば、いなくなるのが寂しくなっていた。


 だから俺は、宇宙船に乗り込んだ。


「じゃあな、地球」


 窓の外で、地球がどんどん小さくなる。


 隣にはルル。


 俺の手を握っている。


「悠斗」


「ん?」


「宇宙旅行中に食べたいものはありますか?」


「うーん……カレーかな」


「分かりました」


「作れるの?」


「はい」


「何入れるの?」


「宇宙人の肉です」


「怖ぇよ!!」


 俺の宇宙生活は、どうやら前途多難らしい。


 ――でも。


 まあ。


 隣にこいつがいるなら。


 案外、悪くないかもしれない。


 そう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。