伊予柑と望春 ⑤
「掛けまくも畏き豊水のーー平らけきー清き流れのひと筋にーーー」
祝詞の奏上が始まった。
湧き水に向かう神主さんの後ろに、六代目、七代目、そして千春さんが頭を垂れ、立ち従っている。
白い息と、湧き水から立ち上る靄が、冷たい空へ消えていく。その先は、見えない。
「ーーー恐み恐みもうすーー」
奏上が終わり、大麻が清らかな音で振られると、三人は玉串を捧げた。
参列者は、開け放たれ、庭に続いている長い廊下に、二重三重に正座をして、神事を見守った。
早春の明るい日差しが、雪に目映く、神事に臨む者に恵みを降り注いでいるかのように思えた。
しんとした景色の底に、水琴窟へ水滴の零れる音が吸い込まれていった。
神事は滞りなく終わり、私たちは再び広いお座敷に案内された。
襖が大きく開かれ、そこには神主さんを上座として、お膳がずらりと並べられていた。
私は、足が竦んだ。リスさんを見る。リスさんは、私の無言の訴えに気づき
「智翠のお菓子、楽しみね!」
と微笑んだ。
そうだった。私は、智翠さんが初めて作る「水琴庵のお菓子」をいただきにきたのだった。
「リスちゃん、来春さん、こっちにいらっしゃいな」
千春さんに呼ばれ、私は恐縮しながら親族席の中へ混じって並び、座った。
「皆さん、座る場所は決まってなくて、好きなところでいいんだけれどね、あなたたちはここにいるといいわよ」
その言葉に、千春さんの心遣いを感じた。
床の間を背にして、神主さんと水琴庵の六代目が並んで着席した。
六代目の目配せで、場が静まる。
「えぇ、本日は、豊水神社様による、水琴庵湧き水の神事にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます」
六代目は、袖を振るい、大きく参列者に向かって頭を下げた。そして座布団から降りると、神主さんが挨拶を引き取った。
「今年の、水琴庵、湧き水の神事、滞りなく執り行えましたこと、誠に喜ばしくお祝い申し上げます。水琴庵さんは、明治の入植から変わることなく豊水神社の主祭神であらせられる天照大御神、水神様であらせられるクラオカミの神様、タカオカミの神様をお祀りくださっている縁深い間柄でございます。そして、今年の湧き水の神事には、七代目がお菓子をはじめて披露される、という慶事が重なり、おめでたい日となりました……」
私は、ここではじめて、なぜ挨拶が「おめでとうございます」なのかが分かった。
今日は、智翠さんを、七代目としてお披露目する場なのだ。七代目がはじめて作るお菓子とともに。
「……水琴庵さんは、代々、人の心がいかようにも触れられる、奥ゆかしいお菓子を守って来ました。それは、この地の開拓の時代から受け継がれる、私たちの折に触れる慶事にあるいは悲しみに、ひっそりと寄り添い続けるものです。そのお菓子が受け継がれていく喜びに、本日のお席は包まれていると感じます。これからも、水琴庵さんの暖簾が守られ、受け継がれていくことをお喜び申し上げますとともに、さらにご縁が深まりますようにと、心から願っております。本日は、誠におめでとうございます」
「ありがとうございます」
六代目、並んで千春さんと智翠さんは、一度目は神主さんに、二度目はこの場に集う人々へ、付いた手に深々と頭を埋めた。
「では、七代目の智翠から、今年の湧き水の神事に奉納させていただきましたお菓子を、皆様に謹上させていただきます」
女性の従業員たちが、小さな松の形の塗りものを、私たちのお膳の真ん中にに、ひとつひとつそっと据えていった。
その上には、智翠さんが、今日の日のために作ったお菓子が載っていた。
白い求肥が、中の若草色の餡をほのかに透かし、ただ丸く包んでいる。
求肥の上には、まるでよく晴れた日の雪のような、氷餅がまぶされ、何かを隠していた。じっと見つめていると、氷餅の下には、小さな焼き紋が透けて見える。それはたった一枚の花びらだった。
「ええ、本日は、お運びいただきまして、誠にありがとうございます。私がこうしてお菓子を作れるのも、仕込んでくれた上の職人さん、六代目、女将、そして本日お集まりくださった皆様に支えられてのことと、感謝しております。子どもの頃から、何をしでかすか分かったもんじゃなかった、私を、皆様にいつも見守っていただき、本日、お目にかかれなかった方々にも、温かく声を掛けていただきました。諦めずに教え、導いてくださり、ありがとうございます。おかげさまで今日を迎えることができました。これからも、この気持ちを忘れず、精進していきますので、何卒お引き立て賜りますよう、お願い申し上げます」
頭を上げた智翠さんの目には、引き締まった気持ちが如実に浮かんでいた。
「本日のお菓子は『望春』と申します。春を望む、この季節に相応しい気持ちを込めて作りました。皆さんに召し上がっていただけて、光栄です。どうか、忌憚のないご意見をいただけますとありがたいです。」
お菓子についての説明は、それだけだった。
人々は、松の塗りを手に取り、その上のお菓子を確かめだした。
「いい色に仕上がってるね」
「なんの餡かな」
「飾りも、いいね」
「氷餅が全体に付いてないところがいい。おや、ひとつひとつまぶされ具合も一様じゃないんですね」
「求肥の持ち上がりもいいよ、とても」
「うん、餡の固さがちょうどいいからだね」
「氷餅に掃かれた下に……」
「何の花びらかね?」
そして、隣やお向かいと話しながら、やがて、一人また一人とお菓子を口に運び出した。
「おや、味噌餡だ」
「いいね、ほのかな感じ」
「色からして柚を想像したけれど、こっちの方がいい」
「そう。あっさりしてるけど深みもあるね。また食べたくなる味だ」
「水琴庵の味だね」
「色は、何の色なのかな?ね、智翠くん、この色はなんでつけたの?」
智翠さんが、腰を上げ、あちこちから上がる感想や質問を受けに奔走し始めた。
「それは、クチナシとベニバナの混合なんです」
「あぁ、どおりで。いい具合だね」
「ありがとうございます」
別の場所からお呼びが掛る。
「智翠くん、この花びらは、もともとあった焼き型?」
「おじさん、よく気がついて……。実は、僕の学生時代の友達が作ってくれたんです、このために」
「なんだか、いつもと違った感じがしたんだよね。少し丸っこいっていうか」
「そうなんです!少し丸くしてもらったんです」
「智翠くん!この色も甘みも、よく合ってていいよー」
「求肥もね、水琴庵の求肥だね」
「氷餅の、掃かれ具合がね、なんていうかな、こう、雪の下で眠ってる春を隠してるんだね、そういう感じがいい」
「この、隠されてるところがじんわり伝わってきて、それが自分の心のどんな部分なのか、いつも水琴庵さんには考えさせられます」
「ひとつのお菓子が、いただく人それぞれの思いを含んでいるところが、ほんと、水琴庵さんの持ち味ですね」
「ありがとうございます!」
智翠さんは、頭を下げた。
あちらこちらから、声が途絶えなかった。
たくさんの人から呼ばれ、お座敷のどこへ行っても、智翠さんは温かい声を掛けられていた。
はじめてこのお座敷に入ったときに感じた、居丈高な雰囲気は、もう別な、春のせせらぎのような穏やかな流れに変わっていた。それは、私が表層しか見えていなかったからなのだろう。本当は、はじめから温かかったのだ。
智翠さんは、こうして育てられ、お菓子を作っているのだということが、席をともにして私は初めて分かった。
「来春さん、いただいてみましょう?」
リスさんに誘われ、私は松の塗りを手に取った。
神事の空の下、きらきらと微細に光った氷餅が、目に焼き付いていた。
求肥にすっと切り口を入れる。求肥も餡も、思いのほか粘り少なく切り口が美しい。
私は、そっと口に運んだ。
それは、華やかさとは縁遠い、地面の下で温かく、揺り動かされるのを待っているこの季節を、人が遠慮がちに作った味な気がした。
智翠さんのお菓子を味わうと、待っていたように次々とお酒やお料理が運ばれてきた。
その頃には、私もすっかり打ち解けることができていた。
六代目と智翠さんは、お酒を注いで廻り、千春さんは茶の湯の先生やお弟子さんと見える華やかな着物姿の女性たちに囲まれて笑っていた。
リスさんと私は、お膳を愉しんだ。
「それにしても、大きなお座敷ですね」
私は、箸を置き、天井に描かれている様々な花を、見上げた。
「ここは、智翠のひいひいおじいちゃんの時代からだから、修復もたいへんね」
「ひいひいおじいちゃんですか……」
私は思わず指折り数えた。
「ん?智翠さん、七代目ですよね?」
「そうなの。来春さん、よくお気づきで。水琴庵は、実は本家のお店が金沢にあるの。ひいひいおじいちゃんが、お兄さんから暖簾分けされて、入植の時に和菓子を持ち込んだんですって。本来だったら、そこが一代目になると思うんだけど、ひいひいおじいちゃんは、お兄さんから『お前も立派な三代目だから、三代目を名乗って、それに恥じないようなお菓子をつくれ』って言われて、それで、大元を辿って、智翠で七代目になるの。智翠、金沢の水琴庵にも修行に行ってるんですよ。従兄弟が同じく七代目で継いでるって」
なるほど。
会席も賑やかになり、千春さんや智翠さんもこちらへやってきた。二人とも、無事に神事とお披露目が終わり、満ち足りた安堵の表情を浮かべている。
「千春さん、智翠、ものすごくいいお菓子でした」
リスさんがそう言うと、二人はにこやかに頷いて、また次の人のところへ膝を進めた。
「リスさん、私、ちょっと……」
「ええ。えっとね、そこの襖から出たら左側の廊下を真っ直ぐ行くと、お手洗いよ」
リスさんは察しよく、教えてくれ、私は小さく頷くと、宴も酣な席を離れた。
後ろ手に閉めることの出来ない襖を、跪き、両手で音を立てないように締め終わると、どっと疲れが押し寄せた。
「はあっ」
深い溜息を漏らすと、私は立ち上がった。ここでようやく、足の痺れを感じた。
廊下は、左右に長く分かれ、すぐ前にも真っ直ぐ、奥へ続いていた。
私は、リスさんに言われたとおり、左手へ進んだ。
空気が、冷たい。
陰影のある砂壁に沿って進むと、行く手に、人影が忽然と現われた。
ぎくりとして私は立ち止まった。
その人影は、ゆっくりと、すり足でこちらへ近づいてくる。
よく見ると、水琴庵の皆さんが身につけている着物を着ている。だが、従業員の方にしては、とても高齢に見えた。薄くなった白い髪を、後ろになで付けていた。
小柄な人であったが、何だろう、脇目も振らずすぐに私の横まで来ると、ぴたりと止まった。
耳に掛けられた白髪が、一筋、しぼんだ頬に落ちる。
「あなた」
冷え切った床下から立ち上るかの、暗く、低い声に呼び止められ、私は、立ち竦んだ。
「……はい……何か……」
その形相が、尋常ではない。
「あんた」
呼び名が、変わった。蔑称に。
そして、はっきりとこう言ったのだ。
「この家を乗っ取りにきただろう」
私は、凍りついた。
声もなく、後ろを振り返ると、その老女はすり足で走り去って行く。
「来春さん!」
お座敷の襖が開き、彼女とすれ違いざまに、智翠さんが現われた。
「座敷を出るのが見えたから……」
智翠さんは、何かを気に留めた様子もなくこちらへやってくると、心配そうな顔をした。
「どうかしたの……」
それから、老女の走り去った方を見つめた。
「ああ。もしかして、ナツノさんが失礼なことを言った?」
智翠さんは、首の後ろに手をやった。
私は、先ほどの衝撃がようやく少し薄れ、首を振った。
「……いえ……」
「ナツノさん、一番古参の従業員さんで、僕が子どもの頃から面倒を見てくれて、お店のことも……」
智翠さんは、とうに見えなくなったナツノさんの後ろ姿を追うように、そちらを見た。
「若い頃からずっと住み込みでいて、よく遊んでもらったんだけど、身寄りもなくて高齢になると家を貸してくれる業者さんもなくて、ね」
私は、言葉もなかった。
高齢の女性は、皆、自分の祖母を思い出させた。一歩引いて抱擁するような、柔らかく優しい目で私を見てくれる。
だが、ナツノさんは、祖母たちとは明らかに違っていた。
彼女の言葉を思い出す。
その嗄れた低い声音が、耳の奥から離れなかった。局所的な部分から広がって、もはや私の心に拭い去れない染みを作った。だが、彼女の目は……落ちくぼんだ皺の中で、小さく光りながら私を見てはいなかった気がした。
「来春さん」
智翠さんの声に、私は我に返った。
「僕のお菓子、どうでしたか?あのお菓子、ほんとは……」
智翠さんが言いよどむ。
そうだ、今日は智翠さんのお菓子をいただきに上がったのだった。私が感想を伝えようとしたときだった。
「来春さん!」
リスさんが小走りにやってきた。
「もしかして、迷ったかと思って……あ、智翠、ごめんなさい。話してた?」
「いや。お菓子、どうだったか聞いてたところ」
リスさんは、頷きながら私を見た。
「来春さん、なんだか顔色がよくないみたいだけど、具合悪いんじゃない?」
「……いえ、……ここ、暗いからじゃ……」
「でも、元気なさそうだし。智翠に嫌なことでも言われた?」
「そんなこと、言わないよ」
「そうだとは思うけど、早めに帰りましょうか?皆さん、まだお酒が進むみたいだし」
「もうちょっとでお開きになるから、お土産もあるし、少し待ってて。あ、でも来春さん、無理しないでね」
そう言うと智翠さんはお座敷に戻っていき、リスさんと私はお手洗いに向かった。手を洗いながら鏡を見たが、リスさんの言うように私は白い顔をしていた。
「えー、年に一度の神事も無事に終わり、七代目のお菓子も初披露できまして、皆さんの篤いご後援のお陰と感謝するばかりです。今後とも何卒、私ども『水琴庵』をお引き立ていただけますよう、伏してお願い申し上げます。本日は、誠にありがとうございました」
六代目は、座布団から降りて深々と頭を下げると、隣に並んで座っていた千春さん、智翠さんも並んで手を付き、低頭した。温かな拍手が湧き起こり、リスさんと私も心からの拍手を送った。
それから神主さんをお見送りし、私たちは、六代目と千春さんにご挨拶を済ませると、早めに席を立った。
千春さんと智翠さんが、一緒にお店まで出てきてくれた。
リスさんが、千春さんから、お土産を手渡された。
「今日は、ありがとう、リスちゃん。ほんとに、久しぶりにリスちゃんが参加してくれて嬉しかったわ。昔のこと、思い出しちゃった」
千春さんが涙声になった。
「おばさん……。こちらこそ、ありがとうございます。また来ますね。ふふふ。今日、写真撮ってないから。智翠、今日は立派でした。おじさんもおばさんも、少しゆっくりしてくださいね。智翠、体力は人一倍あるから、片付けは任せて大丈夫ですよ」
リスさんの言葉に、千春さんは笑った。
智翠さんは、私に向かって頭を下げた。
「来春さん、あんまり気が進まなかったと思うけど、来てくれてありがとうございました」
「いえ……」
そして、お礼を言おうとしたときだった。
いつの間にか、音もなく、影のように、千春さんの後ろにナツノさんが立ってこちらを見ていたのだ。
私の様子に、全員がそちらを振り返った。
「ナツノさん?」
千春さんに声を掛けられると、ナツノさんはずいっと前へ出た。みるみる間に距離を縮め、その顔が私の鼻先まで近づいた。
「リスさん、また来てくださいね」
はっきりそう言って笑顔を作ると、くるりと方向転換をして、ナツノさんは去って行った。
あっという間のことだった。
私を、リスさんと呼んだ。
その口元だけを、ぐっと意志の力で引き上げ、無理矢理に笑顔を貼り付けた、ナツノさんの表情が、刃のように突きつけられた気がした。
ナツノさんの、皺の中に光る黒い瞳は、笑ってはいなかった。押し殺した怒りが、小さな光の中をつるりと流れ、私の目の前から離れるときには空っぽになった。
千春さんが、慌てて私に詫びた。
「来春さん、ごめんなさいね。ナツノさん、リスさんと来春さんを勘違いしたみたい。しばらくリスさんに会っていなかったから」
リスさんが言った。
「ほんと。ナツノさん、久しぶりに会ったわ。元気そう」
リスさんは、無邪気にナツノさんの健在を喜んでいたが、あんな、ぎりぎりまでに抑制された怒りの矛先が、リスさんに向かっていたとは……私は恐怖を覚えていた。
千春さんが心配そうに眉を寄せ、じっとこちらを見ている視線を感じ、私はなんとか口を開いた。
「本日は、ありがとうございました。関係者でもないのに、神事に参加させていただいて、智翠さんのお菓子もとても素敵でした。貴重な時間でした」
智翠さんとリスさんは、にこにこと私を見ていた。
「本当は、来春さん、別の用事があったり迷惑だったりしたんじゃないかしらって、智翠に言ってたんだけど、でも来てもらえてとっても嬉しかったわ!ベッカライウグイスの人たちは、うちの親戚も同じだから、どんどん遊びに来てね。お友達を連れてきても構わないわよ」
私を気遣いながら、親切に言ってくれる千春さんに頭を下げ、それから、私たちは水琴庵をお暇して、帰途についた。
「できた!」
「壮観ねー」
みずほさんの伊予柑ピールが、消毒された瓶に詰められ、工場の棚にずらりと並べられた。
「綺麗……」
「ほんとねー」
淡く色づいた伊予柑の蜜に、うっとりとその皮が沈められていた。
「うふふ。じゃあ、内緒にしてたこと、二人に教えるわね」
そう言うと、みずほさんは私たちと同じ仕事着のポケットから、携帯電話を取りだした。リスさんと私が見ていると、カメラを起動させ、伊予柑ピールの並んだ棚を撮影し始めた。
色々な角度から、ごく近くからと撮影していく。
「リスちゃんと来春さんも並んで!」
私たちは、伊予柑ピールの横に立って笑った。
「もっと自然によー。ほら、虎男さんがクリーム落とすわよ!はい、チーズ」
リスさんと私が思わずくすっと笑ったところをみずほさんが撮す。
「ふー。ありがとう。よく撮れてるわ」
三人で並んで、みずほさんの撮影した画像を見た。
「私ね、SNSを始めようかと思って。それで、一番最初に、自分で作った綺麗なものを撮したかったの」
「うわぁ、いいですね!」
「アカウント、教えてみずほさん!」
「ふふふ」
みずほさんは、楽しそうに笑った。
「もう少し、撮りためてからにしようと思ってるから」
「じゃ、楽しみにしてるわね」
「ベッカライウグイスも、SNSしてみたらいいのに」
みずほさんはそう勧めたが、リスさんは難しい顔をした。
「うーん。……なんか、合わないような気がして……。それに、ホームページだけで精一杯」
みずほさんは、リスさんの言う意味を理解したようだった。
「そうね、そうかもね。ここは、昔から、そんなふうに変わらなくていい気がするわ」
私たちは、それぞれ思うことを胸に抱きながら、伊予柑ピールの棚に見蕩れた。
私たちは、達成感に満ちあふれていたし、笑い合い、幸福だった。人生に欠けたものはそれぞれあったが、そのピースを埋め合わせる別の幸せも持っていた。
この時までは……。
読んでくださり、ほんとうにありがとうございます(^^)/
次回、ベッカライウグイスに事件が起こる予定です。
どうかまた読んでいただけますように!




