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まいにちの小さな冒険 友達や家族と楽しむ毎日の発見  作者: たむ


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第115話 とけいのねこのやくそく

りくくんとさえちゃんは、時のねこに導かれて砂時計の世界を見ました。

手には小さな「思い出の粒」を残され、胸いっぱいの不思議を抱えています。

今回は、ふしぎ編のしめくくり。ねことふたりが交わす大切な約束のお話です。

りくくんの机の引き出しの奥には、小さなビー玉のような粒がしまわれていた。

中に閉じ込められた光景は、今も変わらずきらめいている。

――りくくんとさえちゃんが、笑顔で顔を寄せ合っている瞬間。


「これを見てるとね、心がぽかぽかするんだ」

放課後、りくくんは粒をそっと取り出して、さえちゃんに見せた。


「ほんとだ……昨日の私たちだね」

さえちゃんも見入って、思わず頬を赤くした。


ふたりだけの秘密。

それはただ不思議な体験というだけでなく、宝物を分かち合っている安心感でもあった。


その日も、ふたりは図書室へ向かった。

大きな時計の前に立つと、不思議と呼ばれたような気持ちになる。


「にゃあ」


灰色のねこが、いつものように姿を見せた。

今日は少し特別な雰囲気があった。

瞳がいっそう澄んでいて、まるで何かを伝えようとしているみたい。


ねこはふたりの前に座り込み、じっと目を合わせてきた。


「……なにか、言いたいことがあるのかな」

「うん、そんな気がする」


そのときだった。


時計の針が大きく震え、音もなく動きだした。

文字盤が静かにひらいて、ひとつの光の道があらわれる。


ねこはその道の前に立ち、ゆっくりと尻尾を振った。

――ついてきて、という合図だった。


ふたりは顔を見合わせ、しっかりとうなずいた。


光の道を進むと、やがて広がったのは――夜空に浮かぶ「時の庭園」だった。

無数の花が咲いている。

けれど、それは普通の花ではなかった。

ひとつひとつの花びらが、小さな時計の文字盤になっているのだ。


「わぁ……!」

「きれい……!」


花々は、カチリ、カチリと針を動かしながら、まるで風に揺れるように開いたり閉じたりしていた。


ねこはその真ん中まで歩くと、ふたりのほうを振り返った。

そして、小さな声で「にゃあ」と鳴いた。


ふしぎなことに、その声ははっきりと人の言葉のように心に響いた。


――ありがとう。君たちが見届けてくれたから、時間は正しく流れている。


ふたりは目を丸くした。


「……今、聞こえた?」

「うん……声じゃなくて、心に……」


ねこはもう一度鳴いた。


――けれど、これから先、すべてを見せ続けることはできない。

人は人の時間を歩くものだから。


ふたりはしんと息をのんだ。

それが「さよなら」を意味しているのだと、直感でわかってしまった。


「でも……また会えるよね?」

さえちゃんの声は震えていた。


ねこはゆっくりと歩み寄り、ふたりの足元にすり寄った。

そしてもう一度、心に響く声が届いた。


――思い出を忘れなければ、いつだって会える。


ふたりは顔を見合わせ、同時にうなずいた。


「うん、忘れない。絶対に」

「ずっと、大事にするよ」


ねこは満足そうに目を細め、背を向けた。

すると、庭園の花々がいっせいに時を刻む音を立て、光の雨となって降りそそいだ。


眩しさに思わず目を閉じ、再び開いたとき――そこはいつもの図書室。

目の前には、静かに時を刻む古い大時計だけがあった。


「……行っちゃったんだね」

「でも、ここにいるよ」


さえちゃんが指さしたのは、りくくんがポケットに入れた小さな粒。

その中で、二人の笑顔は変わらず輝いていた。


りくくんはそっと拳を握りしめた。

ねこと交わした約束を忘れないために。


「これからも、がんばろうね」

「うん。私たちの時間を、ちゃんと大切にしていこう」


ふたりの胸には、もうさみしさよりも、未来へのあたたかな決意が灯っていた。

こうして「時計のねこ」の物語はいったん幕を閉じます。

りくくんとさえちゃんは、ふしぎな出会いを通じて「時間の大切さ」を胸に刻みました。

これからは日常の中で、その教えを大事にしていくことでしょう。

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