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まいにちの小さな冒険 友達や家族と楽しむ毎日の発見  作者: たむ


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第114話 とけいのはねの音

りくくんとさえちゃんは、月夜に広場で「時のかけら」と出会い、大切な思い出を見せてもらいました。

今回は、その余韻の中でさらに奇妙で心に残る体験をするお話です。

次の日。

ふたりは学校の休み時間に顔を合わせると、同じことを言った。


「昨日のこと、夢じゃなかったよね」

「うん、ちゃんとおんなじの見てたもん」


ふたりだけが知っている秘密。

それは、友だちに話したくても話せない、不思議であたたかい体験だった。


その日の放課後。

図書室の大時計の前に立つと、やっぱり心が落ちついた。

まるで“ここに来れば、また会える”と信じてしまうような安心感。


「にゃあ」


案の定、ねこは現れた。

灰色の毛並みが夕焼けの光にすこし赤く染まっている。


「やっぱり来てくれた!」

「今日はどこに連れてってくれるのかな」


ふたりが近づくと、ねこはすっと尻尾をふり、時計の振り子に飛び乗った。

すると、カーン、と澄んだ音がして、振り子が羽のように広がった。


「えっ、羽……?」

「時計の振り子が、はねになっちゃった!」


信じられないことに、ねこはその羽にふたりを乗せるように前足でちょいちょいと合図した。


「のれってこと?」

「……のってみよう」


ふたりは目を合わせ、大きくうなずいた。


振り子の羽に足をかけると、ふわりとした浮力が身体を包む。

あっという間に床から離れ、図書室の天井をすり抜け、空高く舞い上がっていった。


――気づけば、ふたりは夜空を飛んでいた。


眼下には町の灯りがちりばめられ、まるで星空が逆さに広がったようだった。

風は冷たいのに、不思議と寒さは感じない。羽からは一定の温もりが伝わってくる。


「すごい……!」

「まるで夢みたい……」


ねこは羽の先にちょこんと乗り、風を切って進んでいく。

やがて、空のはるか彼方に、巨大な砂時計が浮かんでいるのが見えた。


それは雲よりも大きく、夜空を横たわるように存在していた。

中の砂は、きらきらと星のように光っている。


「……あれ、もしかして……」

「世界の時間を流してるのかな」


息をのむふたりに、ねこは「にゃあ」と鳴き、砂時計のそばまで羽を進めた。


間近で見ると、その砂粒ひとつひとつに、小さな光景が映っていた。

誰かの誕生日の笑顔。

運動会で転んで泣く子の姿。

木陰で休むおじいさんの穏やかな顔。


それぞれが「ひとつの時間」なのだと、すぐにわかった。


「……すごい。全部の人の時間が、ここで流れてるんだ」

「ねこさんは、この砂を守ってるんだね」


すると、羽がふわりと揺れ、一粒の砂がふたりの前に舞い降りた。

その中には――りくくんとさえちゃんが並んで笑っている姿があった。


「これ……」

「ぼくたちだ」


それはほんの数時間前、学校でふたりが笑い合った瞬間。

時間は流れて消えていくのではなく、こうして砂粒として残っていく。


「忘れちゃうこともあるけど……なくなってるわけじゃないんだ」

「ちゃんと、ここにあるんだね」


胸がじんわりと温かくなる。


そのとき、大きな鐘の音が空に響いた。

ゴーン――。


砂時計の砂が一斉に輝き、流れが速くなった。

ねこは「もう帰る時間だよ」と言うように羽をひとふり。


ふたりの身体は、羽からそっと宙へ放たれた。

ふわりと落ちていく感覚――でも恐怖はなかった。


次の瞬間、ふたりは図書室の床に立っていた。

足元には、砂時計から舞い降りた一粒の砂が光を放ちながら置かれていた。


「……これ、持ってていいのかな」

「お守りみたいだね」


小さな砂の粒は、透明なビー玉ほどの大きさに変わっていた。

中には、さっき見た二人の笑顔の景色がきらめいている。


りくくんとさえちゃんは顔を見合わせ、しっかりとうなずいた。

この不思議な宝物を、大切にしまっておこう。

それは、時のねこがくれた「思い出の証」なのだから。

大きな砂時計と羽ばたく振り子――まるで時間そのものの心臓部に触れたようなお話でした。

りくくんとさえちゃんの手元には、小さな宝物が残りました。

次にねこが現れるとき、その宝物が何かを導くかもしれませんね。

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