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まいにちの小さな冒険 友達や家族と楽しむ毎日の発見  作者: たむ


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第102話「ふしぎな図書館の窓」 

みんなは夜の図書館に入ったことがあるかな? 昼間は勉強や本を読む場所だけれど、夜はちょっと違った顔を見せるかもしれないよ。今回は、前回のお話の続き。ゆうたくんとまいちゃんが体験した“ふしぎな図書館”の第二幕です。

しんと静まり返った夜の図書館。

まいちゃんは、返却台に置いた本をじっと見つめたまま、まだ胸の鼓動が落ち着かないでいた。


「ほんとうに……しゃべったよね。本が、あんなふうに」


小声でつぶやくまいちゃんに、ゆうたくんはうなずいた。


「うん。しかも、お礼まで言ってくれたみたいだった」


さっきの不思議なできごとは、きっと夢なんかじゃない。ふたりの耳には、まだページのささやきや、歌うような声の残響が残っている気がした。


図書館を出ようとしたそのとき——。


「ねえ、ゆうたくん。あそこ、見て」


まいちゃんが指さしたのは、窓際にある大きなガラス窓。昼間は明るい光を入れてくれるその窓から、今は月の光がぼんやり差し込んでいる。


けれど、そこに見えたのは校庭ではなかった。


「……えっ?」


ゆうたくんは思わず声をもらした。


窓の向こうに広がっていたのは、見知らぬ景色。背の高い本棚が果てしなく並び、その間を青白い光の粒が漂っている。天井はなく、代わりに星空がどこまでも広がっていた。


「なに、これ……。図書館の中に、また図書館が?」


「いや……窓の外なのに、図書館があるなんて」


ふたりは目を疑った。


そのとき、光の粒のひとつがふわりと近づいてきて、ガラスの表面にやさしく触れた。すると、不思議な声が耳の奥に響いた。


『ありがとう。本を返してくれて』


まいちゃんとゆうたくんは、同時に目を見開いた。


「い、今の……!」

「うん。あの冒険物語の本の声だ」


たしかに聞き覚えがある。さっき返却台に置いたばかりの本の声。


光はまたたきながら、ゆっくり言葉を続けた。


『わたしたちは“窓の図書館”に住んでいます。本を大切にしてくれる子どもたちの前にだけ、この窓が開くのです』


「窓の図書館……」

まいちゃんはごくりとつばを飲み込んだ。


ゆうたくんは一歩、窓に近づいた。


「……入ってみたい」


そうつぶやいた瞬間、窓ガラスにふしぎな模様が浮かびあがった。細い光の文字が、月の光に照らされてきらきら輝く。


——また会いにきてください。わたしたちは、いつでも待っています。


「……招待状みたいだ」

「うん。でも、どうやって?」


ふたりは窓の前で立ち尽くした。

ガラスの向こうに広がる“窓の図書館”は、まるで手を伸ばせば届きそうな距離にあるのに、透明な壁がしっかりとふたりを隔てていた。


勇気を出して、ゆうたくんがそっと手を伸ばした。指先がガラスに触れた瞬間——。


ぱちん。


景色は一瞬で消え去った。

そこに広がっていたのは、ただの真っ暗な校庭。月の光が静かに地面を照らしているだけだった。


「い、いまの……どこ行っちゃったの?」

まいちゃんが慌てて窓に顔を近づける。けれど、もう不思議な光も本棚の森も見えなかった。


ゆうたくんは、しばらく黙って窓を見つめていたが、やがて深呼吸して言った。


「……きっと、また会えるよ。あの文字にそう書いてあっただろ?」


「……うん」


まいちゃんは少し安心したようにうなずいた。


ふたりは図書館をあとにした。

廊下を歩く足音がやけに響く。外に出ると、夜空に浮かぶ大きな月が、まるで窓のように輝いていた。


「ほら、月も窓みたいじゃない?」

まいちゃんが空を見上げて言った。


「そうだな……もしかして、月も“図書館の窓”のひとつかもしれない」


ゆうたくんは、月を見ながらつぶやいた。

もしあの窓の向こうに行けたら、どんなにすばらしい本や物語と出会えるだろう。

冒険の本、動物の図鑑、まだ見ぬ世界の物語……そのすべてが、きっとあの不思議な図書館に眠っているに違いない。


二人の胸には、新しい秘密の約束が刻まれていた。

本を大切にする気持ちが、思いがけず秘密の世界へつながる窓を開いてくれる……なんだか夢のあるお話ですよね。みんなも図書館の窓をのぞくときは、ちょっとドキドキしてみてください。もしかすると、君だけに見える“ふしぎな景色”が広がっているかもしれません。

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