第101話「ひみつの近道」
いつも通っている道のほかに、じつはもうひとつ道がある――。
そんなことを知ったときのわくわくは、まるで宝物を見つけたようです。
今日は三人が偶然見つけた“ひみつの近道”のお話です。
ある日曜日の朝、さくらちゃん、ゆうたくん、みなとくんの三人は、町の図書館へ向かって歩いていました。
図書館には新しい絵本や冒険小説が入ったと聞き、三人は朝から楽しみにしていたのです。
「今日はたくさん借りるぞー!」
ゆうたくんはリュックを背負って、やる気いっぱい。
「わたしは植物の図鑑を見たいな。学校の宿題で役に立ちそう」
さくらちゃんはノートと鉛筆も持ってきています。
「ぼくは歴史の本かな。昔の人のくらしって面白いんだよ」
みなとくんはすっかり研究者の顔です。
三人はいつもの大通りを歩きはじめました。道は広いけれど、信号が多くて時間がかかります。
「図書館まで三十分くらいかかるよね」
「うん、でも近道なんてないし」
そう言いながら歩いていると、ゆうたくんがふと立ち止まりました。
「ねえ、あれ見て」
指さした先には、古いブロック塀に囲まれた細い路地がありました。塀のあいだからは、緑の木々がのぞいています。
入口には「立入禁止」とは書かれていません。ただ人があまり通っていないようで、草がのび放題でした。
「こんな道、あったっけ?」
さくらちゃんは首をかしげました。
「ここを通ったら、もしかして近道になるかも」
ゆうたくんの目は輝いています。
「でも……大丈夫かな?」
みなとくんは少し不安そうでした。
三人はしばらく迷いましたが、結局「探検してみよう!」と決めました。
路地に入ると、空気がひんやりしました。
左右には古い民家の裏庭がならび、時おり猫がとびだしてきます。
「にゃあ!」
「わっ、びっくりした!」
三人は声をあげて笑いました。
さらに進むと、道はだんだん細くなり、木の根が道を押し上げてでこぼこしています。
足もとに気をつけながら歩いていくと、小さな橋があらわれました。
「川が流れてる!」
さくらちゃんがのぞきこむと、川には小魚がきらきら光って泳いでいます。
「こっちの道のほうが楽しいなあ」
ゆうたくんは橋の上でジャンプして、板をぎしぎし鳴らしました。
橋を渡った先は、小さな森のようになっていました。
鳥の声があちこちから聞こえ、風にゆれる木の葉が、キラキラと光を反射しています。
「すごい……町のすぐそばなのに、まるで森の中みたい」
さくらちゃんは思わず深呼吸しました。
みなとくんは足もとに目をこらしました。
「この葉っぱ、学校で見た図鑑にのってた! カシワの葉だ」
「ほんとだ、どんぐりが落ちてる!」
三人は思わぬ発見に夢中になりました。
やがて道は二つに分かれました。右は日当たりがよく、広い道。左は細くて暗いけれど、まっすぐ続いています。
「どっちに行く?」
ゆうたくんがたずねます。
「左のほうが近道っぽいけど……ちょっとこわいね」
「でも探検なら、こっちを選ぶべきだと思う!」
三人は勇気を出して左の道へ進みました。
道はどんどん狭くなり、木の枝が頭にかかるほどでした。
とつぜん、ガサガサッと音がして、三人は立ち止まります。
「な、なに!?」
すると一羽のカラスが飛び立っていきました。
「……びっくりしたぁ」
三人は胸をなでおろしました。
さらに歩くと、古い石の階段があらわれました。
上っていくと、やがて視界がぱっと開けます。
そこには、町を見おろせる高台が広がっていました。
赤い屋根の家々、遠くの川、そして図書館の白い建物までもがよく見えます。
「わぁ、ここから図書館が見えるよ!」
「じゃあ、やっぱり近道なんだ!」
三人は思わず歓声をあげました。
高台の草原に腰をおろして休憩すると、風が気持ちよく吹きぬけます。
リュックから水筒を取り出して、交代でごくごく飲みました。
「なんだか遠足みたいだね」
「ほんとだ。図書館に行く途中とは思えない」
笑い声が高台にひびきました。
休憩を終えて再び歩き出すと、すぐに舗装された小さな通りへ出ました。
そこからまっすぐ進むと、図書館の裏口に到着したのです。
「やった! 本当に近道だった!」
「しかも楽しい発見だらけだったね」
三人は達成感でいっぱいになりながら図書館へ入りました。
本を借り終えて帰り道、大通りを歩きながら、さくらちゃんが言いました。
「同じ目的地でも、道がちがうと、こんなにわくわくするんだね」
「うん。これからは“ひみつの近道”も使おうよ」
ゆうたくんがにっこり笑います。
「でも、ちゃんと安全に歩かないとね」
みなとくんの言葉に、二人もうなずきました。
三人だけの新しい道は、これからもきっと特別な思い出をくれるにちがいありません。
同じゴールでも、道がちがえば見える景色も出会うものも変わります。
思いがけない寄り道や発見が、いつか大切な思い出になるのかもしれません。
あなたにも“ひみつの近道”はありますか?




