第100話「きんいろの夕焼け」
子どもたちが一日の終わりに出会った特別な夕焼けのお話です。
長くのびる一日が、きんいろに輝く空とともにしめくくられます。
土曜日の午後、さくらちゃん、ゆうたくん、みなとくんは町の小さな丘へ遊びに出かけていました。
丘の上には広い草原が広がり、遠くには川や家々の屋根が見えます。ときどき電車が線路を走りぬけていくのも見えました。
「今日は天気がいいから、ぜったい夕焼けがきれいだよ」
みなとくんがわくわくした声で言います。
「ほんと? わたし、昨日のお天気ニュースで聞いたの。『秋晴れの日は夕焼けがあざやかになります』って」
さくらちゃんが胸を張りました。
「じゃあ、夕焼けが出るまで遊びながら待とう!」
ゆうたくんがそう言って、三人は草の上にかばんを置きました。
まずは鬼ごっこが始まりました。
丘の草原は広くて、逃げても逃げても追いかけっこが続きます。
「ゆうた、はやい! 待ってよー!」
「つかまえられるもんなら、つかまえてみろー!」
さくらちゃんとみなとくんが力いっぱい走りますが、ゆうたくんは足が速くてなかなか捕まりません。
でも、丘のてっぺんで足をすべらせて転がってしまいました。
「わぁああー!」
ごろん、ごろん……と転がっていく姿に、二人はびっくり。
「ゆうた、大丈夫!?」
「……あははっ! 草まみれになっちゃった!」
三人は大笑い。丘の草原はやわらかく、転がってもけがひとつありません。
次は、落ち葉を集めての“落ち葉シャワー”。
風に吹かれて舞い落ちた赤や黄色の葉っぱを両手でかき集め、頭の上にふりまくと、きらきらとした秋の雨のように降り注ぎました。
「わぁ、きれい!」
「金貨みたいに光ってる!」
さくらちゃんは、頭に葉っぱのかんむりをのせました。
「どう? わたし、秋の女王さま!」
「じゃあ、オレは秋の王子!」
「ぼくは……えっと……秋の魔法使い!」
三人はそれぞれポーズを決めて、落ち葉の舞台で笑いました。
しばらく遊んでいるうちに、太陽がゆっくりと西の空に傾きはじめました。
空の色は、だんだんと変わっていきます。
最初はやわらかなオレンジ色。
それが、しだいに赤みを帯び、やがて空全体が金色にそまっていきました。
「わぁ……」
三人は思わず声を合わせました。
遠くの川が、夕日をうけてきらきら光っています。町の屋根も窓ガラスも、すべてが金色に包まれたようでした。
「こんな夕焼け、はじめて見た!」
ゆうたくんは目を見開きました。
「空が燃えてるみたい……」
さくらちゃんが小さな声でつぶやきます。
「きんいろの夕焼けって、ほんとうにあるんだな」
みなとくんは、息をのみました。
三人は草の上にすわり、しずかにその光景をながめました。
空の色は、刻一刻と変わっていきます。
オレンジから深い赤へ、赤から紫へ、そして少しずつ青が戻ってきます。
「色がどんどん変わっていくね」
「絵の具をいっぱいまぜたみたいだ」
「でも、にじんで消えていくんだね……ちょっとさびしい」
夕焼けの輝きは短い時間しか見られません。だからこそ、こんなに心に残るのでしょう。
さくらちゃんはそっと自分のノートをひらきました。
鉛筆で空をスケッチし、赤やオレンジの色鉛筆でぬりつぶしていきます。
「今日のこと、忘れないように絵に残しておきたいの」
ゆうたくんとみなとくんも、落ち葉やどんぐりをノートにはりつけました。
それぞれのやり方で、この夕焼けを思い出にしようとしたのです。
やがて、金色の光は完全に消え、空には夜の青が広がりはじめました。
東の空には、ぽつんと星がひとつ。
「一番星だ!」
「ねがいごと、ねがいごと!」
三人は手をあわせて、心の中でひそかに願いごとをしました。
丘の草原を吹きぬける風は、もう少しひんやりしています。
「そろそろ帰らなきゃ」
みなとくんが立ち上がりました。
「うん、でもまた来よう。今度は、もっとたくさんの友だちもさそってさ」
ゆうたくんが言います。
「そうだね。今日の夕焼け、みんなにも見てほしい!」
さくらちゃんは元気よくうなずきました。
三人は丘を下りながら、まだ頭の中に残る金色の光を思い出していました。
きんいろの夕焼けは、きっとこれからもずっと心の中で輝きつづけるでしょう。
特別な景色は、ほんの少しの時間しか見られませんが、だからこそ大切な思い出になります。
みなさんの心の中にも、忘れられない夕焼けはありますか?




