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第8話 風呂、入れると思った? 〜祝宴とタマの黄身〜

 ドラゴン討伐から一夜。


 俺たちは王都に凱旋し、英雄として迎えられた。


 ギルド前は人だかり。

 聖女リリアの活躍と、なぜか目玉焼きの俺が主役のように語られる謎の噂が飛び交っていた。


 「目玉焼きがドラゴンを爆発させたらしいぞ!」

 「実は、あの目玉焼きが、白き勇者様だって!?」


 なにそれ!? カルト宗教的な何かが始まりそうなんだけど!?


 リリアは人々の前で静かに手を合わせ、優しく微笑む。


 「これは、すべて神の導きです。そして……仲間の勇気のおかげです」


 そう言って、彼女はそっと俺のほうを見た。


 ふわりと微笑むその姿に、俺の黄身がぐらっと熱くなる。


 ……こ、この感じ! これは絶対、風呂イベント来る流れでしょ!!


 ***


 夜。王城内の客室。


 広すぎるベッドの上で俺は、ひときわぷるぷると浮かれていた。


 ジークは任務の報告で王と会談中。

 そして、リリアと俺は――。


 「タマちゃん。今日はがんばったから……一緒に、お風呂に行きましょうか」


 きたあああああああああ!!!


 俺の中のシャンパンコルク(※比喩)が弾け飛ぶ!


 「やっとこの時が来た……! 風呂の神よ、感謝します!!」


 リリアはタオルを手に立ち上がり、俺を胸元にそっと抱えた。


 まばゆい黄金の髪。微かに薔薇の香り。

 聖女というより女神……いや、天使? 精霊? それとも夢……?


 「それじゃあ、行きましょう。タマちゃん」


 「はい!! よろしくお願いします!!」


 この日が来るまで、俺は何度もジークと買い物デートしてきた。

 ようやく、報われる……!


 と、思った矢先。


 「リリア様!」


 扉がバン!と開いた。


 またかよ!!


 「王が緊急にお呼びです! 聖堂にて、儀式の準備を——」


 「え……今から?」


 「はい、今夜中に“神託の儀”を執り行いたいとのことです!」


 神託の儀!? なにそれ風呂より優先なの!?


 「……わかりました。すぐに参ります」


 リリアは、わずかに戸惑いながらも頷いた。


 そして——


 「ごめんなさい、タマちゃん。また今度、必ず一緒に入りましょうね」


 おおおおおい!? 風呂また延期かよ!!!


 ***


 その後、王城の聖堂で行われた“神託の儀”。


 リリアは白銀のローブに身を包み、祈りを捧げていた。


 荘厳な魔法陣が輝き、天より降りた声が響く。


 《……聖女リリアよ。闇が近づいている。お前と、白き勇者の力が鍵となるだろう……》


 「え、それって絶対、本物の勇者どこかに居るよね!?」


 急に物語の重要ポジションに巻き込まれてる!?


 「タマちゃん……やっぱり、あなたは特別な存在なのね」


 リリアが少し不安そうに、でもやさしく俺を見つめた。


 俺は全力で黄身を横に振った。

 まぁ、本物の勇者が現れるまでは、彼女のそばにいられるなら、戦ってみせるよ。


 たとえ、目玉が割れようとも!


 こうして俺たちは、聖女と目玉焼きによる“神託の冒険”へと、また一歩踏み出すことになるのだった——。


 そして、俺は固く誓った。


 「絶対次こそは、一緒に風呂入るからな!!」

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