第4話 聖女リリアと、森のぷるぷる!
街外れの森は、薄暗く、湿った空気に満ちていた。
ざわめく木々の合間から、冷たい風が吹き抜ける。
俺は、リリアの白く小さな手のひらに包まれていた。
「大丈夫よ、タマちゃん」
リリアは優しく微笑みかける。その微笑みは、疲れた心をも癒すような、穏やかで温かな光を宿していた。
頭の上に乗せてもらい、俺はふと思った。
——この子、本当に伝説に出てくる"聖女"そのものだ。
「気をつけろ。森には、様々な魔物が潜んでいる」
護衛として同行している騎士ジークが、警戒するように言った。
銀色の鎧に身を包んだその姿は頼もしいが、彼もどこか、この森の空気に緊張を滲ませている。
俺たちは静かに森の奥へ進んだ。
すると——
ズルリ、と音を立てて、茂みの奥から半透明の塊が現れた。
「スライムだわ……!」
そこにいたのは、ぷるぷると揺れるスライム。
体内には、どろどろと赤黒い核が沈んでいる。
「なに!なぜこんな所に、ランクBのマジカルゲルが……」
ジークが眉をひそめる。
「スライムの上位種か?だが、こうやって見ると、今の俺とたいして変わらなくね?むしろ、素早く動ける分、あいつの方が上じゃね?」
リリアは静かに俺を見つめ、そっと額にキスする仕草を見せた。
その瞬間、温かな魔力が俺の内側に流れ込む。
「タマちゃん、大丈夫。私が一緒にいるからね」
その言葉に、心がふわっと軽くなった。
俺の方が上だ!
スライムはぬるりと近づき、鋭く跳ね上がった。
ジークが剣を振り下ろすが、粘液に阻まれ核には届かない。
「くっ、物理無効か……!」
ドゴーン!ジークが吹っ飛ばされる!
スライムのプルプルがリリアに迫る。
「リリア! 危ない!」
ジークが叫ぶ。だがリリアは微笑んだままだった。
「信じてるわ。タマちゃん」
その瞬間だった。
——やるしかない!!
俺は心の中で叫び、力を解き放った。
【スキル「エグゾーストジャンプ」発動!】
黄身部分がじわりと熱を帯び、全力で飛ぶ。
黄色い弾が、スライムに向かって放たれる!
ゴッ!!
俺がスライムを直撃し、その透明な体を貫通し、赤い核をを撃ち抜く。
そして——
ボンッ!!
小さな爆発音と共に、スライムは四散した。
静まり返る森。
リリアが俺を両手で包み、そっと囁く。
「ありがとう、タマちゃん。あなたのおかげで、誰も傷つかなかったわ」
その瞳は、まるで祝福そのものだった。
慈しみと感謝に満ちた、誰もが憧れる"聖女"の瞳。
俺は思った。
死ぬかと思った~俺の核が壊れなくて良かった~
【経験値を獲得しました!】
【レベルアップ Lv1→Lv2】
リリアは胸元で俺を抱きしめると、そっと森の奥を見やった。
「この世界には、まだたくさんの困難があるわ。
だけど——きっと、私たちなら乗り越えられる」
その声に、不思議な力が宿っている気がした。
ジークも感心したように笑った。
「意外にやるな」
俺はちょっと照れくさくなりながら、プルプル震えた。
これが、俺の新たなスタート。
目玉焼きだけど、聖女の相棒だ。
やってやろうじゃないか。




