第3話 目玉焼き、冒険者デビュー!
白亜の城のすぐそばにある、立派な建物。
そこが「王都ルミナリア冒険者ギルド」だった。
ガラン、と重厚な扉が開く。
リリアに抱えられた俺は、わけもわからずギルドの中へと連れ込まれた。
中は広い酒場みたいな雰囲気で、剣を背負ったごつい男たちや、ローブ姿の魔術師たちが雑談している。
そんな中、金髪ワンピースの美少女が、胸元に目玉焼きを抱えて登場!
……超、浮いてる。
すぐに視線が集まった。
「おい、あの子供はなんだ?」
「朝食でも持ち込んだか?」
ざわつく場内。
だが、リリアは臆することなく、真っ直ぐカウンターへ歩いていく。
受付嬢の美人エルフが、にっこり微笑んだ。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
リリアはきっぱりと言った。
「この子を、冒険者登録したいの!」
——はい??
俺、完全に聞き間違えたかと思った。
だがエルフの受付嬢は、まったく動じなかった。
さすが異世界、適応力がすごい。
「……では、本人の意思を確認しますね」
え、意思ってどうやって。
エルフ嬢は、カウンターの奥から小さな水晶球を取り出した。
それにそっと、俺を乗せる。
「心の声を、聞かせてください」
水晶が光る。
すると頭の中に問いかけが響いた。
【あなたは、冒険者登録を希望しますか?】
——いや、希望とか言われてもな。
でも、リリアの期待に満ちた瞳を見たら、断れなかった。
俺は、心の中でそっと答えた。
【はい……たぶん?】
ピカッ!
水晶球がまぶしく光り、周囲がどよめいた。
「登録成功です! ……しかも、固有種判定!」
「固有種!?」「あれは、魔物か?」
ざわつくギルド内。
受付嬢は興奮気味に説明を始めた。
「この方は《聖なる目玉焼き種》! 生物カテゴリ:神聖存在! ランク初期値……B!」
どよめきが爆発した。
Bランクスタートは、普通の冒険者なら絶対にありえない。
それこそ、竜を倒した英雄クラスの扱いだ。
「マジかよ……目玉焼きなのに……」
「おれ、剣で10年頑張ってもC止まりだぞ……」
周囲から嫉妬と羨望と困惑の入り混じった視線を浴びながら、俺はプルプル震えた。
……これ、絶対ろくなことにならないやつだろ。
登録が完了し、「ギルドカード」を発行してもらった俺。
ギルドカードは小指サイズで、リリアのペンダントに吊るされることになった。
「これで、あなたも立派な冒険者ね!」
リリアは無邪気に喜んでいる。
だが、問題はここからだ。
受付嬢が、さらっと恐ろしいことを言った。
「それでは、早速最初のクエストを受けていただきますね?」
「クエスト……?」
「はい。登録した以上、1週間以内に成果を出さないと、登録抹消となります。」
ぎゃああああああ!!
そんなブラックシステム誰も聞いてない!!
冒険者業界、世知辛すぎるだろ!!
リリアは「がんばろうねっ!」と無邪気に笑う。
受付嬢がクエストボードから一枚の紙を持ってきた。
「おすすめはこちらです。《街外れの森に出没するスライムを討伐せよ》」
スライムか……。
まあ、異世界の定番だし、いけるかもしれない。
だが俺は、ひとつ重大な問題に気づいた。
——俺、戦えるの?
プルプル震えながらも、俺は覚悟を決めた。
やるしかない。生き残るために。
リリアは嬉しそうに俺を頭に乗せた。
「さあ、行きましょう。タマちゃん!」
こうして俺は、異世界初クエストへと旅立ったのだった。




