「昔の作品はよかった。それに比べて今の作品ときたら……」と言ってしまうのは何故なのか
どうも、熊ノ翁です。
「近頃の〇〇は~」という文言、よく聞きますよね。
若者はもちろんとして「近頃の漫画は~」でも「映画は~」でも「ゲームは~」でも、とりあえず昔の物事を持ち上げて、今の物事をぶっ叩きまくる。
そんな感じの風潮、いつの時代もありますよね。
創作界隈でも「昔のラノベは良かった。それに比べて今のラノベときたら~」といった事をおっしゃる方をよく見かけます。
しかしこれは考えてみれば不思議な事です。
「昔の〇〇は良かった。それに比べて~」と古代エジプト時代の壁画かパピルスあたりにでも書かれてそうな伝統的老害ムーブを取る方々もかつて若かりし頃に同じ経験をしてきたはずです。
理解の無い大人たちに自分の好きな作品を否定され、悔しい思いをしてきたはずです。
そんな周囲の無理解と、そこからくる憤りは彼ら彼女らも十分よくわかっているはず。
なのに何故、過去に自分が受けたのと同じ悲劇を再生産しようとするのか。
虐待を受けて育った人は、自分の子供にも虐待をする的なアレなんでしょうか。
ハタから聞いてて理解に苦しみます。
大体、今の時代は昔に比べて創作活動をする人口はめちゃめちゃ増えています。
イラストでも漫画でも音楽でも、クリエイターの数は過去一多いことでしょう。
ラノベに至っては刊行点数で考えれば今の時代がダントツで多いです。
ハルヒがアニメでやっていた時代のように、新刊すべてを本屋さんに平積みしておいておくなんて真似はまず出来ません。
漫画も映画も市場規模は年々世に出る作品の発行点数は増加傾向にあり、どちらも1990年代に比べて1.5倍から2倍ほどに増えています。
そして、スポーツでもなんでもそうですが、プレイヤーの数が増えればそれだけトップ層のレベルも上がります。
そういった事情を踏まえて考えれば、昔に比べて今の時代の創作物がことさらレベルが低いというのはちょっと考えづらいです。
でも、それはあくまで理屈の話。
ぶっちゃけ熊は、この「昔の作品は良かった」と語り出してしまう気持ちは何となく理解できてしまいます。
理由は人間、子供の頃の記憶ほど鮮明に残っているからです。
大人になると、一週間前に何喰ったかも余裕で忘れるわけですが、しかし子供の頃の学校の時間割や、放課後に友達と食ったよくわからん「ねるねるねるね」的な謎の実験おやつについて覚えてたりします。
そりゃ、子供の頃に初めて見るロボアニメと、大人になり山のようにロボアニメを見た経験がある上で同ジャンルの作品を見た場合。
両ケースを比較すると、子供の頃に見た記憶の方が強く残っている事の方が多いでしょう。
なので作品の質が同程度なら、見た側の印象は若い頃の方が基本的に強いでしょう。
だから、もし本当に過去と今の作品でどちらが良いかを主観的印象込みで比較するなら、初見の作品同士を同時期にやるしか無いんじゃねえかなあと思います。
30歳中年が、1980年代の作品と2020年代を同時に読んで比べる、というような。
それでさえ、話の内容によっては当時の情勢を知ってる知っていない、現代人が現代についての作品を読むのと、そうでないのではライブ感が変わってくる等の違いはあるのでしょうが。
とりあえず、スタートラインとしてその辺りは最低限整えておかないと、主観的な評価のズレから、昔の作品の評価を高くしがちになる傾向は出やすいんじゃねーかと熊は思います。
で、何でまたこうなるのか。
子供の頃の記憶がどうしてこんなに印象強いのかについて、ちと考えてみたのですが。
理由の一つに、子供の頃に習得する知識や経験の方が、生きる上で重要度高いからなんかなと思ったりします。
野生生物で考えてみたとしても、獲物の食べ方、とらえ方、天敵からの隠れ方等、基礎的な物事ってまあ若いうちに一通り身に着ける事になるわけですが。
これら若い頃に身に着ける知識って、忘れると死んじゃうんですよね。
人間でも、横断歩道の渡り方や、学校での集団行動のやり方やトイレのマナー、社会生活を生きる上で必要な金銭のやり取りに使う四則算に、文字の読み方。
この辺、大体20歳までに一通り覚えきるわけですが、人間社会で生きるのに必須のスキルです。
それに対して、ある程度年老いてから身につけた知識って忘れてもそんなに死なないんですよね。
若い頃に学んだ事の応用でどうにかなりますし。
極端な例だと、掛け算忘れても力業で足し算繰り返せばどうにかなるよね的な。
だから人間、というか生物ってそもそもの脳の構造が「生存に直結する若い頃の経験を重要視する」って具合になってるのかと思います。
後は、よく言われているのが「過ごした人生の割合の法則」とかか。
例えば、10代の少年少女の一年が今までの人生の中で占める割合と、30代中年の一年がこれまでの人生に大して占める割合。
片方は人生の10%弱なのに対して、もう片方は2%ちょいです。
そりゃ人生の占有面積的に印象や記憶も薄くなるよねってなもんです。
とまあこんな感じで、そもそも我々は「昔の〇〇は良かった」と言いがちな生き物なので、その辺を自覚した上で昔と今の物事の比較は行っていきたいものですやね。
「昔の作品はよかった。それに比べて今の作品ときたら……」と言ってしまうのは何故なのか……END
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