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10話 安らぎ

壁に手をつきながら、石畳の階段を下りていく。小さな窓からは、真っ暗な夜空と、丸いお月様が綺麗に見えた。燭台についている火は、私とファミリアを助けてくれた命の恩人がつけてくれたのだろうか。

ファミリアが私の顔を覗き込み、心配そうな顔をしていたので「大丈夫だよ」と頭を撫でた。


安心した様子のファミリアに引っ張られながら階段を下りていくと、1階の地面が見えてきた。

私とファミリアが助かったのは、この2人のおかげらしい。






1人目は、優しそうな顔をした年配の男性。


「大丈夫かいファミリアちゃん。おぼんが落ちたようだけど」


そう言いながら、体を小刻みに震わせてファミリアを心配してくれていた。



2人目は、4つのカップをテーブルに並べている年配の女性。


「寒かったでしょう?暖かいココアを淹れたから、テーブルに座って飲みましょう?」


女性は私にそう笑いかけてから


「ファミリアちゃんが怖がってるでしょうが!このおいぼれ爺!」


と男性にげんこつを叩きこんでいた。男性は


「なんじゃレナ。もしかして妬いておるのか・・・?」


と呟きながら、テーブルを囲む椅子の1つに腰掛けた。


「さぁ、あなたたちも座って。ココアでも飲みながら、4人でおしゃべりしましょう?」


木製の椅子に腰をつきながらカップを口にもっていく女性に手招きされて、私とファミリアもテーブルを囲んだのだった。







最初に軽く自己紹介をした。


2人の名前は、男性がロッゾ・スモーク、女性がレナディア・スモークというらしい。


ファミリアは、倒れている私をロッゾが運んでくれたのだと教えてくれた。

体が震えていたのは、雨に打たれながら私を運んだのが原因のようだ。

私が感謝をロッゾさんに伝えると


「いいんじゃよこのくらい」


まるで大したことはしてないとばかりに、ロッゾは手をひらひらと震わせていた。

その後、私はこれまでに体験してきたことを4人に説明した。


気づいた時には自分が誰かも分からない記憶喪失であったこと。

コーン牧場跡地の藁ベッドで寝ていたらファミリアに襲われたこと。

食べるものを求めて、2人でこの国に来たこと。


ファミリアが悪魔だという情報以外、思いつくすべての出来事を4人に伝えた。

スモーク夫妻は、私の話をずっと真剣に聞いてくれていた。


命の恩人に隠し事をするのはとても心が痛む。

しかしファミリアが悪魔だとわかったら、こんなに優しいご夫妻さえ私たちを追い出すかもしれない。

だからファミリアを守るためにはこうするしかない。

奴隷商の話が私の頭にチラついて、助けてくれた命の恩人でさえ信用できなくなっていたのだ。


「・・・フフフフフ」


先ほどまで真剣に話を聞いていたロッゾが、突然笑い始めた。


「フフフフフ。ファ~ッハッハッハッハ!!!!」


「・・・ウフフ」


高笑いするロッゾさんにつられてレネディアも笑いをこぼす。私はそれがとても怖くって


「一体なぜ笑っているのです」


と、2人に問いただした。


もしかしたらこの2人は何か企みを持って私たちを招き入れたのか。

私はファミリアの位置を確認して、外に飛び出す為のドアを捜した。

その様子を見たロッゾが「いや悪い悪い」と手をひらひらさせてこう話してくれた。


「わしらは、先ほどまでお前を疑っていったんじゃ。こんな雨の日に小さい子どもを連れ歩くなんて正気の沙汰とは思えんでな?」


「だが話を聞くにあんたはこの子を危険にさらすどころか、ずっと守っていたんじゃろう?自分の考えが的外れすぎて笑ってしまったんじゃ」


ロッゾが話しきった後。レネディアが私の前に来て手を握ってくれた。


「疑ってしまってごめんなさい。あなたはずっとこの子を守ってくれていたのよね?」


手に感じるぬくもり、信じてくれる喜び、ドアを叩くたびに断られる悲しさ。

それ以外にもたくさんの感情が溢れてしまって



「・・・うん」


私はただ頷くことしかできなかった。

感情をなんとか押し込もうと震える私を、レナディアは優しく抱きしめた。


「よく頑張ったわね、本当にいい子」


押し込めていた感情が、涙となって流れ出る。

気づけば私もレナディアの膝に抱き着いて、涙を流していた。

レナディアの膝で泣きじゃくる私を見て、ファミリアがそっと体を寄せてくれた。



暖かな気持ちでいっぱいになったその夜は、中々泣き止むことができなかった。






p.s

その夜はロッゾも私にだきつこうとしていたらしい。

その際、忍び寄るロッゾをレネディアが殴っていた・・・。

と後日ファミリアが教えてくれた。



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