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第十一話 風雲急を告げる。

「果たして……あれで良かったのか?」


 目的地は魔王領・最南東の街——テニオス。

 そこへ向かう道中——送り出してもらった彼女達の顔が浮かぶ……


『……元気でやれよっ!!』


 そう言ったアリシアは力強く、ルディを抱きしめる。

 その娘に続き、ジジもルディに握手を求める。


『良い酒の肴を期待しておるぞ』


 二人の言葉に少々の違和感を感じるが、ジジ村長との握手が終わると間髪入れず。


『ルディッ!!私はいつまでも待ってるからっ!!』


 一粒の大きな涙を堪え、熱い抱擁を交わすルリス。


『『『お前の家族はここにいるからなっ!!』』』


 村人達の混声が言葉一つになって聞こえる——


 ——三日三晩続けられた騒ぎの次の朝。


 俺はみんなに見送られ。


 村のみんなは、涙と笑顔が混ざる何かを堪える様にもの哀しげな表情になっていた——


「——今生の別れかなにかだと……思ってそう……」


 "二日程"で村に帰宅する予定の少年にとって……

 村人達の想いはいかに受け止められたか……


「や…ややこしい………」


 困った表情で歩くルディは目的地までのあと数時間を言い訳を考えるのに要すのであった。


 ■■■


「ムーちゃん!!あとどのくらい耐えれる!?」

「…血反吐吐いて……いいなら……十数分…」


 テニオスを覆った魔障壁は魔回路が破壊されていき、それを修復する術式も残り時間少ないと 森の賢者(ムー・ペオル)は言う。


「血反吐吐かなくていいから!!というか、冗談言えるくらいなら大丈夫そうだね!?」


 そう言い残した勇者は——魔物の侵入する障壁の穴へと援護に向かう……


『——冗談言えるくらいには大丈夫!!私に任せてなさい!!」


 ゆくりなくも、 彼女(キオナ)の姿が——


 ——記憶の人物と重なってしまう——


「……やなこと…思い出した……」


 ■■■


「チッ……クソが。引っ切りなしに、なだれ込みやがって——」


 ディアーナは 物憂(ものう)げに、障壁より無秩序に這い出る魔物を横薙ぎにする——

 その彼女と並び戦うペトラは上官であるディアーナに疑問を投げかける。


「なぜ、大量の"中級クラスの魔物" がこの場(スタンピード)に……」

「そりゃ……考えたくねぇな…」


 ディアーナの思考が消極的になる理由——それは。


 ——"スタンピード"には『何らかを起因』が存在する。

『その存在』の影響は、生物に"恐怖や混乱"の感覚を与え。

 種を問わず 伝播(でんぱ)していく——


 ——そうして引き起こされる現象が。


 ——" 異常行動(スタンピード)"——


 つまり—— 弱肉強食(自然界)の上層に位置する"中級の魔物"は『起因』になり得ることの方が自然である……


 ——しかし。


 "其れ等"が『起因』でなかった場合……


「向こう側に…一体『何が』居るんだ……」


 ■■■


 木々の隙間よりかすかな光差す森の淵。

 横柄に座る男とそれに(へりくだ)り言葉を発するもう一つの影。


「報告しますっ!」


 部下の言葉に、男はわざとらしく、深緑の髪をかきあげる。


「フロウ……発言を許そう」

「はっ!!現在、魔障壁の3割が損傷。敵の戦力は確実に削がれていますっ!!」


 木々の隙間より照らされる男の表情には、不敵に笑みが浮かび上がる。


「オレ様は——好機を逃さない……ケケッ」


 ■■■


 俺はいま。

 日差しに当てられ硬い地面を踏み締める筈だった道を——

 ——涼しく座り心地の良い馬車で閑談を交えて進んでいる。


「——ルディ様、そう畏まらないで下さい」


 目の前に座る少女らと共に……


「——"アレイラ"様、申し訳ありませんが。そのご要望にはお応えしかねます」


 ルディは当たり障りのない断りで頭を下げる。


「はぁ……子どものくせにお堅いですわね」


 少女は退屈を息にした様子を見せる。


 少女の名は。

 ——サフィレット・フォン・アレイラ——


 フーリッシュ王国"サフィレット伯爵家"の娘。

 サフィレット伯爵家は王国北西部に広い領地に持つ、魔王との戦線に最も近いと名の高い領主である。


 ——要するに。

 ——目の前の 少女(アレイラ)は、ルディの生まれ育った 故郷(オル村) 領主様(あるじ)のご令嬢である。


「アレイラ様。つかぬことをお伺い致しますが、なぜ僕を馬車に?」


 テニオスに向かうため、オル村を出立してまもなく。

 ルディは前方にアレイラの乗る馬車を目にした。

 彼は足を緩め、静かに隣を通り過ぎる筈だった。


『そこの少年!!この馬車に乗れ!!いいからっ!!早く乗ってくれっ!!』


 そんな感じで理由も聞かされず無理やりに乗せられたわけだけど……

 馬車の中で待っていたのはニコニコとした少女一人。

 その後、名前と年齢。

 何処から、なぜテニオスに向かっているのか等の質問攻めにあった。


「『おもしろい』と思ったからですかね?」


 少女は窓の外を眺めて答える。


「『おもしろい』……?」

「まぁ。それも杞憂に終わりそうですけど」


 ……悪かったですね……話のつまらない男で——

 女性とは幼くして怖いものです。


 と、少し。

 気まずい空気の中。


 何やら外が——騒がしく。


「敵襲——!!敵襲だっ!!」


 どうやら敵意を持ったモノがこの馬車を狙いっているらしい……


 金属が重なり合う音の中。

 護衛の声が馬車の外壁より伝わり聞こえる。


「お嬢様、敵影は盗賊でございます。"()()()()()"外には出ない様お願いいたします」

「分かっております……」


 少女は至って冷静に返答している。

 慣れてる様子だな……貴族ってそんなに日常的に物騒なの?


「あの……僕も加勢しましょうか——?」


 護衛に聞こえるよう壁に近寄り話しかける。


「ははは。感謝するよ少年。でも、ここは俺達に任せてくれたまえ」


 断られた。


「では、お嬢様"()()()()()"外に出ない様お願いいたします!!」

「ええ。分かっておりますとも」

「本当ですからね!?頼みますよ!!」


 そう言って護衛の影は無くなっていく。


 念を押すように外に出ないことを強調させていたな。


「失礼致しましたわ…ルディさん……」

「は、はい…?」


 先程の会話中の目とは打って変わり。

 少女の自然と輝かせた瞳は無邪気に——そして悪戯に。


「——"()()()()()"なってきましたわね!!」

「……そ、そうですね」


 ——こりゃ"()()"ありって感じですね……

いつもご拝読いただきありがとうございます。


皆様の反応がすごく励みになっております。

作品への感想などございましたら是非書いて頂きたいです。

全て読ましていただき返信させていただきます!!


今後とも宜しくお願いいたします。

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