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第一話 『お引き取り願います』勇者様。

 ——NPC。

 ——それは、ノン・プレイヤー・キャラクターの略称。


 ——NPC。

 ——それは、ゲーム上においてプレイヤーが操作しないキャラクター全てを指す言葉である。


 ■■■


 "魔王領"最南東の街——"テニオス"


 現在この街は、魔王討伐の『最終拠点』として利用するため。

 人類連盟軍が占領を目的に凶悪な魔王軍との激烈な交戦を繰り広げている……


「なんだ?誰もいねぇじゃねぇか?」


 ——はずなのだが。


「さて?上層からは何も伺ってませんが」

「……だるい……ねむぃ」

「ああっ!こんな所で寝ないで!?」


 各国、国王よりテニオスへと援護要請が命された勇者一行。

 しかし、一行がテニオスにて目にしたのは報告に相反する閑散とした街中。


「軍の奴ら、もうヤられちまったか?」

「それはどうでしょう…この街に瘴気は満ちていませんし、ましてや争いの痕跡すら見当たりません……」


 異様な空気を放つテニオスの街並み。


「ねぇ、あそこの家のそば…いま何かが動いて」


 そんな街の視界が霞む距離。

 家屋の影に動くなにか……


「んー?ありゃ……()()か…?」

「こ、子ども……?」


「おーい!!そこのガキー!!」

「ちょっ!?アレが魔族の方だったらどうするんですか!!」


 無鉄砲に大声を上げた彼女に対して戒めの言葉をかける。


「だぁいじょぶだってー。なんてったって、オレらは天下の勇者パーティだぞ?」

「と、言ってもですね…」

「……」

「あ、あの子。こっち見て——る?」


 何か肩に担いだ様に見える人影は声の元を辿るように、こちらへと視線を向けた……


 その瞬間——


「——はっ?」

「——消えっ!?」


 視界から忽然と影を消し去る。


 ——そして。


 その現象に代わる様に"彼女の目前"で聞こえてきたのは、成熟し切らない中性的な声だった。


「——十二年……やっとだ」


 ——"少年"は"女勇者・キオナ"の腕を掴み自身の眼前へと引き寄せる。


「このガキっ!?」

「キオナさん!!」

「…………」


 彼女の視界に収まらない少年の顔……


「あ、あなたは……?」


 キオナの視界に映った彼の顔、彼女はどこか懐かしげな思いを抱く。


「…………」

「…………」


 顔を合わせる二人の()には静寂。

 勇者と敵の距離ゆえに動くこと叶わぬ他。


「すぅ……」


 少年は心を落ち着ける様に息を吐く。


 ——して、神妙にて口は開かれる……



「——勇者よ魔王は……討たれた——」



 ——晴れやかな少年の表情。



「——お引き取り願います——」



 ——少年の言葉に彼女達の時は止まり。


 ——彼女達が感じ取ったのは。


 ——働かない思考との対面だった。


 ■■■


「へい。今回貸したゲームはどうだったかね?」

「はいっ!!昨日徹夜にて無事、全エンディング拝見致しましたっ!!」


 ——NPC。

 ——それらは。


「いや、それはもう今日なのよ」

「そうとも言う〜」


 ——決められた"行動"と。

 ——決められた"台詞"を。


「あんた、一限の国語。小テストだよ?大丈夫なの?」

「いやぁ…さすが10年以上前の神ゲー……その噂は(まこと)だった……」

「はぁ…まったく……あたしゃ、知らないよ?」


 ——大抵その多くはプレイヤーの目に留まり、物語の一つの凡庸な要素として認知される。


「異世界から召喚されし【女勇者・キオナ】臆病ながらも大和撫子の心を持った美少女…あぁ最高……マジ、推しだわー」


 ——一方で、虚しくもプレイヤーのプレイの仕方により、認知さえされないモノも存在する。


「そこに関しては、全く同意ね。ビジュも良くて、性格も控えめ、The・正統派って感じよね。加えて、彼女を引き立ててくれる個性的なパーティメンバーも魅力的だったわね」

「メンバーキャラも勿論なんだけど——この神ゲーの根幹はN()P()C()の作り込みだよね〜」


 ——そんな一つの要素にすぎない……彼らの事をプレイヤーは"脇役"として見るのが当たり前で。


「流石……分かってるわね…『特に』序章の……」

「……『特に』最終章のNPCねっ!?」


 ——そんな、脇役には"意思"なんてなくて。


「——えっ?」


 ——全てが、決まった"筋書き"通りに行動する。


「——ん?」


 これは、そんな脇役達の……


 ——主観の物語である——

初めまして、小森と言います。

ほのぼのとやっていきますので暖かく見守り下さい。


いつもご拝読いただきありがとうございます。


皆様の反応がすごく励みになっております。

作品への感想などございましたら是非書いて頂きたいです。

全て読ましていただき返信させていただきます!!


今後とも宜しくお願いいたします。

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