6話二菜と聖教
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一晩経って刺された傷の痛みはほとんどないけど、寝て起き上がる時など腹筋に負荷がかかると痛みが出る。
腹筋って無意識に使ってて気づかないけど、怪我をすると意外と負荷がかかってる事がわかるんだよね。
内臓の方にも少しダメージがあるけど、どれぐらいかわからない。
ただ、食欲がないので少なくとも今日1日は水ぐらいにしておいた方がいいかもしれない。
怪我の方はいいとして、今日は怪文書の内容の真偽と暗殺計画の証拠をジェリスに報告しに行く。
貴族地への出入りが可能とわかったので1人で行くけど、問題はジョーノと出会わないかという事。
城へ籠っているが、予定外に屋敷に戻ってくる事がある。
それがいつなのかは不明であるから、ばったり出会う可能性もある。
ただ、移動は馬車なので貴族地以外ならば紛れればいいので気にしないが、問題は貴族地に入ってから。
貴族地に入ったら誤魔化しようがないから、ジョーノに気づかれたら色々面倒だけど、その時はその時。
貴族地で手を出す事もないだろうから、とにかく今はジェリヌの所へ行こう。
貴族地の門も問題なく通れてグリフォン家へいく。
貴族地まで徒歩で来ると意外と距離があって、思ったより時間がかかる。
ただ、貴族地を歩いて移動するのは使用人や外部の業者などだから貴族の身分があって徒歩というのは恥ずかしい
っと他の貴族から思われそうだけど、今回は予定外の訪問だからエドも時間がないのでしかたがない。
もっとも、服装は平民だから貴族と思われないとは思う。
グリフォン家へ着き門番にジェリエンヌがと会えるか聞いた所、あたしが来たら留守でも通すようにと言われているが今は在宅だそうだ。
とエドと来たと同じ部屋に通されで待っていると、しばらくするとジェリスが部屋に入って来た。
「おまたせしましたわ。今日は個人の用なので、そのままで構いませんわ。あと、話し方もいつものどおりでいいわ」
「わかった」
ジェリスが座ると、早速本題に入る。
「初めから分かってたと思うけど、あの怪文書の内容は本当で証拠も入手したよ」
あたしは収納スペースから暗殺計画をだすと、それをジェリスが手に取り内容を確かめる。
「これは確かにジョーノの筆跡だわ。あと、公爵印も押されてから、本物ね」
「ということは、これでジョーノを追い詰めれるって事かな」
「ええ、出来ますわ、リットン家を潰す事が可能です。ただ、貴族を処分出るのは国王陛下だけ。なので、この書類を陛下に提出しないとならないわ」
「ああ、やっぱり簡単にはいかないんだなぁ」
「提出が出来るのは公爵でないとなりませんが、アディルは今は手がなせないのです。あと、わたくしは提出する事はできませんので」
「そうなると、誰が提出するの?」
「誰って、ジョーノ以外で公爵の爵位を与えられてるのは二菜だけですので、二菜が提出するに決まってますわ」
ああ、そうだよね、こうなるよね。
でも、確か提出は宰相に渡せばいいから、謁見する訳じゃないからいいか。
「確か、宰相に提出すればいいんだよね?」
「普通ならばそうですが、暗殺計画の密告なので直接国王へお渡ししないとなりませんわ」
「え、そうなの!?」
「現在の宰相はアディルなので問題ないですが、宰相自信が黒幕だったらもみ消されてしまいますよね?
だから国王に直接渡すのですよ」
「で、でも、国王に渡すと言ってもどうやってやるの?急に行っても謁見できないでしょ?」
「ところが出来るのですよ、二菜さんの場合。何せ二菜さんは聖教で2番目に高い地位での方でもありますから。そのような方が国王に会いたいと言えば、急に訪れても謁見・・・いえ、お会いできますわ」
謁見ではなく、会えると言ったのは聖教は宰相同様、国王を選べる力があるからだ。
さらに言えば、国どころか王国自体を乗っ取るぐらいの力もある。
その聖教の2番目高い地位の人間が会いたいと言ったら、国賓が来ていたとしてもこちらを優先するぐらいで
国賓ですら聖教相手なら仕方がないと思う程だ。
「そうだとしても、ヒーリッチ殿下・・・いや、陛下に会うのは・・・ちょっと」
「二菜さんは陛下とは幼い時からのお知り合いでしょ?何を気にしているのですか」
「だからなんだよ、陛下はあたしの事大好き過ぎてちょっと・・・。あと、ジョーノも今は城に籠っているからあたしが陛下と会うとなったら怪しむでしょ?」
「それも大丈夫ですわ。ジョーノは今帰宅中で、屋敷で執務を執るそうですし。二菜さんが来る前に、アデールの使用人から連絡がきましたので」
「そうれならいいけど。でも、この格好で城へ行く訳にも行かないし、登城は馬車と決まってて馬車なんてないよ?」
「確かにそうでしたね。聖教の人間として行くとなると、わたくしの馬車を使う訳にも行けませんので聖教に頼みにいくしかないでしょう」
聖教の人間として行くとなると、こうなるよね。
ただ、聖教は正直言って今回は関わらずに終えたかった。
前回帰る時にあれこれ理由をつけて留めさせようとして、あたしがキレて出て行ったかため。
地位的にはあたしの方が上だけど、現実だとあたしは一番下だったからね・・・。
なので、行く気がしないけどいかないとならないか。
「他に方法はないの?」
「公爵として行くのならば、わたくしの馬車をお貸しできますが、そうなると謁見になりますので時間がかかりますわ。早ければ数日ですが、現在の状況だと戴冠式が終了後から数か月にになりそうですわ」
「それはかかりすぎだね・・・」
「さらに言いますと、戴冠式前15日前は聖教の方でもお会いする事が出来ない決まりなので、今日を入れてあと10日ほどしかありませんわ」
10日あるというより、10日しかないと考えたほうがいいか。
それに、今日は実質カウントに含まれないと考えた方がいいから、あと9日。
しかも、バンの村に戻って報告やミュレイに話す事があるからもっと短い。
「仕方がない・・・聖教へ行ってくる」
本当は行きたくなかったけど、この状況では行くしかない。
「馬車でお送りしますわよ?」
「いや、歩いて行くよ。グリフォン家の馬車が来たら噂が経つと思うから」
「確かにそうですわ。しかし、二菜さんと聖教は色々あったようですが」
「あったから行きたくない・・・」
前回来た時、聖教の学校の講師をやりつつ、表と裏の仕事もやってたけどこの事は今回は関係ない。
問題になるのは元の世界に戻る時に喧嘩別れをした事だった。
なので、聖教に関わる事はしたくなかったけど、仕方がない。
「故郷に帰る時、あたしを意地でも帰さないようにしたから、怒って大司教を殴ったからね・・・」
「はじめ聞いた時驚きましたが、結局は何もなかったのでしょ?」
「あたしも聖教の裏を色々知ってるからね。大司教って言っても、若い頃から知ってて弱みを握ってはいる」
「それは罰せられませんね」
「しかし、次期法王を殴った事を思うとね・・・。そういえば、法王になったのかな?」
殴った相手は次期法王であったが、選ばれる前に帰ったから結局どうなったのだろう。
名前を出して聞いてみたら
「はい、なりましたよ。ただ、現在はお辞めになり、代わっていますが」
「そうだったんだ。でも、あたしの地位が剥奪されたりしてないのかな・・・」
「地位の剥奪は公開されますが、されていませんので大丈夫です。されてましたら提案はしませんわ」
「ならよかった。では、聖教へ向かうかな」
「わかりました。それではお気をつけて」
「うん、わかった」
あたしはジェリスとフランクさんに見送られて屋敷をでてそのまま宗教地へ向かう。
宗教地は名前通り聖教に関する施設がある場所。
宗教施設である大聖堂を中心に、聖教の運営を行っている聖教庁、修道院や孤児院、学校がある。
わたしが行くのは聖教庁でここで馬車の手配をするけど、もちろん行ってすぐ出来るものではない。
さらに言うと、普通は聖教庁自体に入る事も難しいが、司教の地位があるから出入りは自由ではある。
服装は平民の服のままでも大丈夫だったりするが、あたしが例外なだけではあるけど。
とはいえ、それは以前の話。
赦されてると言っても、しっかり和解した訳ではないのでどうなってるかわからない。
念の為、聖教庁へは魔法でストラに着替えてマントを着用していくことにした。
聖教庁の近の物陰で着替えを終えるて、聖教庁の入口へ行くと門番に止められたけどこれはいきなり司教が来たので驚いての事。
「すみません、司教様とお見受けされますがどなたですか?」
「あ・・・わたくしは二菜です」
「二菜様といいますと、あの二菜様ですか?」
「他に二菜という名の司教がいるかわかりませんが、二菜と言えばわたくし一人のはずです」
「存じております。しかし、二菜様は故郷におかえりになったと聞いておりますが」
「再び旅に出てこちらに戻ってまいりました」
「そうでしたが。では、どのようなご用件で?」
「王城へ火急な用事が出来てしまいましたが、わたくしは馬車がありません。訳あって知り合いの貴族の馬車は使えず、聖教に協力を賜りたく参りした」
「そうですか。少々お待ちください」
門番は訳を話すために、建物へ入って行ったけど、大丈夫かな?
ダメなら別な方法を考える。
いざとなったら魔法で城に忍び込んででもヒーリッチ陛下に会って渡そう。
一方、聖教庁内では
「二菜様がいらっしゃったのは本当か?」
「はい、そうおっしゃってます。ただ、私は二菜様がお帰りになった後に入門しましたのでお顔を知りません
「私は二菜様のお顔を知っているので私が行こう」
「ありがとうございます。偽物かどうか確認できます」
「そうか、それでは確かめ行こう」
「わかりました」
私は門番と共に確かめに行く。
二菜様とは何度も仕事をしているが相談相手でも会ったの良く知っている。
二菜様とした仕事は表に言えない仕事もあったため、お互い聖教の裏を知っている。
二菜様は政治や宗教にかかわる事がお好きではなかったが、地位の問題どうしても関わらなくてはならなかった。
また、生活の為の金銭を稼ぐためでもあった。
表向きは講師として学校で働ていたが、実際は王国や貴族へパイプや情報収集だった。
二菜様本人も不本意ながらも、この役目を負っていた。
さらに、本来はいないとされる中級の魔物の退治なども表向きには災害支援や害獣駆除という形で行っていた。
また、王国や貴族との裏取引などの知っており、聖教にとって二菜様は使える駒であると同時に秘密を握っていてさらに殺すことができない厄介な人物でもある。
なので、前ほ法王様を殴っても許されたである。
その二菜様が知らぬ間に戻って来て、いきなり王城へ向かうと言う事は何かが秘密裏に行われているのだろう。
しかも、聖教の馬車で向かうという事は国王に面会するという事だろう。
これはかなり大きな事が裏で動いているに違いない。
しかし、例えそうであっても理由を聞いてはいけない決まりになっているので私は聞かない。
しばらくすると建物から門番と誰かもう1人出てきたが、知っている人物だといいけど知っていてもやっかいな人物だったら嫌だな。
でも、男だから元上司ではないので良かったかな。
位はあたしの方が上だけど、実際は学校の雇われ講師で一番下だったりする。
もっとも、これはあたしが宗教にあまり関わりたくないから選んだけど。
しかし、講師の給料だけでは税金や聖教へ払う年間費で実質半分は持っていかれたけどこれはまた別の話。
「二菜様お久しぶりでございます」
建物から門番と共に出てきたのはコードであった。
コードはあたしと顔なじみで、一緒に仕事もしていた。
個人的にも良い相談相手だったけど、コードが来てくれたなら話が早そうだ。
「お久しぶりです、コード。お元気のようで」
「はい、おかげさまで身体は丈夫ですので。あと、司祭になりました」
「司祭になられましたか、おめでとうございます」
「ありがとうございます。しかし、二菜様はいつこちらお戻りに?」
「3日前です」
「そうでしたが。しかし、3日前にお戻りになられて国王陛下にお会いになるとはまた急ですね」
「ええ、わたくしも予想外でした。なので、聖教の協力を仰ぐことになりまして」
「そうですか」
「火急の用件のため、登城したいのですが馬車をお借りしたいのですができますか?」
「火急な用件という事は、表に出せない事ですね」
「はい、そうです」
「わかりました。ここでは話づらいと思いますのでどうぞ中へ」
「わかりました」
あたしは建物の中へ案内されるが、行くのは密談室。
密談室は文字通り、秘密の話をする場所で会話は一切記録に残らないので話した事は存在しない事になる。
ただ、問題はこのまま尋問室に連れていかれないかって事。
密談の為の部屋と尋問室は同じ方向だから、部屋に案内されるまではどちらかわからない。
コードの後をついて行くが、コードが顔なじみとは言え聖教の人間である事にはかわりない。
信用はしてはいるけど、職務にも忠実なのであたしに有利な事をするとは限らない。
不安に思いながらついて行くと、密談室の前で足が止まったので安心した。
「どうぞこちらへ」
あたしは密談室に入るが、密談室も貴族の部屋にあるのと同じ仕組みで外部から完全に遮断されている。
しかも、貴族に使われているよりもさらに高度な魔法がかかっており、高度過ぎて実は再びこの魔法をかけれないらしい。
なので、誰も解き方がわからない為、魔法が使える聖教の人間でも破る事ができないとか。
「それではお話をしましょう」
「はい。でも、堅苦しい会話は嫌だし、2人きりだから普段通りの話し方でいいよね」
「ああ、二菜がそう言うならばそうする」
さっきは門番の前であったから、あんな話方だったけど正直面倒。
コードとは個人的な付き合いもあったから、職務中でも2人の時は普段の話し方だ。
「で、二菜、戻って来た早々、王城へ向かうなんてただ事じゃないな」
「うん、まあ。グリフォン家にちょっと頼み事をしにいったら、頼み事を引き受ける条件でこうなってね。内容は言えないけど」
「グリフォン家の頼み事じゃ、言えないよな。俺も聞かないが」
「どうしても陛下に会わないとならくなったけど、急に行って会うとしたれら聖教を使うしかなくてね」
「確かに、司教が行ったらすぐ会えるが逆に大事にならないが?」
「他に方法も時間もなくてね。戴冠式の事と言って誤魔化せない?」
「無理だな、こちらからではなく、王国側がこちらへ来るからな」
「う、そうなのか。しかし、騒ぎになっても方法がないし」
「馬車の手配と運行は今も俺が担当だから今すぐでも可能だが、後が面倒だ。しかも、二菜がかかわってたら尚更だ」
「そうだね・・・」
馬車の手配自体は簡単にできそうだけど、後の聖教への報告が問題になる。
さらに司教が城へ事前の約束なしに行く時点で大騒ぎだよね、やっぱり。
しかも、時期が時期だから余計何かあると思われるかな。
以前だったらあれこれ理由をつけたり、担当者を弱みを握ってたから付け込めたけど今回は無理。
さらに、今回の目的はバンの村のお使いだから長引かせたくもない。
「こうなったら、忍び込むしかないかも」
「おいおい、物騒な事を言うな。そっちの方がやばいんじゃないか?時期が時期だけに余計に」
「ヒーリッチ陛下はあたしに懐いてるというか、大好きだかね。でも、昔の話で妃を迎えた今じゃわからないけど。でも、何とかなる!・・・と思う」
「二菜なら何とかなるかしれないが・・・やめておけよ」
「いや、最後の手段として残しておく。しかし、どうしよう、馬車を借りる事が出来ないとなるとここに来た意味もないし」
「いや、なくもないぞ。実は馬車で行かなくてもいい方法があるぞ」
「そうなの?」
「それは二菜が痔という事にすればいいのだよ」
「ああ、なるほど・・・」
何で痔かというと、痔の痛みで馬車に乗れない事にすればいいのだ。
こんな事が通じるのか?って思うけど、実は通じる。
江戸城の登城も駕籠で行く決まりであったけど、痔の痛みがひどすぎて駕籠に乗れないならば歩いて登城できた。
つまり、それと同じ理由だ。
まさかこの世界でも同じ理由で認められていると思わなかったけど、すっかり忘れてた。
徒歩で来た場合、痔という事にされてしまうが仕方がないがこれならばすぐ実行できる。
「痔じゃないのに痔って思われるのは嫌だけど、仕方がないかな」
「ま、いろんな原因で痔になってるから気にするな」
「あたしはそっちではしないの、ちゃんと専用の穴があるし」
「そうだとしても、相手がどう思うかだな」
「そうだけど、仕方がないか」
痔と思われるリスクを負うが、これぐらいのリスクは他と比べたら軽いから受け入れる。
もっとも、あたしの身体の事はわかっているから、嘘だとわかるだろうけど。
でも、この方法が手っ取り早いからね。
「それじゃ、この方法でいく。でも、お供も1人はいないとな」
「だったら、俺が行く。俺は今も裏の仕事をしてるから、報告はしなくてもいい」
「そうなんだ、お願い。今すぐでも可能?」
「ああ、可能だ。裏の仕事は急に入るから大丈夫だ」
「わかった、お願い」
「それじゃすぐに行くぞ。街のかなを歩く時はマントを取って修道服にしてくれ」
「それはわかってる」
「それじゃ、行くか」
密談室から出て、コードは準備をする。
あたしはマントは締まって、ストラの上からスカプラリオを着て城へと向かう。
予定とは違う形になったけど、馬車が不要になったから目立たなくてもいいし、聖教への報告もいらない。
聖教関係者が城へ行く言事は珍しい事でもないし、コードが居れば向こうも納得してくれるだろうから聖教へ来たのは正解だったかも。
こしてあたしはコードと共に王城へ向かったのだあった。
お読みいただきありがとうございます。
当初の予定では聖教の話は出す予定ではなかったですがやはり出しました。
痔で駕籠に乗らなくても良い話は実話で遠山影元(遠山金四郎)が切れ痔で駕籠に乗れないので徒歩で登城していました。
江戸時代、町奉行所勤めは書類が多く、睡眠時間3,4時間程度で早死にだったそうです。
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