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第7話

「それにしても、とりあえずでこれだけ出せるなら、貴女の母上は結構な額を残して下さったのですね」

「はい。彼等は隠し場所を知りません。ですので、税金問題が出るなら、それはまた後で。」

「そうですね。その辺りも含めて、良い税理士や弁護士を紹介致しましょう。そうですね? スペンサーさん」

「はい。以前からいざという時のために、と人選をお願いしておいたのはこのためですので。それでお嬢様、私の方はまず、大旦那様達に連絡を取ることですかね」


 私は黙ってうなずき(もしくは『頷き』)ました。



 わざわざ部屋を探す必要はない、と戻ってきたもう一人の経営者、ザイベルト・フレクハイトさんがこの事務所の脇にある小部屋を貸してくれました。

 湯沸かしができる程度のキッチンもついています。


「普段は僕等が泊まり込みになった時に使う部屋なんだが、ちゃんと家はこの近くにあるしね」

「叔父さんはなかなか帰らなくて叔母さんに僕が怒られる羽目になるんだし。ちょうどいいよ」

「私もお嬢様が下手な部屋で一人暮らしななさるより、ずっと安心です」


 そう言われたら返す言葉はありません。

 何しろあの家から殆ど出たことが無かったのです。

 正直一人で暮らすというのはなかなか厳しいものがあったでしょう。

 さて、明日も歩き回らなくてはなりません。

 まずは文面はスペンサーが書いてくれた電報を電信局に出しにいかなくてはなりません。

 それからナタリーです。

 救貧院で働いているということですが、変わっていないでしょうか。

 少しばかりそれが心配です。

 でもとりあえずは、ゆっくりと眠ることにしました。

 普段置きの簡易ベッドと布団と枕ですが、私が住んでいた屋根裏のものよりは上等です。

 でも、リネンは変えた方がいいかもしれません。

 どのくらいでこの状況が一転するのかわかりませんが、じっくり戦うにはきちんとした場所が必要です。



 翌日、電信局へ行った後、地図を片手にナタリーが居るという救貧院へと向かいました。


「ナタリー・レングスさんは……」

「ちょっと待っておいで」


 教会が経営しているという救貧院の玄関で、私はナタリーの名を出しました。


「……お嬢様!」

「ああナタリー、貴女はすぐに判ってくれたのね!」


 私達はそう言ってその場で抱き合いました。


「いえいえお嬢様は私の頭の中では小さなお子様ですが、その服と、奥様の若い頃によく似たその姿! ……お作り直しなさったんですね」

「ええ。……あの部屋で」

「あの部屋ですね」


 ナタリーは、お母様の服をあの部屋に移す時に手伝ってくれたのです。

 ちなみに、金貨を移動させる時にはアダムスが。

 物書きの椅子や卓を移動させる時にはスペンサーが手伝ってくれていました。

 他の者には触れさせていません。

 だからこその、三人なのです。

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