表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。  作者: 江戸川ばた散歩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/34

第21話

「何だ騒々しい……」


 父の声は非常に苛々しています。

 相当かゆみは引いた様ですが、それでもまだ、不快感は続いている模様です。

 ひっかくことはできないので、時々包まれた手で顔を叩いている様です。

 そんな父の膝にロゼマリアはすがりつくと。


「貴方…… 貴方…… あの女の、マルゴットの幽霊が出るんです……」

「マルゴットの? そんな馬鹿な」

「嘘じゃありません、私…… 見ました。あの女が…… 廊下を歩いているのを…… それにこれ……」


 デルフィニウムの花を彼女は父に見せます。


「これがどうした」


 おや、父はどうやらお母様の好きな花すら知らなかったのですね。

 なので少し先に分かり易く布石を置いておきました。


「無闇に庭に咲いていたので、庭師のアダムズに聞きました。これは前の奥方が好きだった花だ、と」

「……馬鹿馬鹿しい」

「貴方……」


 父は自分の身体の不調だけで手一杯で、ロゼマリアの気持ちの方にまで頭が回らないのでしょう。

 どちらも身体とか、どちらも気持ちや心の不調だったら、それぞれ同情しあえます。

 ですが、この場合、どちらもどちらに同情できません。

 と言うか、自分の辛さが判らずに別の判らないことで悩んでいることに腹立たしくなるのでしょう。

 ふらふらとロゼマリアは自分の部屋へと戻って行きます。

 すると廊下の窓から、別の棟の窓に、また古めかしいドレスが見えるはずです。

 ええ、私はその場所にドレスをそれらしく置いていましたから。

 彼女はそれを見て、向こう側の棟に向かって走ってくるでしょう。

 その間に私は移動します。

 彼女の足は私より遅いでしょう。


「――!」


 廊下には、デルフィニウムが点々と撒かれているのですから。


「誰か! 誰か!」

「はい奥様」

「ここにこの花を撒いたのは誰?!」

「え? 何故こんなところに?」


 そんな会話がドレスを回収して隠し扉に入る私に聞こえてきます。

 彼女達の視線は花に集中していますので、窓へは移らないでしょう。

 無論私も、誰かが見ていないか警戒はしています。

 そして曲がり角を過ぎると、ドレスは既に無い、という訳です。


「……そんな」

「奥様、奥様もご覧になったのですか」


 メイドはぶるぶると震えています。


「見たのかい、お前も」

「……はい、昔の格好をした女性が…… 私など居ない様にすっ……と……」


 ロゼマリアは思いっきり力を込めて花を踏み荒らします。

 可哀想なデルフィニウム。ごめんなさい。

 でももう少し。

 もうじき夜が来るわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ